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一体なぜ…『ジョーカー2』批評&興行面で大苦戦の原因

待望の続編もまさかの大苦戦…『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』より
待望の続編もまさかの大苦戦…『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』より - (c) & TM DC (c) 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. IMAX(R) is a registered trademark of IMAX Corporation. Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories

 今年最も期待された映画『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』(全国公開中)は、誰も予測しなかった状況に陥ってしまった。5年前、全世界で10億ドルを売り上げ、オスカーに11部門で候補入りした『ジョーカー』の続編が、批評面でも興行面でも大苦戦している。日本よりひと足早く公開されたアメリカの批評家と観客は、どこに不満を感じたのか。(文/猿渡由紀)

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 批評家の評を集計する大手レビューサイト「Rotten Tomatoes」によれば、『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』に好意的なのは、批評家の33%、観客の32%。シネマスコア社の調査でも、公開初週末の観客の評価はDと、コミックブックの映画化作品で史上最低の成績だった(これまでの最低評価は2015年の『ファンタスティック・フォー』でC-)。

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 その時から予想されたことではあるが、公開2週目の週末は、初週末に比べてなんと81%もダウン。DCコミックのキャラクターにもとづく映画において、過去最大の下げ幅だ(昨年の失敗作『ザ・フラッシュ』ですら、73%ダウンだった)。北米外でも先週末に比べ70%と大きく売り上げが落ちており、海外に救いを求めることもできなさそうである。

 日本公開前、日本のメディアでは「海外での評は賛否真っ二つ」という見出しが目についたが、これらの結果も示すように、褒めている人よりがっかりした人のほうが多いというのが、実際の肌感覚。抵抗を受けた最も大きい理由と思われるのは、歌とダンスを取り入れ、ミュージカルのスタイルで物語を語ったことだ。

(c) & TM DC (c) 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.IMAX(R) is a registered trademark of IMAX Corporation. Dolby Cinema is a registered trademark of Dolby Laboratories

 『ジョーカー』続編がミュージカルになることについて、トッド・フィリップス監督は、かなり早いうちに明かしている。しかし、その後フィリップス監督は、正統な意味でのミュージカルではないと言い直しているし、スタジオもミュージカルとして宣伝をしなかった。そのため、事前の知識なしに劇場に行った観客には、こういうものだとまるで予想していなかった人もいたようなのだ。

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 ベネチア国際映画祭でお披露されたことも示すように、フィリップス監督の『ジョーカー』とその続編は、スーパーヒーロー映画ではなく、シリアスな大人の映画。そうは言ってもアメコミのキャラクターにもとづいているのも事実で、そのジャンルのファンの中心は若い男性だ。つまり、ミュージカルのファンとは言えない人たちである。

 Rotten Tomatoesの観客レビュー欄には、「歌が多すぎ。アクションが少なすぎ」「これはいったい何なんだ? ジョーカーはいつから歌手、ダンサーになったのか?」などという感想が見られる。「これをミュージカルでやるのは間違っている」「ジョーカーとDCのファンが何を求めているのかまるで考慮していない」などという書き込みにも、望んでいたものを得られなかった欲求不満が見て取れる。

 批評家や映画ジャーナリストはもちろん、これが歌とダンスのある映画になることを知っていた。それは興味深い選択だと、純粋な好奇心を持ち、楽しみにしていたと思う。しかし、実際に完成したものを観ると「ばらばらでまとまりがない」「ドラマの部分と歌の部分の移行がぎこちない」「誰のために作ったのか」とトーンに問題を感じる人が多かった。ミュージカルで歌は話を先に進めるか、キャラクターが思っていることを表現するためにあるものなのに、それがほとんどなされていないことや、歌唱力への指摘もある。

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 前述したように、フィリップス監督には、これを正統なミュージカルにするつもりはそもそもなかった。主演のホアキン・フェニックスも、ジョーカーだったらどう歌うのかということを考えた上で歌ったと語っている。だから、“ミュージカル映画”としての基準で判断され、欠点を挙げられるのは、フィリップス監督やフェニックスにしてみたら的外れだろう。だが、自分たちの意図が正しく受け止められなかったことについて、観た人を責めるわけにはいかない。

 ストーリー自体への不満も聞かれる。歌がストーリーを進める役目を担っていないため、歌が入るとそこで話がストップしてしまい、「話が薄い」あるいは「表面的」で、2時間18分をかけて語られることは「すべて1作目ですでにわかっていたこと」「1作目の長いエピローグのようなもの」と多くの批評家は感じた。

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 ただし、映画を弁護する批評家もいる。フィリップス監督がやろうとしたのは1作目を観た人の予想を裏切ることだったのだから、その意味で彼は目的を達成したというのだ。たしかにそうかもしれない。また、結果がどうだったにしろ、フィリップス監督が大胆なことをやり、スタジオが彼のアーティストとしてのビジョンを支えてあげたことには大きな価値がある。前回以上とも思えるほど痩せて挑んだフェニックス、カリスマを放つレディー・ガガ(リー役)が全力を尽くしたのも明白だ。

 この作品は注目度があまりに高かった上、アメリカでは日本と違い、批評家が遠慮なく酷評するため、悪いニュースがあっという間に拡散されてしまった。ソーシャルメディアの時代、映画が成功か失敗かは、最初の1、2日で決まってしまう。そのおかげで、観ようと思っていたのに観るのをやめた1作目のファンもいるだろう。だが、すべてが落ち着いてから観てみたら、世間が言っていたのと違う感想を持つこともあるのではないか。ハリウッドの歴史におけるこの映画の意味は、まだ決まっていない。

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