山田孝之、背中に刻まれた「龍と菩薩」の刺青の意味とは?『十一人の賊軍』語られない物語
山田孝之と仲野太賀がダブル主演し、白石和彌が監督を務める映画『十一人の賊軍』(公開中)で、山田が演じる“政”の背中には全面に刺青が彫られている。本編では語られない、この刺青の設定にも物語があるという。(※以下、本編の内容に触れています)
山田が演じるのは、新潟の駕籠屋として働いていたが、耳が不自由な妻・さだ(長井恵里)を新発田(しばた)藩士に襲われ、敵討ちで武士を殺して死罪となった【罪状:侍殺し】の政。故郷に残した妻に再び会うため、生きて帰ることへの執念を見せ、次々と問題を起こしてしまうキャラクターだ。
その風貌は、山田自身が「重い、クサい、痒いの三拍子揃っていて、こんなに愛着のわかない衣装は初めてかもしれない(笑)」と語る衣装を身に着け、背中全面から両二の腕にかけて、本作のファーストビジュアルでも話題を集めた、龍が菩薩を守っている大きな刺青が彫られている。
本編では、その意味については語られることはないが、実はこのデザインにはある設定が込められているという。それは、荒くれ者だった政が、さだと出会ったことで改心し、真面目に働くようになり、それを機に刺青を入れ始めたという夫婦の歩が刻まれているというもの。それゆえ、刺青は完成していなく、本編で政が見せる“何がなんでも生きて帰る”という執念の裏にある、互いを思い合う夫婦の絆の物語を感じさせるキーアイテムの一つとなっている。
映画『十一人の賊軍』は、東映黄金期の礎を築いた脚本家・笠原和夫による幻のプロットを、『孤狼の血』チームが60年の時を経て映画化した集団抗争時代劇。江戸幕府から明治政府へと政権が移り変わる激動の時代を舞台に、戊辰戦争の最中、新発田藩で繰り広げられた歴史的事件、奥羽越列藩同盟軍(=旧幕府軍)への裏切りのエピソードをもとに、捕らえられていた十人の罪人たちが<決死隊>として、憎き藩のために命を懸けて砦を守る任に就く姿を描く。(高橋理久)