横浜流星、5つの顔を使い分ける逃亡犯役は「とても苦しかった」
俳優の横浜流星が5日、都内で行われた主演映画『正体』(11月29日公開)の完成披露舞台あいさつに登壇し、「自分の集大成となったこの映画が完成して嬉しい」と笑顔を見せた。
染井為人の小説に基づく本作は、日本中を震撼させた殺人事件の容疑者として逮捕され死刑判決を受けた主人公・鏑木(横浜)が、姿を変えながら逃走するなかで彼の正体、目的が浮かび上がっていくサスペンス。映画『青の帰り道』『ヴィレッジ』などで横浜と組んできた藤井道人監督がメガホンをとった。イベントには横浜のほか、共演者の吉岡里帆、森本慎太郎(SixTONES)、山田杏奈、山田孝之、藤井監督も登壇した。
日本各地で潜伏しながら逃走を続ける主人公・鏑木を演じた横浜は「誰からも自分を信じてもらえない状況に陥って脱獄するんですけど、もちろんそれが良いことだとは思えない。でも、どんな状況においても彼の真意や目標を見失わないよう演技をすることを大事にしました」と役へのアプローチを振り返る。
横浜は「鏑木であることを維持するのはとても大変で苦しかった」とも述べ、「5つの顔を使い分けるんですけど、それぞれ違う人格であっても、別人ではない。どの人格を演じていても、それが鏑木であるということを強く意識して演じました」と説明。「監督やメイクさんと相談しながらリアルを追求しました。やりすぎてもコスプレになってしまうし、街中にいても違和感がないようにしました」と話す。
時間の経過を表現しなければならず、横浜は「時間の経過を夏と冬に分けて撮影をできたのはすごく贅沢だと思いました。夏の撮影が終わった後に荒く繋いだものを監督に見せてもらって、そのことによって気持ちの整理ができました。時間経過を描く作品はこう撮るべきだと思いました。でも何度も言いますが、鏑木としてこの気持ちを維持するのは本当に辛かった」と当時に想いを巡らせる。
吉岡はそんな横浜の撮影時の様子を「常に生身という感じでした」と紹介。「全てを映画に捧げてる感じがしました。心をむき出しにして演じていらっしゃるのが印象的でした」と回顧。山田も「仕事人です。全て真剣に真摯に取り組んでいらっしゃるなと思いました」と感銘を受けたという。藤井監督も横浜を「武士」と表現し、「ちょっとは休みなさいよっていうくらいストイック。侍のようだなと思いながら応援しておりました」と話していた。
横浜はタイトルの「正体」にちなんで自身の素顔について聞かれると「役者はミステリアスな存在。自分の存在を知られて作品に影響するのは嫌。自分の正体は教えません」と笑顔で回答を避けていた。(取材・文:名鹿祥史)