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ブルース・スプリングスティーン「死の問題が人生の一部に」新作ドキュメンタリーで語る死生観

『ブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンド:Road Diary』ブルース・スプリングスティーン
『ブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンド:Road Diary』ブルース・スプリングスティーン - (C) 2024 Road Movie LLC

 アメリカン・ロックの大御所、“ザ・ボス”ことブルース・スプリングスティーンの最新ツアーの舞台裏を描くドキュメンタリー映画『ブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンド:Road Diary』の配信が先月25日からDisney+(ディズニープラス)でスタート。その配信に合わせて先日、ロサンゼルスのアカデミーミュージアムでLAプレミアが開催され、大スクリーンと最高の音響で作品を体験出来るということもあり、多くのスプリングスティーンファンたちが駆けつけた。

『ブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンド:Road Diary』予告編

 上映中、ファンで満杯の会場では何度も拍手や笑いが巻き起こり、まるでコンサートかのような熱気に包まれた。上映後に開かれた質疑応答では、ブルース・スプリングスティーン、Eストリート・バンドの中心メンバーでザ・ボスの右腕のスティーヴン・ヴァン・ザント、スプリングスティーンの長年のマネージャーで作品のプロデューサーのジョン・ランドー、監督のトム・ジムニーらが参加し、作品への思いを語った。

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 今回の作品が始まったきっかけについてブルースは、「もし今作らなかったら、僕は死んでしまうからね。やれるうちにこれを作らないといけなかったんだ。それがすべてだよ」とコメント。そして、「哲学的に、技術的に、音楽的に、僕のコンサートがどのように作られているかについて、もう少しファンたちに知ってもらいたかったんだ」と作品の意図を付け加えた。

(C) 2024 Disney and its related entities

 ブルースの最近のドキュメンタリー作品『ウエスタン・スターズ』や『ブルース・スプリングスティーン:Letter to You』の演出を担当し、ブルースやEストリート・バンドから絶大の信頼を得ている監督のジムニーは、今回の撮影を開始したツアーのリハーサル初日に、本作で伝えたいことを発見したと語った。

 「僕はリハーサルの初日、自分が経験していることに対して、本当にオープンでいた。そして、みんなが幸せそうにしていることに本当に感動したんだ。彼らが再び(ツアーで)演奏できることに感謝の気持ちを感じていることを(この作品で)伝えたいと感じたんだよ」

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 『ウエスタン・スターズ』をジムニーと共同監督したブルースだが、今回は全てジムニーに任せたという。「これは本当にトムの映画だよ。だって、僕がトムに言ったのは、『カメラを持って(コンサート会場の)フロアに降りてきて』ってことだけなんだ。この映画の物語は本当にトムによるものなんだ。彼は素晴らしい仕事をしてくれたよ」と、作品の出来にとても満足した様子だった。

(C) 2024 Road Movie LLC

 本作の見どころの一つが、バンドメンバーでもあるブルースの妻、パティ・スキャルファが、血液のガンで闘病していたことを明かしたり、75歳のブルースがアーティストとして死とどう向きあっていくかという赤裸々な視点が描かれる点だ。ブルースは、最初のバンド、ザ・キャスティルズのメンバーだったジョージ・シースの死が大きな影響を与えたことを語った。

 「僕は彼(シース)が亡くなる数日前に一緒にいたんだ。(その後)僕は何も書かずに2年間を過ごした。それから僕は、彼によってなにかを満たされ、(アルバム)『レター・トウ・ユー』のすべての歌を約2週間で書きあげ、4日間で録音した。僕らくらいの年齢になると、朝起きたらそういったことを考えるんだよ。パティと僕は彼女の病気と闘わなければならなかった。映画の中で僕が言うように、死の問題が人生の一部になるんだ。この年齢になると、さらに多くの昨日(過去)との別れがある。30年前や40年前よりもね」
 
 バンドの解散や、メンバーの入れ替わりはよくある話だが、Eストリート・バンドが半世紀に渡ってほとんどメンバーチェンジなしに続いてきたことは、ほとんど奇跡と言っていいだろう。そしてその理由は、本作からも伝わってくるが、これほど成功し、有名なロックスターでありながら、人として常識を失わないブルースの人柄が大きいのではなかろうか。本作は、最新ツアーの映像以外に、バンドが始まった頃のエピソードや過去の映像を織り交ぜる構成になっていて、ブルースの音楽を知らない人にもわかりやすい。クライマックスのコンサート映像では、もちろん「ボビー・ジーン」「ダンシング・イン・ザ・ダーク」「明日なき暴走」といったお馴染みのヒット曲が楽しめるが、全曲を見せるのではなく、それぞれの曲のエッセンスを繋げたモンタージュ構成となっていて、そのシークエンスを世界最高峰のミキサーとして知られるボブ・クリアマウンテンがミックスを担当していることもあり、ぶつ切り感は全くなく、実に見事な映画的編集となっている。往年のファンにとっては全編たまらない内容であると共に、一ロックファンとして、もう二度と現れないかもしれないロックのマエストロの姿を、是非この機会に若い世代にも見てもらいたい。(細谷佳史 / Yoshifumi Hosoya)

映画『ブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンド:Road Diary』はディズニープラス「スター」で独占配信中

『ブルース・スプリングスティーン&Eストリート・バンド:Road Diary』|予告編|伝説的なライブ・パフォーマンスの創作過程を追ったドキュメンタリー|Disney+ (ディズニープラス) » 動画の詳細
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