山田孝之はなぜ特別なのか?藤井道人監督語る
横浜流星が主演を務める映画『正体』で、念願だった山田孝之とのタッグが実現したことについて、藤井道人監督が思いを語った。
染井為人の小説「正体」を映画化した本作は、5つの顔を持つ指名手配犯・鏑木慶一(横浜)の逃亡劇を描いたサスペンスエンターテインメント。山田は、凶悪犯罪犯として指名手配されている鏑木に対して複雑な心境を抱きつつも、職務遂行のために鏑木を執拗(しつよう)に追いかけ続ける刑事・又貫征吾を演じている。
藤井監督がメガホンを取った映画『デイアンドナイト』では、山田はプロデューサーとして参加していた。同作では俳優としての出演はなかったこともあり、『正体』に俳優として山田が参加するのは、藤井監督にとっても念願のことだったという。「僕にとって山田孝之さんは、映画人の中でもとても緊張する人」と切り出した藤井監督は、「そこから公私ともに彼の背中を見させてもらい、彼の生き方、未来の映画界の考え方など、そういうものを継承したいとずっと思ってきた」とその思いを語った。「又貫という役は、鏑木を追う刑事の役ですが、観客は又貫の目線を通じて、鏑木の正体とは何なんだと追うことになる。その時にやはり自分の中で最大限のリスペクトのある山田さんに、駄目もとでお願いしたいと思い、初めて役者としてオファーすることにしたんです」。
鏑木を執拗(しつよう)に追い続ける“静かな炎”ともいうべきピリッとした緊張感を持つ人物を演じる山田が撮影現場に登場すると、スタッフの集中力もいや応なしに高まっていく。「山田さんは唯一無二で圧倒的」と語る藤井監督も「山田さんを演出すると一番緊張しますし、本当にそのあり方がカッコいい。だから今回、又貫を山田さんに演じてもらえて、ひとつ夢がかなったような気持ちです」と満足げな顔を見せた。
さらに、「流星が一番尊敬している人、一緒に演じたかった人は山田さんなんです。山田さんと流星と3人で飯に行くと、(横浜は)一言もしゃべらないんです。緊張しすぎて。撮影中は山田さんへの思いが彼の中にもすごくあふれていたと思いますし、僕にとってもそうでした」と藤井監督だけでなく、主演を務める横浜にとっても山田は特別な存在であることを明かした。
そんな山田の役づくりについて、藤井監督は「又貫の役っていくらでも、“葛藤してるぜ俺”というところを見せられるんですが、それを本当に一番ストイックなやり方で、又貫というキャラクターを選択してくれた」と絶賛した。「ものすごく緊張しますけど、唯一無二。圧倒的だと思います。みんなが山田さんを目標にする理由がわかるし、役の落とし込みの深さをあらためて目の前で見せられたという感じがしました」と撮影を振り返った。(取材・文:壬生智裕)
映画『正体』は11月29日より公開