吉沢亮30歳、中学生役の演じ分けに奮闘
俳優の吉沢亮が30日、パルテノン多摩で開催された第16回TAMA映画賞授賞式に出席。『ぼくが生きてる、ふたつの世界』『キングダム 大将軍の帰還』『かぞく』の出演作で、本年度最も心に残った男優を表彰する最優秀男優賞を受賞した。『ぼくが生きてる、ふたつの世界』の呉美保監督も特別賞を受賞し、手話を交えた吉沢の演技を改めて絶賛した。
『ぼくが生きてる、ふたつの世界』は五十嵐大のノンフィクション「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」を実写化した作品で、聴覚障害者である両親に対して複雑な思いを抱く青年が、帰郷をきっかけに親の尊さに気付くさまを描く。
吉沢は本映画祭での受賞について「6年前くらいに、この場所で最優秀新進男優賞をいただいたんです。それが僕にとって初めての映画賞でした。30歳になった今年、同じ場所で受賞できたことに強い縁を感じます」と感慨深げ。
『ぼくが生きてる、ふたつの世界』では思春期、中学生、社会人と揺れ動く主人公の心の動きを各年代ごとに演じ分けたが、「今年30歳になる男が中学生をやるのは大変でした」と照れ笑いで撮影を回顧する一幕も。「監督から『声を高くして。今のおじさんぽいかも』って言われながら、全力で演じました」と現場での様子を紹介し、会場の笑いを誘った。
手話での演技についても「芝居をする上で手話は眉毛の動かし方など、顔の動きで意味が変わっていく。求められている手話のレベル、実際に手話で生活されている人たちの使う手話のレベルでの演技はすごくハードルが高かった」と感想を述べる。だが、そんな吉沢に呉監督は、「この作品を吉沢さんにお願いし、快諾をもらった時点で何も心配していなかったんです。ちゃんとリアルな世界観を作りたい、まるでドキュメンタリーを見ているようにやりたいってお話ししました。吉沢さんにとっては結構ハードルが高い撮影だったと思いますが、それを軽々と超えて演じてくださった。感謝しています」と伝えた。
吉沢は今後の予定について、「来年、二本くらい公開される作品があるのでぜひ観て欲しいです」と客席に呼びかけ、「今までと変わらず、これまでと同じように自分が好きになれる、愛せるような作品をやっていきたい」と語った。
TAMA映画賞は、前年10月から当年9月に一般劇場で公開される作品及び監督・キャスト・スタッフを対象に、市民ボランティアの実行委員が選考。「明日への元気を与えてくれる・夢をみさせてくれる・活力溢れる“いきのいい”作品・監督・俳優」を、映画ファンの立場から感謝をこめて表彰する。(取材・文:名鹿祥史)
第16回TAMA映画賞
▼最優秀作品賞
『夜明けのすべて』
三宅唱監督、及びスタッフ・キャスト一同
『ぼくのお日さま』
奥山大史監督、及びスタッフ・キャスト一同
▼最優秀男優賞
藤竜也
『大いなる不在』
吉沢亮
『ぼくが生きてる、ふたつの世界』『キングダム 大将軍の帰還』『かぞく』
▼最優秀女優賞
上白石萌音
『夜明けのすべて』
河合優実
『ナミビアの砂漠』『あんのこと』『ルックバック』『四月になれば彼女は』
▼最優秀新進男優賞
松村北斗
『夜明けのすべて』『ディア・ファミリー』『キリエのうた』
齋藤潤
『カラオケ行こ!』『瞼の転校生』『からかい上手の高木さん』『正欲』
▼最優秀新進女優賞
森田想
『辰巳』『朽ちないサクラ』『サユリ』『NN4444』『愚鈍の微笑み』『正欲』
早瀬憩
『違国日記』『あのコはだぁれ?』
▼最優秀新進監督賞
近浦啓
『大いなる不在』
山中瑶子
『ナミビアの砂漠』
▼特別賞
呉美保監督、及びスタッフ・キャスト一同『ぼくが生きてる、ふたつの世界』
押山清高監督、及びスタッフ・キャスト一同『ルックバック』