横浜流星、隠してる“正体”ある?プライベートの姿明かす
俳優の横浜流星が、“盟友”藤井道人監督とタッグを組む新作映画『正体』について語るとともに、“自分の正体を隠す”ことへの思いを語った。
染井為人の小説「正体」を映画化した本作は、5つの顔を持つ指名手配犯・鏑木(横浜)の逃亡劇を描いたサスペンス映画。343日にわたる警察からの間一髪の逃亡劇を繰り広げる鏑木とは凶悪犯なのか、無実の青年なのか……。
藤井監督と横浜は、長編映画としては『青の帰り道』『ヴィレッジ』に続く3度目(長編映画のほかにもNetflixドラマ、PV、短編映画などでもタッグを組んでいる)のタッグ作となる。横浜と藤井監督は、クランクイン前からおよそ3年にわたって脚本やセリフをブラッシュアップさせるなど、入念な準備を重ねてきた。
その中でふたりの共通認識となったのは「この作品は、今までの作品の中でもより多くの人に観てもらいたい」ということ。ともすると、閉ざされた村社会から見える現代社会の闇を描き出した『ヴィレッジ』のように、「意識しないと僕もですし、監督も結構もう深いところ、重いところまでいってしまうし、僕たちもそういう映画は好きなんですけど、今回はそうではないというところを意識してたかもしれません。今回も題材的にちょっと重たいというか、考えさせられるところがあるので、藤井イズムはありつつも、ちゃんとエンターテインメント性の強い作品にしようと監督が意識していたので、自分もそこを大事にしました」。
そんな横浜のことを公私共に知り尽くした藤井監督ゆえに、本作では「これまで観たことがない流星が見られる」と自負。鏑木の逃亡生活においては変装を余儀なくされることから、そのさまを「横浜流星七変化」と語っていた。
そんな藤井監督のコメントについて「とはいえ、それぞれの人物は別人ではないので。彼の目的、その真意だけは見失わないように。20代前半の鏑木ができる範囲で容姿を変えること。それがやり過ぎにならないように。監督、スタッフさん、衣装さんと話し合って。リアリティーを追求して、つくっていきました」と前置きしつつも、各地の潜伏先で違う人物になりきるという役柄には「やはり気分は変わりますね。そこは衣裳部、メーク部にも助けてもらいましたし、ロケ地にも助けてもらった。そうしたすべてのことが作用して、力をもらうことができました」。
そんな逃亡生活での変装の中でも、特に観客を驚かせそうなのが、大阪で日雇い労働者として潜伏する“ベンゾー”の姿だろう。ヒゲ、ロン毛、メガネ姿という身なりに気を使わない姿は、普段の彼とはまるで別人のように見えるが、「でも自分としてはこれが一番落ち着きますけどね。普段は自分もヒゲがボーボーなんで。あれが一番自分に近いのかもしれないですね。そんなにギャップはなかったです」と笑ってみせた。
来年はNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の主役に抜てきされるなど、国民的俳優への道を着実に駆け上がっている横浜。まさに世間からの注目を集める存在として、街中で気付かれることも多そうだが、自分の正体を隠して潜伏生活を行う“鏑木”への共感はあるのだろうか。
「自分は街を歩いていても、ヒゲがあるんであまり気付かれないんです。普段はベンゾーみたいなんで、割と気づかれないタイプですね」と笑う横浜。「ただ正体を意図的に隠しているわけではないですし、別にそれを誇示しようとも思わないですね。こういう仕事をしていると、皆さんが自分に抱く思いや、感じ方はそれぞれ違うんだと思うんですが、別にそれはそれでもいい。だからこそ自分ってこういう人間なんだよと、自分から言う必要もないと思っています。むしろ言わない方が変にイメージがつかなくていいのかもしれません。自分はやはり作品命なので、作品だけを純粋に観てほしい。そういう意味で、普段の自分は消すようにしているかもしれない」と力強く語った。(取材・文:壬生智裕)
映画『正体』は11月29日より全国公開