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「光る君へ」脚本・大石静、“ラブストーリー大河”は予想外の反響 「吉高さんと柄本さんがステキ過ぎて…」

第10回よりまひろ(吉高由里子)と道長(柄本佑)が初めて結ばれた廃邸のシーン
第10回よりまひろ(吉高由里子)と道長(柄本佑)が初めて結ばれた廃邸のシーン - (C)NHK

 吉高由里子が紫式部(まひろ)役で主演を務める大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)の脚本を務めた大石静。自身、2度目となる大河ドラマでは平安時代を舞台に、「源氏物語」の作者・紫式部を主人公にした物語に挑み、毎回放送されるたびに多くの関連ワードがSNSを沸かせた。なかでも注目を浴びたのが主人公・紫式部(まひろ/吉高由里子)と平安貴族社会の最高権力者として語り継がれる藤原道長(柄本佑)との恋愛模様だったが、大石はこの反響を「もちろん2人のラブスストーリーの側面が素敵でなければとは思いましたが、ここまで“ラブストーリー大河”にくくられるとは予想外でした」と振り返っている。

反響呼んだまひろと道長の美しすぎるラブシーン!【画像】

 大石にとって大河ドラマの執筆は、戦国武将・山内一豊を支え「内助の功」と語り継がれる妻・千代を主人公にした「功名が辻」(2006)以来。「光る君へ」は、2021年から2024年9月にかけて約3年をかけて書き上げた。大石は「制作統括の内田ゆきさん、チーフ演出の中島由貴さんから最初の依頼を受けた時からこの大河ドラマは紫式部の生涯を描くもので、『源氏物語』は劇中劇でも一切出さないことは決まっていました」と言う。「今も世界的に評価の高い『源氏物語』を生んだ女性はどういう人で、どういう人生を生き、どういう想いでこの物語を生んだのか。他の女流文学者との個性の違いはどういうものだったのか。その頃の日本はどういう世であったのか。摂関政治とはどういうものであったのかを、ドラマチックでスリリングな人間ドラマとして描こう」と三人で話しました。

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道長が悲田院で倒れたまひろを夜通し看病する第16回

 下級貴族のまひろと上級貴族の道長は幼いころに出会い、身分の差を超えて絆を育み、離れようと思っても離れられない特別な関係を継続。道長が左大臣の娘・倫子(黒木華)と、まひろが父・為時(岸谷五朗)の友人・宣孝(佐々木蔵之介)と結婚してからも強く惹かれ合い、道長の依頼でまひろが「源氏物語」を執筆する……という流れだった。

 まひろと道長の秘密の逢瀬、キスシーンなどラブストーリー展開が大きな反響を呼んだが、大石自身は「ラブストーリーばかりを売りにするつもりはなかった」という。

 「よく“ラブストーリ大河”と言われますが、やや抵抗があります。なぜならまひろと道長の2人のシーンは極めて少なく、ほとんど内裏での権力闘争を描いていたからです。兼家と円融、道長と一条、三条のせめぎ合いと摂関政治の実態をじっくり描いたつもりでした。それといろいろな身分の親子や兄弟の情を大切に描きました。ですが、まひろと道長の吉高さん、柄本さんがあまりにもステキで、皆さんが2人のシーンに胸キュンして下さり、すっかりラブストーリー大河のイメージになったのだと思います。他の組み合わせでは考えられないと思うほど、芝居の相性のいい2人でしたし、役者だけでなく、中島由貴チーフ監督、黛りんたろう監督、原英輔監督が演出したラブシーンは、本当に艶っぽく切なく見事でした。大河史に残って欲しいです」

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 劇中、道長に関しては「ずっとまひろラブ」だったという大石。道長の正妻・源倫子、もう一人の妻・源明子(瀧内公美)とまひろとの対比も注目を浴びた。

 「道長は倫子と明子に等しく優しく、等しく冷たく接していました。それぞれに6人づつ子をもうけて大切にしていたとは思いますけど、心から惚れた女はまひろだけです。まひろの方は、女房として内裏に入ってからは、道長に対して距離を保つように努めていました。ちょっと不愛想なくらい。道長を思いながらも踏み出してはいけないという自制心が働いているというつもりで書きました。吉高さんの切ないけど突っ張っている芝居の匙加減が素晴らしかったです」

まひろが病に倒れた道長を見舞い、川辺を歩く第42回

 道長を演じた柄本とは、吉高主演のドラマ『知らなくていいコト』(2020)以来のタッグ。大石は 「柄本さんは『知らなくていいコト』で演じた尾高由一郎と言うカメラマンの役も、ものすごくステキだったんですけど、わたしの作品で特に色っぽい気がします。何自慢してんだ? って言われそうですが、内裏や土御門殿の廊下を歩くだけでも色っぽい道長・・・ホント恐ろしいくらい見事ですよね」と、視聴者をとりこにしたその魅力に触れる。

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 そして、吉高については「知らなくていいコト」に続いて2023年放送の「星降る夜に」(テレビ朝日系)でも組んでいるが、「光る君へ」では新たな気付きがあったという。

 「まひろはとても気難しくて、内向的で、時に棘のある人物です。こんなヒロインで大丈夫? と思うくらいの台本なんですが、吉高さんの気難しい顔がとても魅力的なので助けられました。他の作品で見せている明るい笑顔やけなげな姿も魅力的ですが、それとは全然違う顔が今回は見られたと思います。女優として何段階も成長され、突き抜けた感じがしますね。まひろの役を出来る女優は、吉高由里子しかいなかったと、心から思います」

 まひろと道長について「台本を超えた」と感じたシーンも多々あるといい、廃邸で二人が初めて結ばれた第10回、悲田院で倒れたまひろを道長が徹夜で看病する第16回、そしてまひろが病に倒れた道長を見舞いに宇治を訪れる第42回などを挙げる大石。第42回では、まひろと道長が幼少期に初めて出会った川辺を思わせる風景のなか、死を選ぶのか、それとも生きるのか、切実な言葉を交わす。

大石静

 なかでも視聴者を驚かせたのが、7月14日放送・第27回のまひろが道長の子を産むドラマオリジナルの展開。その意図について、大石はこう語る。

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 「紫式部の書いた『源氏物語』には、“三つの密通の物語”があるのです。主人公の光源氏は義理の母と密通し、後には自分の嫡妻・女三の宮が柏木と密通してしまう。光源氏は己の罪に復讐されたような感じです。さらに次世代では匂宮と浮舟の密通が描かれています。世代を超えた3つの密通は、物語の重要な要素なので、書き手も密通を経験していてもよいのではないかと、チーフ演出の中島さんや制作統括の内田さんと話して決めました」

 残すところあと2回となったが、大石はあらためて吉高と柄本について「2人の演技力のすばらしさと、穏やかな人柄のお陰で、現場がいつもいい雰囲気で……撮影が長時間に及ぶことがあっても殺伐とすることはありませんでした。本当にいいチームだったと思います」
と絶賛。

 9月末に脱稿し、伸び伸びとしているかと思いきや、取材時(10月下旬)には「ちょっとつまんなくなっちゃった気分です」とボヤいていた大石。「わたしは高度経済成長期に育った子供で、シャカリキに働くことが美徳だと頭に染み込んでいるんですよね。苦しかったですけど、やっぱり1つの目標に向かって必死で走り続けている時が素敵なんです。書き終えてから3日ぐらいは“これで睡眠がとれる!”とだらだらしていたんですけど、全然幸せじゃなくて」と相変わらずアグレッシブで、すでに来年の新作ドラマの準備にとりかかっていると話していた。(編集部・石井百合子)

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