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竜星涼「光る君へ」隆家の髭モジャは「本来なりたい姿」 刀伊の入寇で国を救った英雄をリスペクト

第46回「刀伊の入寇」より竜星涼演じる藤原隆家
第46回「刀伊の入寇」より竜星涼演じる藤原隆家 - (C)NHK

 平安時代に異国の勢力が壱岐・対馬(長崎県)に襲来した事件「刀伊の入寇」。吉高由里子主演の大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)の12月1日放送・第46回ではこのエピソードが描かれ、「刀伊の入寇」の英雄とも言われる公卿・藤原隆家を演じた竜星涼が隆家の武功を振り返るなかで、髭モジャルックに変身した理由について、自身の解釈を語った。

【画像】「刀伊の入寇」髭もじゃ隆家が大活躍!

 吉高演じる「源氏物語」の作者・紫式部(まひろ/吉高)の生涯を、大河ドラマ「功名が辻」(2006)、ドラマ「セカンドバージン」(2010)などの大石静のオリジナル脚本で描いた本作。第45回の終盤でまひろは亡き夫・宣孝(佐々木蔵之介)が勤めていた地でもある大宰府に発った。宋人も多く集まるこの地で周明(松下洸平)と思いがけない再会を果たしたのち、政庁を訪れると、大宰権帥となった隆家に手厚くもてなされる。もともと目を治療することを目的に赴任した隆家だったが、都にいたときとは見違えるように生き生きとし、平為賢(神尾佑)ら信頼できる武者たちと絆を育む生活に満ち足りていた。

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 かつて、花山院(本郷奏多)の牛車に矢を放つ不祥事「長徳の変」を引き起こす“問題児”でもあった隆家だが、大宰府に赴いてからの劇的な変化を、竜星はこう分析する。

 「目を治療して回復してから、まるで“第3の目”が開眼したかのように、悟りを開いたかのような境地になっているなと。最終的にはすこぶる優しい男になった気がしますね。それは彼が都で多くの人の苦しみ、痛みを見て、大切な人たちを失って、いろいろなものと向き合いながら生きてきた結果だと思います」

 第46回で、政庁でまひろと対面した時、隆家は「富なぞいらぬ、仲間がおれば」と晴れやかな表情を見せていたが、竜星は隆家が本来なりたい自分になったことで外見にもそれが現れていると話す。

 「きっと彼は都での貴族たちの上っ面な関係に飽き飽きしていたんだと思います。“この人たちは結局、地位とか利害関係でしか人を見ないんだな”って。ずっとそういうふうに世の中を見てきて心の底でうんざりしていたから、大宰府に行って髭モジャになったのかなって思うんですよね。なぜあの風貌になったのかっていうと、おそらく彼が本来なりたい姿になったのだと。あの格好で内裏にいたら違和感ですよ。大宰府でも官人の服装だと違和感がありますが、甲冑をつけるとなぜか似合う。彼はもともと武力行使を重要視する考えがあって、大宰府に行って武者たちをはじめ、いわゆる“ルール”に縛られない人たちに出会うことによって、いろいろなことが芽生えて、きっとああいう姿になったのかなと思います。大宰府は、隆家が自由になれる、自分らしくいられる場所だったんでしょうね。誰に何か言われるわけでもなく、生きやすかったのだと」

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 隆家が武力を重要視する片鱗は、9月1日・第33回にもあった。除目の際、道長は、国の支配をめぐり、平致頼とたびたび諍いを起こした平維衡を伊勢守に登用しようとする案に反対し、そんな道長を支持する実資(秋山竜次)に対して、隆家は「恐れながら、帝には朝廷も武力を持つべきという考えは、おありにならないのでございましょうか。これから先はそういう道を選ぶことが、あるいは肝要となるやもしれません。よくよく考えるべきと存じます」と意見した。

 そして第46回では、日本を揺るがす大事件が九州で勃発。壱岐に海賊が襲来し、子供と年寄りはすべて殺され、他の者は連れ去られた上に作物も牛馬も食いつくされた。隆家はすぐさま筑前、筑後、豊前、肥前の国守に使いを遣わし、博多に軍勢を集めることを決意。武者一団を引き連れて大宰府を発ち、博多へ。敵の船団五十艘が向かってくると、各地からの兵が到着しないなかで「小勢でも、今我らが討って出て食い止めねば。陸に上がられては無辜の民に害が及ぶ」と出陣を決めた。この時の隆家の決断について、竜星はこう語る。

 「おそらく彼自身、武力を持つことが必要だというのは常々思ってきた人間なので、 実際に攻められたことに対しての驚きや動揺はあるにしろ、“動かなければならない”っていう方が先に立つ感覚なのかなと思います。それに、朝廷に報告して返事を待ったところで答えはもうわかっている。きっと彼らには祈ることしかできないだろうと。だから彼は現場主義なんですよね。自分でものを見て、決めたい。だから瞬時に動けたんだろうし、仲間を持ったっていうのも大きかったと思います。別に何か目的があって武者たちと仲良くなったわけではないけど、結果的に彼らに助けられるっていう。それは、隆家が大宰府で分け隔てなく人と接して好かれていたからだと思いますし、それってすごく大事なことですよね」

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 隆家は浜で待機していた兵たちに鏑矢を放つよう命じると、敵は初めて聞く鏑矢の音に恐れをなしたのか統率が乱れ、やがて能古島に退却。隆家はその後も賊を追い払うべく戦略を練った。こうして日本の危機を救った隆家に、竜星は 「花山院に矢を放って我が家が落ちぶれてしまうきっかけを作ったけれど、そんな人間が最終的にヒーローになる。すごいストーリーですよね。すごい人生を歩んでいるなって。でも、もしかしたら本人はそんなふうに思っていないのかもしれないですね。今大事なことは何か、と考えながらその場その場で生きている。そんな気がします」とリスペクトをにじませていた。(取材・文:編集部・石井百合子)

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