田中圭、最後の『ドクターX』は「サブに徹した」完結編でも貫いた森本先生らしさ
「私、失敗しないので」という痛快な台詞で大人気を博した米倉涼子主演の国民的医療ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」が、『劇場版ドクターX』(全国公開中)でいよいよファイナルを迎える。放送開始から12年、第1シリーズから断続的に登場してきた森本光を演じた田中圭は、完結編となる今作にどう向き合ってきたのか。
諸先輩方の思いが詰まっている完結編
新米医師時代に主人公・大門未知子(米倉)と出会い、その後、シリーズの要所要所で顔を見せていた森本は、今作では未知子の過去をたどる重要な役割を担っている。田中は「国民的ドラマのファイナルに呼んでいただけたことがすごくうれしいです。しかも台本を開いたら想像の何倍も出番があって、ありがたいなと思いました」と感慨深げに語る。
変に気負わず、いつも通りのお芝居を心掛けたというが、「特に意識したのは“サブに徹しよう”ということ。馴染みすぎて、完成品を観て『僕、出てた?』と思ったくらいです」と田中は笑う。「でも、それが森本らしさだと思います。長く演じさせていただいているので、久しぶりの撮影現場でも共演者のみなさんやスタッフさんが思い出させてくれて、本当にナチュラルに役に入れて、“現場に行ったら森本”でした(笑)」
物語については「壮大! と感じました」と感嘆。「有終の美というわけではないですが、鬼気迫る凄まじい何かがあって、観ると“食らう”ものがあると思います。大門未知子という存在もそうですが、非現実的だけどリアリティーがあって説得力もあるというこの作品の力は、今回も感じました。最後の手術シーンは、やっぱり心に沁みました。米倉さんも含め、諸先輩方のいままでの思いが詰まっている。勝手に流れ込んでくるエネルギーというか、パワーが本当にすごいです」
内山聖子エグゼクティブプロデューサーは、田中のことを「弟分」だったとシネマトゥデイのインタビューで語っていたが「僕にとっても、とても貴重な現場です」と田中も同意する。「僕も40歳になって、違う現場だと先輩でいることも多いんです。でも『ドクターX』は、一堂に会するのがあり得ないくらいの大先輩やレジェンドばかりで、お芝居だけではないところでも素敵な背中を見せていただける、ほぼ唯一といってもいい現場です。20代の頃から、すごく幸せな環境で成長させていただいたなと思っています」と感謝をささげる。
面白くてわかりやすくて、スカッとする魅力
「カッコいい方しかいないので、自分もそうありたいなと思いました」という田中。諸先輩方との具体的なエピソードとして「これは全員ですが……」と切り出し、「みなさん、本当にたわいもない話しかしないんです」と笑う。「ドラマシリーズのときに、手術シーンの合間、遠藤憲一さん(海老名敬役)がお気に入りの現場バッグの話を熱弁しているんです。新しくこれに変えたんだとかって。それをほかのみなさんが微笑ましく見てる。なんだろうこの穏やかな時間(笑)と思ったのが、すごく印象に残っています」
「みなさん、緊張感があるところと、そうでないところを熟知していらっしゃいます。力を抜いたほうがいいところがあるという意味の、背中の押され方をしています。僕も抜くところは抜いてしまうので(笑)。ただ、いまの若手たちは真面目でまっすぐでテストから本気を出すタイプが多くて、それは別に悪いことではないけれど、そういうやり方だけではないよ、いろんなやり方を見ないとね、と思います」と後輩思いの発言も。「『ドクターX』で大先輩方から僕が学んだ面白い意志を、ほかの現場で後輩たちに伝えていけたらなと思っています」
米倉については「すごく素敵な女優さんです」とにっこり。「このシリーズの前にも共演させていただいていましたが、『ドクターX』がはじまるタイミングでミュージカル『シカゴ』を見に行かせていただきました。たった1人の日本人キャストとして堂々と光を放っていたあの姿と、そのドキュメンタリーを見て、すごい努力をして、悔しい思いもして、でも絶対にめげなかったんだろうなと思いました。強いところも弱いところもあって魅力的で、改めてカッコいいなと思いました。現場では常に引っ張ってくださり、米倉さんだからここまでの作品になったんだというのは、すごく感じています」
今作の魅力は「やっぱり面白いキャラクターと勧善懲悪のわかりやすさだと思います。脇を固めるキャストのみなさんは巧みで、スカッとします。それは、観ていて楽しいよねと思います」ときっぱり。「今回、森本先生は1人で大門先生の故郷である呉に行っていて、大門先生のエピソードゼロを深掘りするナビゲーター的な役割です。もう思い残すことはございません」とすっきりした顔を見せる田中。「でも、まだ終わった実感はあまりなく、また呼んでもらえるのではないかという気持ちもあります」と笑った。(取材・文:早川あゆみ)