実写『バババ』吉沢亮&板垣李光人、起用の理由は?「たつの湯」撮影の裏側公開
奥嶋ひろまさの人気漫画を吉沢亮主演で実写映画化する『ババンババンバンバンパイア』(2025年2月14日公開)の撮影が2024年8月12日、練馬区石神井台にある「たつの湯」で行われ、プロデューサー・鴨井雄一と、井上千尋が撮影の裏側を語った。
原作は、2021年11月号より「別冊少年チャンピオン」(秋田書店)で連載開始された同名漫画。主人公は、銭湯のひとり息子である李仁の「18歳童貞の血」を求め、銭湯で住み込みで働きながら李仁の成長と純潔を見守る450歳のバンパイア、森蘭丸。そんなある日、李仁がクラスメイトの葵にひと目ぼれしたことから、蘭丸は李仁の恋の成就=童貞喪失の危機を回避すべく奮闘する……というラブコメで、今年2月末にテレビアニメと実写映画の放送・公開が発表。アニメは2025年1月11日よりテレビ朝日系(毎週土曜夜11時30分~)で放送される。
キャストはこれまで主人公・蘭丸役に吉沢、立野李仁役に板垣李光人、篠塚葵役に原菜乃華、森蘭丸の兄・森長可(もりながよし)役に眞栄田郷敦、蘭丸を長年追い続けるバンパイアハンターの坂本梅太郎役に満島真之介、葵の兄で番長のフランケンこと篠塚健役に関口メンディー、織田信長役に堤真一が決定している。
主人公・森蘭丸役に吉沢を起用した理由について、鴨井は「この役を考えるときにまず美しさが大事で。なおかつギャグ、コミカルなシーンも全力でやれるチャーミングさを兼ね備えた方が吉沢さんだった」と念願かなってのキャスティングだったといい、井上は吉沢の蘭丸姿を目にすると「まさに本物が出てきたという感じですね。ずっと思い描いてきた蘭丸が目の前にいると感動しました」といい、鴨井も「日本人のキャストでバンパイアにハマる人はいるのかと半信半疑のところがありましたが、実際に衣装をつけてメイクもされた吉沢さんを見て、バンパイアでしかないと思ったので間違いなかったです」とあらためてはまり役であることを確信した。ビジュアルに関しては、とりわけ牙、耳のサイズや向きなどを細かく確認しながら作っていったという。
これまで吉沢は『ブラックナイトパレード』(2022)や、本作の浜崎慎治監督と組んだ『一度死んでみた』(2020)をはじめ、多数のコメディー作品に出演しているが、本人もコメディーというジャンルに思い入れがあるようで、本作の撮影をこう語っている。
「コメディ作品への出演は久し振りでした。僕自身コメディを観るのが好きで、昔からコメディに対する憧れが強いんです。いまだに演じる際は緊張しますが、セリフのテンポ感や、これ以上やったらつまらないだろうなとか、とにかく間を意識していました」
この日、撮影が行われた「たつの湯」は、原作で蘭丸が働く銭湯「こいの湯」のモデルとなった老舗銭湯。映画化する際に、この地で撮影することは譲れない条件だったといい、鴨井は「原作のモデルとなった銭湯であるのはもちろんのこと、映画の撮影地としても最高なんです。ここまで引き尻があって、風情のある面構えの銭湯はなかなかないので。撮影で真っ先にご相談したのがたつの湯さんでした」と振り返る。吉沢も「煙突がすごくいい味を出だしているなと思いました。映画で出てくる煙突ってCGで作ると思っていたので、実際にあるんだという驚きがありました。外観もおしゃれですよね。毎日汗だくだったので一風呂浴びてから帰りたいなって、いつも思っていました(笑)」と魅せられた様子だ。
撮影されたのは、蘭丸が恋敵である葵に行動を起こすシーン。浜崎慎治監督、撮影監督の吉田明義らが参加した。蘭丸は「こいの湯」から出てきた葵を待ち構え血を吸おうとするが、蘭丸に恋する葵はいきなりの“壁ドン”に胸キュン。そこへ偶然李仁がやってきて、蘭丸が葵にキスしようとしていると思い込む……と勘違いの連鎖が巻き起こるコミカルなシチュエーションだ。吉沢と浜崎監督は2020年公開の映画『一度死んでみた』で組んでいることもあり、気心が知れた様子。この時、葵を待ち構えていた蘭丸はなぜか胸の上で手をクロスしたポーズをとっていたが、吉沢が監督の元を訪れ「手のひらを閉じるか閉じないか、どちらがいいのか」と相談する一幕もあった。
壁ドンシーンについて、吉沢は「急に少女漫画チックになるんですけど、それが素直に笑ってもらえたらいいなと思ったので、スマートさを出すシーンもスマートさをオーバー気味にして面白さが出ればいいなと。動きなども自分なりに考えて演じていました。現場に行ってみないと正直分からない部分もあるので、ロケーションや、相手との距離感を見ながら試してみて、違うなと思ったら変えたり試行錯誤しました」と役へのアプローチに触れる。
一方、葵を演じる原菜乃華は吉沢の演技に笑いが止まらなかったようで「おもしろくて、笑いをこらえるのに必死でした。とくに初日は笑いに対する免疫がない状態だったので、たくさん迷惑をかけたと思います(笑)。私の方面にカメラが向いている時は我慢できるのですが、吉沢さんにカメラが向いている時は笑ってしまって(笑)」「蘭丸がザビエルみたいなポーズで登場するシーンでは、ドライ(リハーサル)の時から笑いが止まりませんでした。今回至近距離の撮影が多いので辛かったです(笑)」と楽しそうに述懐。
そして、蘭丸を“恋敵”と勘違いし、「何チューしようとしてるんだよ!」と慌てる高校生の李仁を演じるのが板垣李光人。「森さん、僕たち恋のライバルだね!」「僕、負けないから!」とライバル宣言するピュアさは、蘭丸を「的外れすぎてむしろかわいい!」と悶絶させる。板垣の実年齢は22歳だが、まったく違和感なく15歳を演じて見せている。李仁役についてはそもそも原作者の奥嶋が板垣李光人本人をイメージし、名前までとっていることから板垣のキャスティングは「一択」だったという。
鴨井は「原作者がイメージされていたこともあって実際演じていただくと、板垣さんでしかありえなかったですね。李仁が肝の作品でもあってそこがバシッとハマったので、この作品がある程度見えたなと。吉沢さんとの相性もばっちりで、最高としか言いようがない。大河ドラマなどでも共演されていて、クランクイン前も食事に行かれたりしたそうです。ちなみに、原作では幼少期の李仁は奥嶋さんの息子さんをモデルにされているそうです」と語り、井上も「お客さんにも李仁をかわいいと思わせないと作品が成立しないので、無類のかわいさを備えた板垣さんしかいないと……。受けていただけなかったらどうしようという思いでしたね」と安堵した様子だ。
なお、板垣自身は「今まで色々な映像作品に出演させていただきましたが、新しい感覚がありました」と言い、「李仁の感情の流れとして作品の中でこういう風にしたいとか、このセリフはここに足したほうがいいんじゃないかみたいな部分は僕からもアイデアを出しました。撮影を重ねていくと段々自分でもコメディシーンのモード的なところを出せるようになっていきましたが、基本的に李仁は普通でいようという思いはありました。李仁以外の皆さんはコメディシーンが多く、面白く演じられていたので、そういう様子を見て、ちょっといいなとは思いました(笑)」と撮影を振り返っている。(取材・文:編集部・石井百合子)