見逃せない2025年注目の邦画10選
このところアニメを中心にメガヒットが生まれている邦画。もちろん2025年もアニメの注目作がたくさんあるが、一方で今年は見ごたえのある実写作品がいくつも待機している。俳優にとっての当たり役が誕生する一年になるかもしれない。(斉藤博昭)
【画像】北野武最新作はベネチアで6分間のスタンディングオベーション!
『敵』1月17日公開
2024年の第37回東京国際映画祭で、日本映画として19年ぶりの東京グランプリを受賞。『桐島、部活やめるってよ』などの吉田大八の最優秀監督賞、超ベテランの長塚京三の最優秀男優賞と合わせて3冠を達成したことで注目を浴びた。筒井康隆の同名小説を原作に、陰影深いモノクロ映像で描かれるのは、妻に先立たれ、一人暮らしを続ける77歳の元大学教授の日常。日々の食事や編集者との仕事、教え子やバーで出会った若い女性との妖しい関係といったエピソードが描かれるが、やがて現実と非現実のボーダーが曖昧になり、とにかく不思議な感覚に引きずり込まれる野心作。いま最も勢いのある河合優実も共演。
『悪い夏』3月20日公開
『東京リベンジャーズ』シリーズなど出演作が次々と話題になり、いま俳優として絶好調の波に乗っている北村匠海。この春スタートのNHKの連続テレビ小説「あんぱん」のメインキャストでさらに人気が高まりそうだが、そのタイミングで公開されるのが本作。彼が演じるのは、市役所の生活福祉課勤務の主人公。真面目に働いてきた公務員が、ある生活保護受給者との出会いをきっかけにズルズルと“闇堕ち”する衝撃の運命が展開していく。出てくるキャラがクズとワルばかり。監督の城定秀夫は、俳優の実力を一段も二段も引き上げる名手なので、北村が新境地をみせれば今年の主演男優賞も夢じゃない!?
『実写版 ゲッターロボ』春公開
原作・永井豪、作画・石川賢で1970年代にコミック、およびテレビ放映のアニメで大人気を呼んだ作品が誕生50周年を記念して待望の実写化。ロボットの合体や変形がフィーチャーされ、複数のマシンにそれぞれ操縦者が乗り込み、一つになって戦うスタイルは、その後の多くの作品やキャラクターに影響を与えた。実写化に向けてクラウドファンディングが行われるなど、ファンの熱い支援が作品にどのように生かされたのか。現段階でもその内容、キャストなどの情報が解禁されていないので、2025年のサプライズ的な作品と言える。
『国宝』6月6日公開
吉田修一の小説が映画化されると常に注目されるが、この原作は彼が3年間にもわたって歌舞伎の世界に出入りして執筆した渾身の力作。吉沢亮がヤクザの家に生まれながら歌舞伎の世界に入る主人公・喜久雄を演じ、歌舞伎の名門の跡取り息子の俊介に横浜流星のほか、渡辺謙、寺島しのぶら豪華キャストが集結した。伝統芸能の世界を背景に、喜久雄と俊介が芸を磨き、やがて国の宝といわれる役者になるという重厚で壮大なストーリーが展開。監督の李相日は『悪人』『怒り』に続いての吉田作品。2025年を代表する、まさに“国宝的”傑作となる可能性を秘めた一作。
『秒速5センチメートル』秋公開
アニメーションの巨匠として日本のみならず、今や世界中からリスペクトを集める新海誠監督。映像美や音楽のセンス、美しいセリフなどで彼の“原点”とされてきた『秒速5センチメートル』が、新海作品で初の実写化。小学生、高校生、社会人と主人公の18年にわたる物語を、新海作品『すずめの戸締まり』にも参加した松村北斗が演じる。松村は本作の他にも『ファーストキス 1ST KISS』(2月7日公開)が公開され、2025年はさらなる飛躍が期待できる。監督はその瑞々しい才能で日本映画期待の星といわれる奥山由之。弟は昨年『ぼくのお日さま』が話題になった奥山大史監督だ。
『新幹線大爆破』Netflixで2025年世界独占配信予定
配信の映画で2025年に大きな話題を集めそうなのが本作。1975年に高倉健が主演して大ヒットし、ハリウッド作品の『スピード』にインスピレーションを与えたという同名作のリブートだ。走行中の新幹線に爆弾を仕掛けた犯人が、乗客の命と引き換えに大金を手に入れようとする特大スケールの犯罪スペクタクルが、現代にどのようにアップデートされるのか。監督は『シン・ゴジラ』などの樋口真嗣ということで、VFXを駆使した度肝を抜くビジュアルに期待が高まる。主演は樋口監督とは『日本沈没』以来18年ぶりのタッグとなる草なぎ剛。Netflixならではの大胆なチャレンジ精神が満ちた力作になりそうだ。
『宝島』2025年公開
第160回直木賞を受賞した真藤順丈の小説を映画化。第2次世界大戦後、日本に返還される前の沖縄で、米軍基地から盗み出したものを人々に配る“戦果アギヤー”と呼ばれた者たち。戦後20年にわたる彼らの激動の運命をつづっていく。『るろうに剣心』シリーズの大友啓史がメガホンをとり、妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太らが共演。ハリウッドのスタジオも製作に名を連ねる日米共同製作で、沖縄で大がかりな撮影を敢行。日本映画の常識を超えたシーンが確約されている。沖縄の過去が日本の現在と地続きになる物語。作り手たちの熱量が伝わる、骨太な感動作がお目見えするのではないか。
『ブラック・ショーマン』2025年公開
天才物理学者・湯川学の『ガリレオ』シリーズを生んだ、原作・東野圭吾×主演・福山雅治の名コンビが、新たに挑む話題作。世界各国で翻訳された東野のベストセラー「ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人」が原作で、ラスベガスでも人気だった元マジシャンの神尾武史が主人公。鮮やかなマジックのテクニックを持ち、他人を騙すのも得意。何事にもクールに対処し、近寄りがたい、ある意味“ダークヒーロー”的側面をもつ神尾役で、福山の新境地が予感される。そんな神尾の姪で、彼と共に殺人事件解決に臨むヒロインに有村架純。2人のバディムービーとしての魅力を備えたミステリーが誕生する。
『Broken Rage』Prime Videoで2025年世界配信予定
『首』に続く北野武監督の新作は、Amazon MGM スタジオと組み、Amazonプライムで配信される。第81回ベネチア国際映画祭のアウト・オブ・コンペティションで上映され、ヨーロッパの北野ファンを喜ばせた。警察とヤクザの間で「ねずみ」という名の殺し屋がサバイブする物語は、いかにも北野映画らしいが、ユニークなのは上映時間62分で2部作という点。前半はシリアスな犯罪サスペンスで、後半は同じストーリーを笑いもたっぷりのセルフパロディーで描くという大胆な作りは、観返して楽しめる配信にはぴったりだ。ネズミ役を監督自身(ビートたけし)が演じるほか、浅野忠信、大森南朋、中村獅童といった『首』のキャストが再集結した。
『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE』(仮)2025年公開
2025年も例年どおりアニメ作品の大ヒットが見込まれるが、その中で注目したいのが本作。「ルパン三世」の完全新作2Dアニメーションの劇場版であり、同タイプの作品としては1996年の『ルパン三世 DEAD OR ALIVE』以来、29年ぶりとなる。ルパン一味が究極の「お宝」を狙っての攻防が、ド迫力のアクションとスタイリッシュな映像で展開されるのは確実。ルパン役の栗田貫一ら声優もおなじみの面々が揃い、監督の小池健をはじめアニメシリーズ「LUPIN THE IIIRD」を手がけたスタッフが本作にも集まったので安心感は満点だ。近年の劇場アニメヒット作と違って、長年の人気を誇った作品の新作がどこまで新たなファンを増やすかも気になるところ。