横浜流星「べらぼう」は「いい意味で大河ドラマらしくない」 同世代にも響く魅力
1月5日に放送スタートとなる大河ドラマ「べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~」(毎週日曜NHK総合よる8時~ほか※初回15分拡大)で大河ドラマ初出演にして主演を務める横浜流星(28)。2024年6月に京都でクランクインして約5か月の撮影を経た心境から、演じる蔦屋重三郎の魅力、そして「いい意味で大河ドラマらしくない」という本作の魅力について語った。
本作は、江戸時代中期を舞台に、喜多川歌麿、葛飾北斎、山東京伝、滝沢馬琴、東洲斎写楽らを世に送り出し、“江戸のメディア王”として名を馳せた蔦屋重三郎の生涯を描く物語。脚本を、大河ドラマ「おんな城主 直虎」(2017)やドラマ「義母と娘のブルース」(2018)、「大奥」(2023)などの森下佳子が務める。キャストでは、横浜のほか安田顕(平賀源内役)、小芝風花(花の井/のちの五代目瀬川役)、宮沢氷魚(田沼意知役)、里見浩太朗(須原屋市兵衛役)、渡辺謙(田沼意次役)らが決定している。
制作統括の石村将太によると、本作では大河ドラマで初めて取り扱う江戸時代中期を再現するとあって、これまで京都、愛知、茨城、関東近郊などでロケを実施。東宝スタジオでは吉原のステージが組まれた。石村は「流星さんには初日から日々、蔦屋重三郎という役に真摯に、真面目に、実直に取り組んでいただき、エネルギッシュ溢れる若々しい蔦重を演じてくださっています」と話す。
横浜にとって大河ドラマへの出演のみならず、NHKドラマへの出演も初となり、オファーを受けたときの心境について「(大河ドラマへの出演は)もちろん目標の1つではありましたが、それよりも“なぜ?”というのが大きかった」と振り返る。
「おそらく多くの方がNHKさんの作品に携わったうえで大河ドラマの主演を務められていると思うんです。僕はNHKさんの作品に携わったことがないので、なぜ自分を選んでいただけたのかと、今でも疑問に思ってます。ただ、選んでいただいたからには責任と覚悟をもって作品を届けたいと思います。今5か月間、作品と向き合って感じているのは、いい意味で大河ドラマらしくないということです。新しい大河ドラマになっていると思います」
「大河ドラマらしくない」というのはどういうことなのか……? 横浜は、「もちろんスケール感やセット、美術の素晴らしさは大河ならではのことですが」と前置きしつつ、意図についてこう語る。
「例えば戦国時代のような合戦シーンはありませんが、商いの戦が展開され、ビジネスストーリーとしての側面もあるんです。喜劇的要素もあり、展開もスピーディーでエンタメになっている。森下先生が書かれた江戸時代の人々が陽気なキャラクターが多いこともあって、これまで自分の中では大河ドラマはどちらかというと堅い印象があり、だから若い世代は構えてしまう部分もあるのかなと感じていたのですが、この作品は違っていて。 だからこそ、これまで大河ドラマをご覧になっていない方や、自分と同じ世代の方々にも観ていただけたらと思っています。また、それが自分の使命とも思っています」
主人公・蔦屋重三郎(以降、蔦重)は、江戸郊外の吉原の貧しい庶民の子に生まれ、幼くして両親と生き別れ、引手茶屋の養子に。血のつながりをこえた人のつながりの中で育まれた彼は、貸本屋から身を興し、書籍の編集・出版業を開始。多くの文化人たちと交流を重ね、「黄表紙」という挿絵をふんだんに使用した書籍でヒット作を連発。33歳で商業の中心地・日本橋に店を構え“江戸の出版王”へと成り上がっていく。横浜いわく、蔦重の一番の魅力は「自分ではなく誰かのために動けるところ」だという。
「蔦重は今で言うと出版社の社長であり、プロデュース、営業、それら全て自分で担う。本当に多才な人物。なぜそうなったかっていうのは、元々持っているものもあると思うんです。情に厚かったり、責任感があったり、そして挑戦し、失敗してもめげないメンタルの強さ。さらに彼の行動力が凄まじく、いつも驚かされるのですが、それを深掘りすると、彼は常に誰かのために動いている。吉原、女郎、絵師、そして世の中のため。そういう風に思える人間は強いと思います。何倍もの力にもなりますし、協力も得られる。人としてリスペクトしていますし、自分もそうありたいと思います」
その一方で、蔦重は人間臭く情けないところもありながら「本来みながこう生きたいと思うような共感性が高い人物」だとも。役づくりにおいては、実際に蔦重が生まれ育った場所を訪れて当時の空気を感じたり、資料を読んだり、識者の意見を得たりさまざまな角度からアプローチしているという横浜。その一環として、日曜劇場「DCU」(2022)で共演し、2021年の映画『HOKUSAI』で同じ蔦屋重三郎を演じた阿部寛や、本作が6度目の大河ドラマ出演となる共演者の渡辺謙からアドバイスを得ることも。
「阿部さんがおっしゃったのは『流星らしく』の一言でしたが、その言葉には阿部さんのいろいろな思いが込められていると思うので、それをちゃんと汲み取って生きられればと思っています。謙さんとは、この作品の前に『国宝』(2025年6月6日公開)という映画で親子の設定でご一緒していて、その時に食事に行き、お話をさせていただきました。謙さんも僕と同じ年で大河ドラマの主演を務められたそうで、“とにかくまっすぐ全力でやればいい”と力強い言葉をいただいたので、その言葉を信じ、生きていけたらと。共演シーン自体は多くはないのですが、現場でも謙さんの佇まい、お芝居を見て学ぶことが多いので、その時間は大切にしています」
演じるうえでは特に所作や江戸言葉(べらんめえ調)に心を砕いているといい、「本当に難しいです。今回の作品ではこてこてな方言ではないですが、例えば『~でさァ』といった言葉のニュアンスだったり。普段使っている言葉ではないからこそ、馴染ませること、蔦重として話すことを大切にしています。監修の先生方の協力を得て落とし込んでいけたら」と初めて挑戦する多くに奮闘しつつも、長期間にわたって一人の人物を演じることは「贅沢なこと」と強調する。
「1年間というのはやはり贅沢。普段、いろいろな作品をやらせていただいても準備の時間が足りないなと思うことが多いので、その点においてはすごく幸せなことだなと思っています。僕は戦隊もの(2014年放送の特撮シリーズ『烈車戦隊トッキュウジャー』)をやらせていただだいたときにも1年半ぐらい撮影を経験し、そこで芝居の楽しさを知り、この世界にで生きていこうと決めたので、こうして10年経った今、また同じようなことをできることに何か運命を感じています」
演出陣からは「とにかく明るく」と言われるといい、「そこが彼の良さでもあるので大切にしていきたいですし、とにかく体力をつけようと。体が資本ですし、1年間走り切る体力をつけないといけないなと思っています」と力強く語っていた。(編集部・石井百合子)