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『室井慎次』本広克行監督、君塚脚本は“聖書” 想像の数段上をいく内容「簡単には変えられない」

柳葉敏郎ふんする現在の室井慎次
柳葉敏郎ふんする現在の室井慎次 - (c)2024 フジテレビジョン ビーエスフジ 東宝

 「踊るプロジェクト」12年ぶりとなる新作映画『室井慎次 生き続ける者』が、前編にあたる『室井慎次 敗れざる者』ともに大ヒットを記録しており、先日「踊る大捜査線」シリーズ最新作『踊る大捜査線 N.E.W.』の製作も発表された。『室井慎次』2作のメガホンを取り、「踊る」シリーズをけん引してきた本広克行監督は、いま、何を思うのか。『生き続ける者』が公開されたからこそ話せることを、本広監督が打ち明けた。(以下『敗れざる者/生き続ける者』のネタバレを含みます)

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脚本家・君塚良一は「父親みたいな存在」

本広克行監督

 本広監督は「君塚(良一)さんの脚本は“聖書”みたいに思っているから、簡単には変えられないんですよ」と「踊る」シリーズに臨む際の心構えを語る。「ほかの脚本家だったら『このほうが面白いよ』『こうしようよ』ってガンガン言えるんですけど、君塚さんの場合は、君塚さんがおっしゃることをメモしています(笑)。僕は君塚さんの脚本で育ったようなものなので、父親みたいなんです」と多大な尊敬を示す。「君塚さんは『演出家としては、本広監督が師匠だと思っている』と言ってくださるんですけど、とんでもない。ずっと怒られているほうが気が楽です(笑)」

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 実際、君塚良一本人はシネマトゥデイのインタビューでも本広監督の手腕を絶賛していたが、本広監督の感じ方は違うようだ。

 「そういうのもあって、『室井慎次』2作は最初お断りしたんです。君塚さんの深い思いからはじまった話ですし、僕はそれはちょっと引き取れないなって。でも、亀山(千広)プロデューサーが調整してくれたんですね。亀山さんが脚本にどんどん点を打っていって、それを君塚さんとつないでいったら、『これなら僕ができるかも』と思えるものになっていきました。やっぱり頼りになるプロデューサーですね。プロデューサーにパワーがないと、作品は大きくならないんだなと思います。亀山さんは、室井さんのことを自分のことのように話すんです。実際、大きな組織でプロデューサーから社長になっているし、室井さんにちょっと似ていますよね」

 「いつもの僕だったら、すちゃらかコメディーでどうボケるかしか考えてないんですが、『室井』はモードを切り替えました。雪景色で家族の話だし、イメージとしてはどうしてもドラマ『北の国から』なんですよ。僕はフジテレビ大好きっ子でずっと観ていましたから」と思い返す。「雪には慣れてなくて、コントロールするのは苦労しましたけど、室井の最期のシーンは上手くいきました。綺麗でしたね。あの日、リアルに吹雪で、さらに我々が巨大扇風機を回したんです。ドローンオペレーターが『無理です!』っていうのを、『1回だけやってみて!』と頼み込んで、飛ばしてもらった。うまくいってラッキーでした。無欲だからよかったのかな。いいものになりますようにと、祈るように撮っていた記憶があります」

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『踊る大捜査線』というだけでザワザワする

松下洸平が演じた新キャラ・桜章太郎(右) - (c)2024 フジテレビジョン ビーエスフジ 東宝

 『敗れざる者』公開時に実施したシネマトゥデイのインタビューで、本広監督が語っていた「事件に関しても『こんな解決方法があるんだなあ』と驚いた」という詳細も明かした。それは、松下洸平演じる桜章太郎の箇所だった。「桜が『仮定の話なんですけど』と事件の全貌をしゃべっちゃうんです。2時間ドラマならクライマックスに断崖絶壁で繰り広げられるような壮大なドラマを(笑)。のちに『その仮定の話が正解なんだ!』ってわかる。事件の解決は尺を食いますが、これだとさらっと終わりますよね。自分が考えているより数段上の脚本だって思いました」

 さらに本広監督は、地上波で再放送されていた「踊る大捜査線 THE LAST TV サラリーマン刑事と最後の難事件」と『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』についても、「コメディーやっている傍らで、2・26事件の現代版みたいなことが起きていますからね。それに『THE FINAL』で明らかになる鳥飼誠一(小栗旬)の思いが、すでに『THE LAST TV』に台詞として出てきている。うわー! と思いました」と打ち明けた。「君塚さんに『すごいです』と言いすぎると『うるさい』と言われてしまうので(笑)、僕は勝手に仲間内でしゃべっています。僕は助監督をやっていたころからずっと君塚さんの脚本を持っていて、省略のしかたとか分析していました」

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 自身の立場は「料理人」だという。「君塚さんが材料をくれて、僕が料理したものが、亀山さんの口に合っていたんでしょうね。役者さんたちにも納得してもらえて、お客さんにも愛してもらえる料理にできたのかなとは思います」としみじみ。「どれだけ力を入れても、あまり話題にならないまま終わるものもたくさんあります。僕らは、作ったからにはたくさん観てほしい。その点、『踊る』は待っていてくれる方が多いので、うれしいんですよ」と心境を明かす。「『踊る』の場合、役者もスタッフも優秀な人がそろってくれるんです。だからやっていて気持ちいいし、楽しいし、ワクワクします。それくらいすごいコンテンツなんだなと思うと同時に、『踊る』というだけでザワザワしますね。『踊る』だけですよ、『いまやっているんだって?』って周囲の人から聞かれまくるコンテンツは(笑)」(取材・文:早川あゆみ)

『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』は全国公開中

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