Netflix「阿修羅のごとく」四姉妹キャスティングの裏側
間もなく配信スタートとなるNetflixシリーズ「阿修羅のごとく」(1月9日世界独占配信・全7話)。1970年代に放送された脚本家・向田邦子の名作ホームドラマを是枝裕和監督がリメイクする本作で、物語の軸となる四姉妹を演じるのが宮沢りえ、尾野真千子、蒼井優、広瀬すず。そのキャスティングの経緯、および4人の演技について企画プロデューサーの八木康夫と、是枝監督がプレス資料内で語っている。
【画像】宮沢りえ、尾野真千子、是枝裕和監督らメイキングカット
本作は、老いた父に愛人がいたことが判明したのをきっかけに、四姉妹が抱える葛藤や秘密が浮かび上がりもつれ合っていくさまを描くストーリー。NHK版は1979年に第一部(3エピソード)、翌年に第二部(4エピソード)が放送され、Netflixも同じ話数で制作されている。夫を亡くし、活け花の師匠として生計を立てる長女・綱子に宮沢りえ、会社員の夫と二人の子供と暮らす専業主婦の次女・巻子に尾野真千子、恋愛に不器用な図書館司書の三女・滝子に蒼井優、喫茶店のウエイトレスで、ボクサーの卵と同棲する四女・咲子に広瀬すずがふんする。
企画を立ち上げた八木Pは、「なによりも大事だと思ったのはキャスティング」だったといい、イメージキャストの段階で四姉妹役に宮沢、尾野、蒼井、広瀬にオファー。「みなさんに連絡したところ二つ返事で了承をいただきました。僕たちの世界では、イメージキャストの50%でも実現すれば成功だと言われているんですね。それが100%のかたちで実現しました。それほど、みなさんにとって『阿修羅のごとく』は一度は演じてみたい魅力的な作品だったのではと思いました」と語っている。是枝監督を「みんなタイプはバラバラだけど、全体としてバランスはすごくよかったですね。この4人だったから、向田邦子の脚本を立体化することができたんだと思います」と言わしめている。
是枝監督いわく「4人はお芝居のつかみ方がみんなバラバラ」。料亭「桝川」の主人・貞治(内野聖陽)との密会を続ける長女・綱子を演じる宮沢については「いちばん自由なのは、実は長女役の宮沢りえさん。事前にはほとんど決め込んでいなくて、4人の掛け合いの中で、じゃあ私はこう動こうって自分のポジションをつかんでいくんです。動体視力がいいんでしょうね。生き生きしていたと思います」と撮影を振り返る。
そんな宮沢の見事な受けをしていたのが次女役の尾野真千子だったと是枝監督。次女・巻子は、一見幸せそうに見えて実は夫・鷹男(本木雅弘)の浮気を疑っている設定。「待ち時間のあいだ、宮沢さんと尾野さんがずっとふざけていて、それに周囲が巻き込まれていく(笑)。ムードメイカーでしたね。夫の鷹男役を演じた本木雅弘さんが、尾野さんとは芝居がとてもやりやすかったと話していましたが、それくらい受けが見事でした。集中力も凄くて、一気に芝居に入っていくんです」と話す。
三女役の蒼井優とは、今回初のタッグとなった。物語は、父・恒太郎(國村隼)の不倫を知った滝子が姉妹を招集するところから幕を開ける。父の浮気調査を依頼した興信所の勝又(松田龍平)に想いを寄せられるも恋愛経験に乏しくなかなか素直になれない。是枝監督は「3秒でスイッチが入る」と述懐し、「素敵な人でしたね。尾野さんとはまた違ったタイプの集中力があって、3秒でスイッチが入る。それはそばで見ていてもわかるし、本人もわかるそうです。そして何度も繰り返しそれができる。特殊能力なのかもしれません。勝又役の松田龍平さんとの掛け合いもすごくよかったですね」とたちまち魅せられたようだ。
その滝子と犬猿の仲にある四女・咲子を演じる広瀬すずと是枝監督が組むのは、映画『海街diary』(2015)、『三度目の殺人』(2017)に続いて3度目。広瀬は「テイク1から100点を出してくる」といい、「広瀬すずさんは、基本的にNGを出しません。完璧に出来上がった状態で現場に来て、テイク1から100点を出してくる。どんなキャリアを踏むとああなるのかって、3人のお姉さんたちが驚いていました。広瀬さんは、デビュー時の宮沢さんと顔立ちが似ているとよく言われてきたそうですが、天才肌のところは似ているかもしれません」と圧倒された様子だ。
四姉妹を取り巻く男たちを演じる本木雅弘、松田龍平、藤原季節、内野聖陽とも、それぞれ抜群の相性となっている。(編集部・石井百合子)