“ステイサムの第一人者”声優・山路和弘『ビーキーパー』音響監督が語る、貴重なハマり役の魅力
ジェイソン・ステイサム主演最新作『ビーキーパー』(2025年1月3日公開)の日本語吹替版を手掛ける音響監督の高橋剛が、“ステイサムの声”を担当する声優・山路和弘の魅力をアフレコ収録の現場で語った。
【画像】“ただの養蜂家”が激強だった!『ビーキーパー』場面写真<全10点>
『ビーキーパー』は、田舎町で養蜂家(ビーキーパー)として暮らす孤独な男、アダム・クレイ(ステイサム)が、恩人の全財産を奪ったフィッシング詐欺集団に鉄槌を下す痛快リベンジアクション。今回のステイサムは、善良な人々を食い物にする悪党どもを次々と懲らしめ、やがて国家の巨大な陰謀に立ち向かうヒーローを演じる。
俳優・声優として一線で活躍する山路は、今や、“ステイサムの声といえばこの人”と言えるほどお馴染みの存在。高橋監督も数々の吹替作品でタッグを組んでおり「山路さんといえばステイサムの第一人者ですからね。あれこれ言う必要はないので、今日(の収録)も基本的には山路さんにお任せです。“今回のステイサムのキャラクターはこうです”と伝えて、そこだけ気を付けてもらえればいい」と信頼を寄せる。
実際の収録でも、アフレコブースに入った山路に短く指示をするのみで、あっという間に収録が進んでいく。まさにプロの技といったところだが、高橋監督は「キャスティングの段階で、山路さんならこう演じてくれるはずっていうのがだいたいわかるんです。僕が現場でいろいろ言うのが好きじゃないのもありますが、まず好きにやってもらって、違うところを端的に伝えていくというやり方。山路さんの時は、ほとんど何も言わずに進んでいきますね」と語る。
玄田哲章のアーノルド・シュワルツェネッガー、石丸博也のジャッキー・チェンのように、誰もが認めるハマり役となった、山路のステイサム。高橋監督も 「最初に山路さんを起用した人がやはりすごいと思います。ほかにも何人かステイサムを当てた方はいますが、やっぱり山路さんの声しかないとなる。 そのくらいハマったんですよ。ご本人もやりやすいみたいで、“ここはこんな演技でくるんじゃないか”って、(ステイサムの演技が)先読みできるって言ってましたから。何か通じるものがあるんでしょうね」とその魅力を分析する。
「今の吹替って、昔ほどいわゆる『持ち役』というものがはっきりと定まることが少なくなってきている気がしますよね。それくらい個性のあるスターが、ハリウッドや海外からなかなか出てこない時代というか。レオナルド・ディカプリオのように、俳優が年齢を重ねたことで合う声が変わったりもしますし。だからこそ、ステイサムと山路さんのように、特定の役柄やキャラクターと結びついていることは最近では珍しいし、貴重だと思います」
そんな山路が『ビーキーパー』で演じるステイサムは、決して多くを語らず黙々と蜂を育てる養蜂家クレイ。実は政府に関わる壮絶な過去を持つ男だが心根は優しく、それだけに、自分に優しく接してくれた恩人を食い物にした詐欺集団には容赦なく鉄槌を下す。
「例えば『MEG ザ・モンスター』のステイサムは、強烈なリーダーシップでみんなを引っ張るようなキャラクターでしたが、今回は行動に無駄がないすご腕工作員のような主人公。セリフの量も『MEG』とはぜんぜん違いますが、僕も山路さんもお互いの仕事をよくわかっているので、細かいやりとりはいらないですね」という高橋監督は、俳優・山路和弘の魅力をこう語る。
「山路さんって、“芝居をする”っていう感じではなく、本当にいい意味で自然体に感じられるんですよ。『ステイサムだからこうしなきゃ』という構えた感じがなくて、独特の自然さがある。もちろん、こちらも『今回は軍人なのでこういう感じで』とか、『コメディーだからこういう雰囲気で』といった説明はしますけど、基本的にはその時の山路さんのテンションに任せているところが大きいですね」
そのうえで「その山路和弘というキャラクター、声をいかにしてステイサムにはめ込むのかが僕らの仕事というか。なので、もし役と声が合ってないと感じられたらそれは僕らの責任ということ。特に映画館のスクリーンにかかる吹替版の場合、テレビと違って口と声のズレが目立ってしまうので、原音のテイストに近いものにしているんです。そういう意味でも、英語版と同じテイストで楽しめる吹替になっていると思うので、映画館で楽しんでほしいですね」(編集部・入倉功一)