Koki,出演『TOUCH/タッチ』監督が見たスター誕生の可能性「彼女には特別な何かがある」
映画『ビースト』『エベレスト 3D』などを手掛けたバルタザール・コルマウクル監督の最新作『TOUCH/タッチ』(1月24日公開)は、同名小説を基にしたアイスランド人男性と日本人女性のラブストーリーを、繊細に情感豊かに描いたドラマだ。ヒロインを演じるのは、これが長編映画2作目となる[Koki,。本作の製作の動機や撮影の裏話を、コルマウクル監督が単独インタビューで語った。
【動画】Koki,がキスシーンにも挑戦『TOUCH/タッチ』予告編
認知症の初期だと診断された主人公・クリストファー(エギル・オラフソン)が、50年前にロンドンの日本食レストランで出会って恋に落ちた女性・ミコ(Koki,)を忘れられず、彼女を探す旅に出る本作。コロナ禍が始まったばかりの2020年と1969年を行き来しながら、ミコが突然彼の前から姿を消した理由が徐々に明かされていく。
オーラフル・ヨーハン・オーラフソンの原作を読んだコルマウクル監督はすぐに映画化を熱望し、オーラフソンと共同で脚本を執筆した。「僕自身の愛との関係を反映させた、愛についてのロマンチックなストーリーを語りたかったんです。それは、人生を通して背負い続けるものですから。また、人の記憶が失われつつある時、それがどれほど重要なものになるか、ということもありました。僕たちには、自分の人生に区切りをつけ、安らぎを得たいという衝動があるんです」。
Koki,は、ロンドンで父親が経営する日本食レストランで働く、ミコという女性を演じており、初々しく芯の強そうな雰囲気がピッタリだ。「キャスティング・ディレクターのヨーコ・ナラハシ(奈良橋陽子:年齢を重ねたミコを好演している)と一緒に多くの女優をオーディションしましたが、ミコ役を見つけられませんでした。たまたま、その半年ほど前にエージェントが送ってきたビデオで見たKoki,という女の子を思い出したんです。彼女には、興味をかき立てる何かがありました」とKoki,のキャスティングの経緯を語る。
「彼女には無邪気さとタフさ、そして傷つきやすいところがあり、そういうところが大好きでした」とすぐに彼女に惹かれたと明かすコルマウクル監督。さらに「映画スターが誕生するかもしれません。Koki,は女優としてブレイクする可能性を大いに秘めていると思います」と続けた。
若き日のクリストフ役には、コルマウクル監督の息子、パルミ・コルマウクルが抜擢されたが、彼もとても魅力的だ。「私の他の息子2人は良い俳優ですが、パルミは美術をやっていて、俳優にはならないと思っていました。でも、オーディションで彼を見て驚きました。本当に(Koki,との)相性が良かったんです」と振り返る。
撮影現場でKoki,は、自分の感情をさらけ出すことにとてもオープンだったそうだ。「2人の若者がスクリーン上で恋に落ちるなら、それが起こりうるような環境を作り出さないといけません。相手をちらっと見たり、瞳に宿る優しさを演出することはできないからです。その場にいて、出てきたものを捉えるしかありません。彼女はとても優しい人で、プロ意識があって、僕が頼んだことをやりたがらないなんて一度もありませんでした」。
そして、2人の面白い撮影エピソードを披露した。「リハーサルで、初めてパルミがKoki,にキスをしないといけなかった時のことです。それは、とてもぎこちない瞬間でした。パルミはとても穏やかで内向的なんです。大丈夫だったかと聞くと、『失神状態だった』って(笑)。Koki,の方はずっと落ち着いていました。彼がちゃんと出来るか心配しましたが、撮影はとてもうまくいきました。お互いを知るために2人で一緒に出かけたりして、うまくやる方法を見つけたんです。今では彼らは、とても良い友達同士だと思います」。
ミコの父親でレストランのオーナーを演じる本木雅弘もハマり役だ。「強い父親を演じられる人を見つけたかったんです。伝統にこだわり、国を離れてもそれを手放すことができない。でも、とても優しいんです。本木雅弘はそういうオーラを持っていて、とてもチャーミングにもタフにもなれます。一緒に仕事をして本当に楽しかったです」と賞賛する。
アイスランド、イギリス、日本と3か国で撮影されたこの美しいラブストーリー、映画評論サイト Rotten Tomatoes で92%(※2025年1月時点)と高く評価されている。最後に、「日本の観客に見てもらえることを心から願っています。この映画が、日本の映画文化の中で、少しでも居場所を持てたらうれしいです」とメッセージを送った。(吉川優子 / Yuko Yoshikawa)