ただのボクシング映画ではない!新人監督の7年越しの挑戦、単館系映画『Welcome Back』が満足度ランキング2位に
Netflixのドラマ「地面師たち」でホストを演じ、注目を浴びた吉村界人が主演の映画『Welcome Back』が、単館系映画ながらも話題を集めている。本作は、吉村演じる新人王最有力候補のボクサーと、彼が憧れを抱く三河悠牙演じる青年との絆を描いたボクシングロードムービー。1月10日の初日以降、渋谷、新宿、川崎などで舞台あいさつが行われ、映画レビューサービス「Filmarks」(フィルマークス)の初日満足度ランキングでは単館映画ながら2位という結果を記録し、健闘を見せている。
川島直人監督は、「ボクシング映画を作りたい」という思いが、企画から7年の歳月を経て本作で実現したことを明かした。また、「ボクシング映画の撮影は役を演じるだけではなく、トレーニングと減量が伴い、通常の作品以上に準備が求められるので、キャストの皆さんには本当に感謝しています」と、準備段階から真摯にボクシングトレーニングに取り組んだキャスト陣の姿勢に深い感銘を受けたことを話し、「たくさんの方にこの物語が届くことを願っている」とコメントした。
主演の吉村は、撮影中に共演の遠藤雄弥から「いろいろな作品に出演する機会があるおれたち俳優にとっての一本と、7年間、この作品だけに懸けてきた監督にとっての一本ではその重みは全く違う」という言葉を受け、改めて作品に向き合う覚悟を決めたという。撮影後もボクシングを続けているという吉村、三河、宮田佳典の3人は今も一緒に同じジムに通っていることを明かし、舞台挨拶では三河がプロテストに合格したことを発表。会場からは大きな拍手が送られた。紅一点の優希美青も男性キャストに刺激を受け、「目の前で見ていて本当にかっこよかったので、実はボクシングジムの体験に行っちゃいました」と明かし、会場を沸かせた。
主人公のライバルを演じた宮田は、「7年分の監督の想いを受け取りました」と語り、「これまで何本かボクシングシーンのある作品に出演してきましたが、この作品ではメインのキャストを演じさせてもらえて、役作づくりを進める中で監督の想いを直接聞いて、自分の役に深く入り込むことができ、すごく特別な作品になりました。観客の皆さんにこの熱量が伝わることを願っています」と話した。
本作でボクシングの監修を務めながら、自身もトレーナー役で出演した松浦慎一郎は、「1年半、肉体と精神をキープするのは想像以上に過酷」と語り、撮影中も減量を維持しつつ演技に集中した俳優たちの努力を称賛。「この作品の完成に深く関われて光栄です」と感謝を伝えた。
三河は「映画は観客の皆さんに観てもらってこそ完成するものだと改めて感じました。今ここで観てくださっている観客の皆さんには本当に感謝していますし、少しでも多くの方に劇場で観ていただけたら嬉しいです」と語り、観客に向けて深々と頭を下げた。
この作品への思いを聞かれた吉村は「運命っていうと重たく聞こえるかもしれませんが、忘れられない作品になりました。僕らの世界には成功者と失敗者がいて、誰かから見ると成功しているし、もしかしたら失敗かもしれない。ボクシングの世界はその勝敗がはっきりしている。そういうスポーツに関われて光栄でした」と話した。また、川村監督は「映画はすごく楽しいし最高だなって思っていて、そういうことを劇場で経験できるように作っているところもあるので、まずはシンプルに楽しんでほしいです」と観客に語りかけた。
1年半にわたるボクシングのトレーニングという、体力的にも精神的にも過酷な挑戦を乗り越え、苦労と努力、そして情熱が注がれた本作。しかし、単館系作品という性質上、全国で上映が決まっている映画館は30館にも満たず、東京での上映はわずか1週間の上映で1館のみの1日1回となった。大手メジャー作品と比べると、映画館で観る機会は圧倒的に少なく、この厳しい状況では若手監督もなかなか育っていかないのは日本映画界が抱える課題ともいえるだろう。公開後、SNSやレビューサイトでは「ただのボクシング映画ではない」「傑作」「胸熱」「映画館で観るべき映画」といった観客からの感想が寄せられ、映画ファンの力によって新たな熱気が生まれつつある。「映画は観客に観てもらってこそ完成する」という三河監督の言葉通り、この作品に込められた俳優や監督の想いが報われることを願うばかりだ。(森田真帆)