劇場アニメ『ベルサイユのばら』白目のシーンは原作へのリスペクト
不朽の名作漫画の完全新作となる劇場アニメ『ベルサイユのばら』の吉村愛監督自身が「ベルサイユのばら」の熱烈なファンであり、常々「ベルサイユのばら」の作品にいつか参加したいと思い続けてきたという。「監督をできるなら死んでもいいくらいのことは言っていたかもしれない。ですから決まったときはうれしかったです」というも、これだけの巨大コンテンツだったがゆえに、プレッシャーも大きかったという。「やはり原作、そしてテレビアニメや宝塚のファンの方はものすごく多いですし、もちろん自分も好きな作品なので、ファンの気持ちも理解できる。ですから原作が表現しようとしていることを大事にしながらつくりました」と原作へのリスペクトを大切にしたことを明かした。
またビジュアルについても、キャラクターがショックを受けたときに白目になるなど、少女漫画から飛び出したような描写がちりばめられている。「原作を読んでいると、いろいろな作画の表現方法があります。だから今回も(アンドレの祖母で、オスカルの乳母である)マロン・グラッセ・モンブランがデフォルメされるところのギャグ表現や、ショックを受ける白目表現や、目が星になる表現なども入れました。昨今では白目表現はギャグのように扱われていますが、原作ではシリアスな表現として描かれています。時代的な表現の変化ではあるのですが、白目の表現も含め「ベルサイユのばら」だと思っているので、ここは忠実に取り入れたかったです。基本的には原作で表現されているものをそのまま映像にしたい、というのが前提にあったので、だからこそ、白目を外すという選択肢はありませんでした」と述懐。さらに「原作元の池田理代子プロダクションの皆さんには、私がやりたいことについて、いろいろとチェックをしていただいて、自分の意見にもご理解いただくことができたので、やりたいようにやらせていただきました」と満足げに語った。
また本作は、音楽が大きな役割を果たしている。「宝塚歌劇が大好きなのですが、宝塚版の影響もあり『ベルサイユのばら』は音楽との親和性が高いというイメージがあります。今回の『ベルサイユのばら』も音楽ものにしたい、ということで立ち上がった企画でした」と明かす吉村監督。キャスティングも、沢城みゆき、平野綾、豊永利行、加藤和樹ら実力派の声優陣が集まった。
「基本的には歌うことが前提である作品なので、歌える役者さんを希望しました。やはり難しいのは、芝居と歌のバランスだったと思います。オーディションで決める時は、池田プロダクション、プロデューサー、音響監督と、みんなでディスカッションをしながら決めさせていただいたのですが、そのオーディションの時はセリフを読むことと、歌っていただくことの両方を確認した上で決めさせていただきました。」と声優陣のキャスティング秘話を披露した。
池田と面会したときは非常に緊張したという。「最初にお会いした時はオタク全開で、緊張していました。完成した作品を先生は喜んでくださったと聞いているので、やってよかったなと思います」としみじみ。またエンディングのスタッフロールでは、物語が終わった後の、登場人物たちのその後の姿について説明するくだりがあったが、作業が終わる最後の最後で「これだけはどうしても入れてほしい」という池田からのリクエストが来たという。「やはりこの作品を見て、池田先生がこだわりたいと思ってくださったということだと思うので、それは本当にうれしかった」と感激した様子を見せる吉村監督。ちなみに詳細はここでは記せないが、“フェルゼン”のその後についてのエピソードを追加したといい、池田の想いに「感動しました」と振り返る吉村監督だった。(取材・文:壬生智裕)
劇場アニメ『ベルサイユのばら』は1月31日より全国公開