吉沢亮主演『国宝』中村鴈治郎が歌舞伎指導を担当 歌舞伎役者役で出演も

歌舞伎俳優の中村鴈治郎が、作家・吉田修一の同名小説を、吉沢亮主演、横浜流星の共演で映画化する『国宝』(6月6日公開)で歌舞伎指導を務めたことが明かされた。さらに、自らも歌舞伎役者・吾妻千五郎役として出演。2019年公開の『ねことじいちゃん』以来の映画出演も果たした。
原作小説は、任侠の一門に生まれながらも歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生を捧げる主人公・喜久雄の50年を描く壮大な一代記。3年にわたって歌舞伎の黒衣として楽屋に入った吉田の経験をもとに書かれた渾身の一作に、吉田原作の『悪人』(2010)、『怒り』(2016)を手掛けた李相日監督が挑む。
任侠出身の喜久雄(吉沢)は、15歳で父親を亡くし、天涯孤独となった。そんな喜久雄を引き取ったのは、喜久雄の天性の才能を見抜いた上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎(渡辺謙)。歌舞伎の世界を知った喜久雄は、半二郎の跡取り息子で名門の御曹司・俊介(横浜)と兄弟のように育てられ、ともに芸を磨くが、多くの出会いと別れが運命の歯車を狂わせてゆく。
そんな映画『国宝』の重要な局面で登場する歌舞伎の演目。本作の歌舞伎指導を、中村鴈治郎が担当。人間国宝・四代目坂田藤十郎を父に持ち、1967年歌舞伎座にて「紅梅曾我」の一萬丸で中村智太郎(ともたろう)を名乗り初舞台。「廓文章 吉田屋」の藤屋伊左衛門、「恋飛脚大和往来 封印切」の亀屋忠兵衛を当たり役とし、2015年に四代目中村鴈治郎を襲名、2019年には紫綬褒章を授与された。原作者の吉田が執筆の血肉とした3年間の黒衣経験も、中村鴈治郎の元で培われたものだ。
さらに、森七菜が演じる彰子の父親にして、歌舞伎役者の吾妻千五郎役で自らも出演。スキャンダルで騒がれた喜久雄に同情してアドバイスをするが、娘の彰子が喜久雄に恋心を抱いていることを知り、娘を利用して成り上がろうとする喜久雄に厳しくあたる、名門・富士見屋の当主を演じる。
キャストにはそのほか、高畑充希、寺島しのぶ、田中泯、、見上愛、永瀬正敏、宮澤エマ、黒川想矢、越山敬達、三浦貴大、嶋田久作らが名を連ねる。中村鴈治郎のコメントは以下の通り。(編集部・入倉功一)
中村鴈治郎

普段は優しい李監督ですが、撮影現場ではより良い作品を目指す方なので、とても厳しかったです。映画は舞台と違い、同じシーンを何度も撮るのでクタクタになると思います。ラッシュ版で吉沢亮さんを始め、彼らの歌舞伎のシーンを観た時に、その時の現場の状況を思い出し、とても感動しました。
この映画を通して、歌舞伎を知らない方には、歌舞伎ってこういうものなのかと感じてほしいですし、歌舞伎を観たことのある方には違和感なく、作り事でもなく、自然に観ていただければ一番いいな、と思っています。そして、この作品をご覧になった方々が歌舞伎に興味を持っていただければ、こんなに嬉しいことはないです。
吉沢亮さん、横浜流星さん、黒川想矢くん、越山敬達くん、田中泯さん、渡辺謙さんには本当によくやっていただいたと思っています。今は観客の皆さんに受け入れてほしいなと切に願っています。