『侍タイムスリッパー』日本アカデミー賞での快挙から1週間 安田監督が決意新たに「良質な作品をつくっていきたい」

映画『侍タイムスリッパー』で第48回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した安田淳一監督が21日、帝国ホテル東京で行われた「第22回シネマ夢倶楽部」表彰式に出席。日本ファッション協会から賞を授与されたことに「どこかで誰かが見てくれる」としみじみ語った。
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一般財団法人日本ファッション協会では、顕彰事業として「日本クリエイション大賞」および「シネマ夢倶楽部表彰」を毎年選考しており、表彰式でその栄誉をたたえてきた。「シネマ夢倶楽部」では、国内で公開された新作映画からベストシネマの上位3作品を選定する「ベストシネマ賞」、映画を通して生活文化の発展などに貢献する活動に贈る「シネマ夢倶楽部賞」、新しい時代の映画や才能、意欲的な活躍をした監督、俳優に贈る「推薦委員特別賞」を選考している。
このたび「推薦委員特別賞」に選出されたのは、『侍タイムスリッパー』の安田監督と主演の山口馬木也。さらに『つゆのあとさき』の主演を務めた高橋ユキノも選出された。
授賞式に参加した安田監督は「先日(14日)の日本アカデミー賞が落ちついて。今朝『今日表彰式があるので行ってくるよ』と言ったら、家の人が今日はどこですかと聞くので、日本ファッション協会ですと答えたら『いつも同じ服を着ているのにね』と爆笑されました」とジョーク交じりに切り出すと、「そういうアパレル業界の表彰ではなく、クリエイティブな活動を表彰されている企業さまを表彰するということで、なるほどなと思いました。これは失礼な話なんですが、日本ファッション協会さまをこのたびはじめて知ったわけでございます。でも、それで思うのは、大変お世話になった(日本一の斬られ役と呼ばれ、同作の着想のもととなった)福本清三さんがいつもおっしゃっていた通り、一生懸命頑張っていれば、どこかで誰かが見ていてくれる。今回は日本ファッション協会のシネマ夢倶楽部の方が見てくれていたんだなと思い、とても感動しております」と語った。
この日は主演の山口も出席予定だったが、体調不良のため欠席。そこで、代わりに安田監督がスピーチを行うことに。「山口馬木也さんは非常に謙虚な方。それでいて繊細なところもあって、僕は山口馬木也さんという俳優と映画を撮っているんじゃなくて、江戸時代からやってきたお侍さんと映画を撮っているんじゃないかと錯覚してしまうくらいすばらしい俳優さんでした。来年もNHK大河ドラマ(『豊臣兄弟!』)にかなりいい役で出演されるということで、さらに飛躍されると思います。きっと将来は僕の映画には出てくれへんのやないかなと思っているんですが、ぜひとも山口さんの応援をよろしくお願いします」と呼びかけた。

さらに共催として「大切な人に観てもらいたい映画」を選出する東京新聞映画賞の授賞式も行われ、こちらも『侍タイムスリッパー』が受賞。あらためてステージに登壇した安田監督は「まずはこのような賞に選んでいただいてありがとうございます。よく言われることですが、情熱と熱意で完成した作品が皆さんに受け入れられたということをおっしゃっていただくんですが、インディーズ映画をつくっている人で、情熱も熱意もない人を見たことがない。それだけでなく、自分の失敗を反省して、そして成功例から学び、論理的思考をもって戦略を立てて行うということが、中小企業というか、われわれがやらなければならないこと。僕がひとりで、器用貧乏でひとりで十何役もやっていて、未来映画社というのは、零細企業もいいところですが、そういう戦略的思考、それから失敗を経て成功者から何かを得るという形でやってきたことが日本アカデミー賞をはじめ、賞をいただくことになり、スタッフ一同喜んでおります」とあいさつ。
さらに「もちろん東映京都撮影所の皆さん、単館、シネコンなど映画館にかかわる皆さん、映画人の心意気と矜持に支えられ、幸運に恵まれまくって、今日のこの日が来たと思っています。これにおごることなく、先ほどクロックワークスの社長さんが(『ソウルの春』のスピーチで)お話していた通り、映画館を出たあと、これからも明日も頑張ろうと思うような、良質な作品をつくっていきたいと思います」とあらためて決意を語った。(取材・文:壬生智裕)
「第22回シネマ夢倶楽部」受賞作品一覧

ベストシネマ賞<推薦委員が選ぶ、心に沁みる 2024年ベスト作品>
第1位:『ソウルの春』 (配給:クロックワークス)
第2位:『BISHU ~世界でいちばん優しい服~』 (配給:イオンエンターテイメント)
第3位:『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』(配給:ビターズ・エンド ユニバーサル映画)
シネマ夢倶楽部賞<映画を通して、文化や生活、社会の発展に貢献したプロジェクト、企業などに贈る>
・株式会社アウラ
推薦委員特別賞:<新時代の映画や才能、意欲的な活躍に贈る>
・監督 安田淳一(監督作品:『侍タイムスリッパー』)
・俳優 山口馬木也(出演作品:『侍タイムスリッパー』)
・俳優 高橋ユキノ(出演作品:『つゆのあとさき』)
東京新聞映画賞:『侍タイムスリッパー』(配給:ギャガ、未来映画社)監督:安田淳一