ADVERTISEMENT

「べらぼう」俄祭りに見る吉原の光と影 100人を超える大規模撮影

第12回より俄祭りの様子。中央は大文字屋(伊藤淳史)
第12回より俄祭りの様子。中央は大文字屋(伊藤淳史) - (C)NHK

 横浜流星主演の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(毎週日曜NHK総合よる8時~ほかで放送中)の23日放送・第12回では、吉原の一大イベント・俄祭り(にわかまつり)が描かれた。前11回に続いて同回の演出を務めた小谷高義が、100人以上の出演者が参加したという大規模な撮影の裏側、そして熱狂の裏に隠された「忘れてはいけない」吉原の闇について語った。

【画像】壮観!一か月行われる吉原の一大イベント「俄祭り」の様子

 第12回「俄(にわか)なる『明月余情』」では、前回に続いて吉原に客を呼ぶためのプロモーションの一環として俄祭りに向けて蔦重が奮闘。そして、祭りの様子を収めた墨摺り冊子「明月余情」を完成させるまでが描かれた。小谷がまず目を留めたのは、蔦重が「明月余情」を3冊に分けて段階的に出したこと。そのことでまるで「実況中継」しているかのような臨場感があるという。

ADVERTISEMENT

 「『明月余情』」は墨摺りの絵本で3冊出てるんですけど、蔦重が凄いなと思ったのは、それを一気には出していないところ。おそらく祭りの熱気に合わせて徐々に出したんじゃないかと。俄祭りというのは、8月から9月にかけて行われた30日間続く祭りなんです。蔦重のライバルである西村屋も錦絵を出していますが、こちらは記念写真のようにポーズがとられた絵。一方、「明月余情」は、みな記念写真というよりは活写している感じ。言ってみればテレビの実況中継のように、祭りの面白さを生き生きと伝えようとしたんじゃないかと思います」

蔦重が出した俄祭りの墨摺り冊子「明月余情」

 祭りについてはこの「明月余情」を主な資料とし、芸能指導の友吉鶴心や所作指導の花柳寿楽らと共にいちから音曲、舞を考案することとなった。

 「俄って獅子舞のように練り歩いたり、可動式のやぐらの上で歌舞伎の真似事をしたり、そんな出し物が相当な数行われていたようなんです。それを吉原の目抜き通りで行った。ドラマで描いた雀踊りという一番大きな催しは、踊る人々として大文字屋(伊藤淳史)のチームと、対抗する若木屋(本宮泰風)のチームがいて、プロの舞踊家、鳴り物の方々が合わせて30名以上。それを沿道や、通りを挟んだ引手茶屋から見ている人々も含めると優に100名を超える規模での収録でした。クライマックスでは忘八のキャストの方々も入り乱れて全員に踊ってもらったのですが、今回は合戦シーンがない代わりに芸能の戦いとして大きなスケールのものを作るんだという話をしていました」

ADVERTISEMENT

 最終的にカオス状態となるのも狙いで、綿密な計算があったと小谷は語る。

 「脚本の森下(佳子)さんの狙いとしては、大文字屋チームが盛り上げたら次に若木屋チームが来て、つばぜり合いを繰り広げて混然一体にしてほしいということで。それぞれ異なる踊りで音楽も異なるので、不協和音にならないよう2曲重なってもおかしくないものをくださいと友吉さんにお願いしました。一方、花柳さんにも大文字屋側はアクティブに、若木屋側は艶っぽさを前面に出すといったふうに変化をつけつつ、どちらも負けないぐらいのインパクトがある振付にしてほしいと。最後にカオスになる時はどう動くのかといったことも考えていただくなど、要素の多い準備を延々とやっていたので役者さんたちも“覚えられない”と悲鳴を上げられていて。大変だったと思いますが、本当の祭りを作るような熱気がそこにはありました」

舞で火花を散らす若木屋(本宮泰風)と大文字屋(伊藤淳史)

 華やかな俄祭りだが、出し物には女郎たちが一切登場しないのが吉原のシビアな現実を物語っていると小谷は見る。

ADVERTISEMENT

 「大金をかけて30日もの祭りを行うわけですが、それはすべて“客を呼ぶため”で。吉原は大きな賭けをしてリターンを得ようとしたはずです。そして、女郎は一切出し物に登場しないんですよね。彼女たちは、祭りの期間も客の相手をしなければいけない。ドラマでは、出し物を見ている女郎を描く際には必ず客と一緒にいてもらいました。また、俄祭りは夜見世という夜の営業が始まるまでの時間帯に行われ、夜はちゃんと営業していたそうです。もちろん映像としては俄祭りを面白く見せたいし、楽しんでいただきたいというのはありますが、その裏側も描くことは必須でした」

女郎たちは見世物には参加せず……

 加えて、12回は「蔦重と平沢常富(尾美としのり)のタッグの始まり」だったとも。

 「俄祭りの裏で蔦重が作家としての平沢をどう捕まえ、惚れこんでいくのかという話だなと思ったんです。前回に登場した富本豊前太夫(寛一郎)も平沢も、蔦重と終生付き合いがある人。これから蔦重がどんどんプロデューサーとしての側面を見せていくことになりますが、現時点では彼らとどういうふうに接するのがいいかということは横浜流星さんとかなりお話しさせていただきました」

 俄祭りについてはNHKのドキュメンタリーバラエティ番組「100カメ」でも密着したといい、3月28日放送回(よる10時~)で舞台裏が明かされる。(取材・文:編集部 石井百合子)

関連作品を配信サイトで視聴

※VODサービスへのリンクにはアフィリエイトタグが含まれており、リンク先での会員登録や購入などでの収益化を行う場合があります。

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
ADVERTISEMENT