『白雪姫』新曲のメッセージは「若い人々にとって重要」 レイチェル・ゼグラー来日インタビュー

ディズニー最新作『白雪姫』で主演を務めた女優のレイチェル・ゼグラーが来日時にインタビューに応じ、映画『グレイテスト・ショーマン』のソングライターコンビ、パセク&ポールが書き下ろした新曲の魅力や撮影秘話を明かした。
1937年に公開された『白雪姫』は、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオが製作した長編映画第1作で、世界初のカラー長編アニメーション。ウォルト・ディズニーが自身の哲学と美学を注ぎ込んだスタジオの原点というべき特別な作品が、「ハイ・ホー」「口笛ふいて働こう」といった愉快な人気楽曲はそのままに、EGOTを達成している(エミー賞、グラミー賞、アカデミー賞、トニー賞の全てを受賞)パセク&ポールによるキャッチーな新曲の数々を加えたハイクオリティーなミュージカル映画として満を持して実写化された。
白雪姫役のレイチェルは、パセク&ポールとのコラボレーションについて「このクラシックな物語の、彼らならではの解釈を聞けるのはすごく光栄だったし、それを歌えるのはさらに光栄。彼らは素晴らしく協力的で、歌う人の声に合わせた楽曲を書いてくれるの」と振り返る。レイチェルが「もともと完璧だった」と語るメイン楽曲「夢に見る ~Waiting On A Wish~」についても、パセク&ポールはレイチェルの広い音域に合わせてさらに発展させ、ディズニー屈指の“I Want”ソング(ディズニープリンセスが胸に秘めた望みや願いを歌う曲)に仕上げた。
そんな「夢に見る ~Waiting On A Wish~」でレイチェルが特に気に入っているのが、終盤にひそやかに歌う「I can always dream, but then I wake up it’s me again(いつも夢を見ることはできるけど、目が覚めたらまたただの自分)」という部分だ。「若い人々、特に若い女性にとって、なんて普遍的な経験を表しているんだろうと思った。若いと、これが最高の自分なんだろうか? より良くなれたり、違う人になれたりするんだろうか? って考えてしまうと思う。だからこそ、それがディズニー映画の中で表現されているのを見られるのはすごくいい。この映画を観て、“より良くなりたい、別人になりたいという望みを持つのは自分だけじゃないんだ”と感じられるのは、若い人々にとってとても重要だと思う。そして最終的に白雪姫は、“彼女がなりたいと思っていた人”はずっと彼女の中にいた、と知ることになるの」

レイチェルはスティーヴン・スピルバーグ監督のミュージカル映画『ウエスト・サイド・ストーリー』でマリア役を務め、ブロードウェイのレジェンドであるスティーヴン・ソンドハイム(2021年死去)と仕事をすることもできた。「彼はものすごく深いことを言ったの。ミュージカルでは感情がものすごく大きくなり、もう話せなくなったら歌うんだ、と。最高のミュージカルは、この要素を組み込んでいると思う。わたしは『白雪姫』が間違いなくそうしていると思うし、特に『夢に見る ~Waiting On A Wish~』は痛みと切望から生まれていて、ジョナサン(白雪姫の運命の人)の曲も、女王の曲も、すべて大きな感情から生まれている。もう歌うしかない! というね」
ずば抜けた歌唱力と表現力を持つレイチェルにとって、歌で感情を伝えることは「常に自然なこと」だったという。「もちろんそれは“世界で最も自然なこと”ではないのはわかるけど。現実世界だと、普通は感じていることを歌い出したりはしないから(笑)。だけど、もしそうしたら、世界はより良い場所になるんじゃないかなと思うけどね」と笑った。
7人のこびとの家を歌い踊りながら掃除する「口笛ふいて働こう」のミュージカルシーンは徹底したトレーニングと準備が必要で、リハーサルには何か月も費やされた。「振付師のマンディ・ムーアが素晴らしいダンサーを雇い、7人のこびと用の人形遣いもいた。リハーサルでは毎日本物の人間たちとダンスをしてすごく仲良くなったけれど、実際の撮影では、部屋にわたし一人で、歌って踊らないといけなかったの。CGIのキャラクターたちはポストプロダクションで追加されるわけだから。だから、その舞台裏映像はかなり面白いことになっているよ(笑)。わたしがあの家で、完全に一人きりで『口笛ふいて働こう』をやっているっていう(笑)。でもみんなの協力で、素晴らしいシーンになったと思う」
レイチェル自身、白雪姫のように歌いながら仕事をするといい、「ずっとハミングしている。ハミングするのが好き。口笛もよく吹きがちかも」と明かす。「でも、わたしの犬はわたしが歌うのが好きじゃないの(笑)。でも、わたしの息子としていつも聴いてくれているわ(笑)」

白雪姫のまま母で、美と権力に執着している恐ろしい女王を演じたのは、『ワンダーウーマン』のガル・ガドットだ。レイチェルの撮影初日はガルとのシーンだった。「完全なコスチューム姿でネイルもクレイジーで、アイシャドウや王冠も女王そのものだった! 全ての骨を自在に動かしていて、本当に素敵。ダイニングルームで女王が食事をしているシーンだったんだけど、彼女がすべての宝石やドレスをまとい、カニの脚をバキバキ砕いて開けていて(笑)、もともとすごく背が高く存在感のある方だというのもあり、すごく強烈で素晴らしかった。この映画での彼女はすごく愉快よ!」とガルのハマりっぷりをたたえた。
「ミュージカル映画が大好き!」だというレイチェルは、昨今のミュージカル映画の復権を心から歓迎している。「『ウィキッド ふたりの魔女』の成功も本当にうれしい! なぜなら、ミュージカルを観たいという人々の本物の愛と欲求があるということだと思うから。スクリーンで、そして願わくば舞台でも。わたしは『雨に唄えば』やオリジナル版の『ウエスト・サイド・ストーリー』といったミュージカル映画を愛しながら育って、それが今の仕事につながった。そして今現在、こんなに多くの人々がミュージカルを愛していることがうれしい」
「わたしもその時代の一部になれたことがすごくうれしいし、ミュージカルの復権というこの傾向がこれからも続いてほしい。ミュージカルではたくさんの重要な物語を語ることができると思うし、音楽はユニバーサルな言語で皆の心に届くものだから。そして、ここ日本に来て『夢に見る ~Waiting On A Wish~』を披露して、この楽曲が人々の心に触れるのを見られたのは本当に素晴らしかった。そして、プレミアム吹替版ではサクラ(吉柳咲良)のような才能ある人が、音楽でキャラクターに新たな命を吹き込んでいる。本当に素晴らしい贈り物になった」と『白雪姫』への参加を喜んでいた。(編集部・市川遥)
映画『白雪姫』は公開中