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もう一度、バートン監督と
仕事がしたかっただけなんだ |
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なぜ『スリーピー・ホロウ』への出演を承諾したのですか? |
D |
ジョニー・デップ(以下D) 監督がティム(・バートン)だったからね。僕にとっ
ては、それ以外のことはどうでもよくて、二つ返事でOKさ。大好きなんだよ。彼の
ことが。 |
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あのストーリーは知っていましたか? |
D |
もちろん。僕の家でも毎年、ハロウィーンの恒例行事だったしね。
イカボット・ クレーン役のビング・クロスビーのナレーションが懐かしいよ。イカボットは好きな
キャラクターだし、その役を演じられるなんて、役者冥利に尽きるよ。
まあ、何はと もあれ、もう一度、バートン監督と仕事がしたかっただけなんだけどね。 |
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子供心に、やっぱり怖かったですか? |
D |
アニメの方は原作ほど怖くなかったね。原作は、学校で読んだ記憶がある。授業
で読んだんだけど、低学年の子供には、おどろおどろしい感じがしたんだろうな。 |
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バートン監督との仕事はどうでした? |
D |
悪魔払いの儀式を受けてるみたいな感じだったよ。 |
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信じられないほど豪華な出演者たちだ |
─ |
役作りは? |
D |
基本的にはワシントン・アーヴィングの
原作に描かれたイカボット・クレーンのイメージで。だけど僕は、改めて読み返し
てこう思ったんだ。「よし! 特殊メーキャップのアーティストを呼んで、とびきり
高い鼻とデカい耳。それに、つけ指もしよう」って。ここだけの話だけどさ、それを
見たパラマウントのお偉方連中は、はっきり言って、引いてたね。「ジョニー、あま
り感心しないな」とか、何とかと言ってね。 |
─ |
セリフが英国訛りですね。 |
D |
その方が現実味があるからさ。最初は、単純な作業だったんだ。ただ発音を正確
に覚えて、別人になりすますだけ。でも、僕が心から愛し尊敬する、親友のロディ・
マクドウェルが、インスピレーションを与えてくれたんだ。ロディ・マクドウェルと
アンジェラ・ランズベリーの組み合わせなら、どんな子供ができるかな?って考えた
よ。どんな子供だと思う?
たぶん、イカボットみたいな男の子だね。なぜかはわか らないけど、脚本を読むと、いつもそんなイメージやアイディアが浮かんでくるんだ
。「ロディはあの役。アンジェラはあれ。バジル・ラスボーンはこれだ」って。アン
ジェラも素晴らしい女優だと思う。 |
─ |
共演者の顔ぶれはどうですか? |
D |
聞いてビックリだよ。撮影初日、控え室
へ入っていったら、ずっと前から憧れていた“The Singing Detective”(BBCの
テレビ・シリーズ)のマイケル・ガンボンがいるじゃないか! あの天才マイケル様
が、だぜ。その他には、ミランダ・リチャードソン、『ウィズネルと僕』の2人組の
片割れのリチャード・グリフィス、イアン・マクダーモット、ジェフリー・ジョーン
ズ、マイケル・ゴフ。
信じられないほど豪華な出演者リストだ。僕は、この機会を得 るために、こういう滅多にないチャンスをつかむために、製作サイドのつまらない談
義も我慢して聞いていたというわけさ。 |
─ |
僕が好きな作品には一定の法則がある |
─ |
クリスティーナ・リッチとの共演はどうでしたか? |
D |
彼女はすごくいい子だ。初めて会ったのは、確か『恋する人魚たち』のセットで
、その頃、彼女はまだ、8歳か9歳だったはず。とても優しくて、面
白くて、頭のい い子でね。僕は彼女の成長を何年も見守ってきたんだ。そんな彼女と、テーブルを挟
んで恋人のように見つめ合うなんて、はっきり言って、すごく妙な感じがしたよ。 |
─ |
様々なジャンルの映画に出演していますが、それはあなたの信条なのでしょうか? |
D |
たまたま結果
的に、そうなっただけのことさ。『ラスベガスをやっつけろ』、ロ
マン・ポランスキー監督の『ナインス・ゲート』、『スリーピー・ホロウ』の後で『
ノイズ』を撮ったんだけど、どの作品も、ほとんど間隔をあけず、立て続けに撮影に
入ってるんだ。 |
─ |
ファンタジーには、ストレートなドラマには語り尽くせない何かがあると思いま
すか? |
D |
僕が好きな作品には一定の法則がある。ロマンの原点はフィルムノワールで、バ
ートン監督のルーツは、ジャンルで言えば、SFっぽいホラーだ。そういう作品の中
で役を演じる場合、他のジャンルの作品とは違って、演技に幅を持たせることができ
るんだ。
イカボット・クレーンを例に挙げてみようか。彼はアメリカ人なら誰もが知
ってるキャラクターだ。だから演じる側の責任は重大だし、事前に途方もない約束を
させられる。「OK、お馴染みの彼に、僕が変身してご覧に入れますよ。もっと女性
的な側面からアプローチして役作りをするつもりですから。原作のイメージとは、ま
た違ったイカボット・クレーンも、きっと観客にすんなり受け入れて貰えるでしょう
」ってね。 |
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フランスでは、誘拐だの、殺人だの
とは無関係に暮らしている |
─ |
まだパリに住んでいるのですか? |
D |
うん、時々ね。 |
─ |
ヴァイパー・ルームの経営も、以前と同じようにあなたが指揮をとっているので
すか? |
D |
うん、ロスにいるときは。と言うか、アメリカ国内にいる時はね。 |
─ |
あの店、すっかりロスの観光名所になりましたね。 |
D |
別に、そうは思わないけど。 |
─ |
“ロスの見どころ”リストに必ず載っていますよ。 |
D |
それなら僕の自宅もリストに入ってたぜ。 |
─ |
最近は、どのくらいのペースでアメリカに帰国していますか? |
D |
ごく、たまにだね。この2年間は、フランスや『スリーピー・ホロウ』の撮影で
イギリスにいたし。 |
─ |
そういう生活はどうですか? |
D |
すごく快適さ。まず言っておくと、テレビを見なくなったね。フランスでは、誘
拐だの、殺人だの、自然災害だのとは無関係に暮らしているんだ。もちろん、フラン
スにもそういう事件や事故はあるけど、スケールは全然小さいんだ。この前、ロスに
戻った時、朝8時のニュースで、今まで見たこともないほど恐ろしい映像を見てしま
って……ビックリしたの何のって、ものすごく恐かったよ。それから、ニューヨーク
で妹と食事をしながら、深夜のテレビショウを見ていたら、これまた
“史上最悪の 追跡事故”っていう映像が流されて、あまりのムゴさに、アゴが床につくぐらいのデ
カ口をアングリさ。 |
─ |
アメリカで子育てしなくて良かったと思いますか? |
D |
ああ。 |
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『ポンヌフの恋人』はスゴく良かった |
─ |
フランスでプロジェクトを進めようと考えたことはありますか? |
D |
ヨーロッパの監督に2人ほど声をかけたことがある。あと、フランス人のプロデ
ューサーやフィルムメイカーにも、様々なプロジェクトの話を持ちかけたよ。でも、
僕の中に、フランスで映画を作るという確信みたいなものが、まだ生まれてこないん
だ。いつかはやってみたいと思うけど。 |
─ |
どんなフランス映画が好きなんですか? |
D |
フランス映画で? そうだなぁ……
レオス・カラックス監督の『ポンヌフの恋 人』はスゴく良かったと思うよ。ずいぶん前の作品なのに、こっちで公開されたのは
ごく最近なんだ。 |
─ |
ヴァネッサ(・パラディ)のアルバムの中でオススメなのは? |
D |
全部だね。アメリカでウケるかどうかはわかんないけど、本当に聴きごたえのあ
るアルバムが揃ってる。それに、もうすぐ新譜を出すみたいだよ。僕も何曲かデモを
聴いたけど、これがまた、すごくイイんだ。 |
─ |
歌詞は英語? |
D |
フランス語と両方だ。 |
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彼女は、家であなたのために歌ってくれるんですか? |
D |
いや。でも、子供には歌ってるよ。 |
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子供を持つ決心をした理由は? |
D |
さあね。僕は今まで一度だって“決心”というものをしたことがないんだ。僕ら
が「そろそろ欲しいな」と言う前に、子供の方 が待ちきれなくなって、先に来ちゃったんじゃないかな? きっと、そうだよ。こ
うなるべくしてなったのさ。 |
─ |
“そろそろ年貢を納めて、大人になれ”ということだったのかも。 |
D |
大人になったかどうかは、定かじゃない
けどね。 |
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入籍は? |
D |
してないよ。 |
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予定は? ヴァネッサ次第? |
D |
子供次第だ。寝場所をどうするか、その決定権は子供にあるからね。 |
─ |
れにしても、どうしたら、そんな風に、いつまでも若々しくいられるんでしょ
うね。 |
D |
品行方正な生活をすることだと思うな。 |
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Marion
Ross&Steven Hardy
訳:大幸昌子
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FLiX4月号(2/26発売)に、さらに詳細なインタビュー掲載中 |