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ジョン・キューザックインタビュー

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ジョン・キューザック
JOHN CUSACK

 ジョン・キューザックはオフビートな作品で個性を発揮してきた映画スターである。ブラック・コメディの『ポイント・ブランク』で共同プロデューサー、脚本家としても活躍した後、また再び『ハイ・フィデリティ』で製作と主演を兼ねている。  

 彼のキャリアはハリウッドのメイン・ストリームとは離れたところで築かれてきた。『セイ・エニシング』でのキックボクシングのマニアから『グリフターズ 詐欺師たち』での詐欺師、ウディ・アレンの『ブロードウェイと銃弾』での劇作家までと彼の役柄は幅広い。女性は彼をセクシーだと言い、男性は彼をクールだと言う。批評家にも絶賛されている。なのにオスカーには縁がないのだ。

 シカゴに生まれたジョンは彼の姉(ジョーン・キューザック)や家族が今も住んでいるウィンディ・シティの近くに住んでいる。マスコミはジョンの恋の噂、最近ではネーブ・キャンベルとのゴシップを書き立てるが彼自身はプライヴェートなことは決して話さない。

 キューザックが共同プロデュース、共同脚本を担当した『ハイ・フィデリティ』では30代の恋多きレコード店のオーナー兼コレクターであるロブ・ゴードン役を演じている。

 この映画では観客に直に次のような独白で自分の気持ちを伝えていく。「(彼女を)ものにして、キスして、そしてあの性的ノイローゼの時代に戻るんだ」。ロブはどこかに自分にふさわしい女性がいると信じている男で、映画ではその探索がコミカルに描かれている。

 


ジーン・ウルフ
Jeanne Wolf
訳 松尾敦子
Translated by Atsuko Matsuo


男は自分を夢中にさせてくれる女性が すぐそばにいるはずだっていう ファンタジーを信じてるんだ
-

ニック・ホーンビィの原作と映画に関して、男性はどんな点に共感していると思いますか?

C

 ジョン・キューザック(以下C) 30代の男たちにはかなり現実的だって点だと思うよ。それくらいの男は自分を夢中にさせてくれる女性が、すぐそばにいるはずだっていうファンタジーを信じてるんだ。初めてデートした時や初めて性体験した時の熱い気持ちが忘れられないんだよ。だから男はそんな幻のドラゴンを追い続ける。 過去の感情を取り戻そうとしてね。そして女性はそういうファンタジーから抜け出せる男を待っているんだ。ある意味、男はそういう関係があり得るという妄想にとらわれているんだ。普遍的テーマだからこそ、この原作はベストセラーになったんだと思うよ。

映画もほんとに面白いんだ。音楽もすばらしいし。僕はこれ以上のコメディはないと思ってるよ。

- この映画と原作は通 常のハリウッド製おとぎ話よりもかなりリアルな話ですね。
C

おとぎ話が悪いとは全く思わないよ。映画がいつも真実を伝えるべきだとも思わ ない。ソウルメイトに出会ったり、全てがすてきでかっこいいおとぎ話のようなロマンスが好きでも、現実はそう甘くはない。この映画はかなり率直なメッセージが含まれているよね。男と女の関係の中に実際はどんなかけひきがあるのかについてのね。それでもまだはじめて女性とつきあった、最初の5週間のファンタジーを追い続けることもできるし、そういう感情の喪失感を味わうこともできる。

  僕はそれほど女性に夢中にはならないけど どういう関係を築いていくかには 夢中になるってことだけだよ
- 最近のあなたの恋愛生活はどうですか?
C

そんなことは話さないよ。僕が言えるのは、僕はそれほど女性に夢中にはならないけど、どういう関係を築いていくかには夢中になるってことだけだよ。

- これを見る人がジョン・キューザック自身の内面 を見てる気になるんじゃないかと心配になりませんか?
C

いや、これは映画だからね。

- でも映画でのあなたが、ほんとのあなたとは違うキャラクターだと理解できない人たちもいますよね。
C

そうじゃないと、いい演技とは言えないだろ? 僕はあのキャラクターとは違うけどね。

  人間はいつまでもつまずきながら 生きていくんじゃないかな?
- 実際あなたは現実にうまくいかなくなった関係を持ったことがありましたよね。どんな気持ちでしたか?
C 他の人と同じだよ。不安で悲しい気持ちさ。誰にでも気持ちのアップダウンはあるし、ワイルドな気分になることもある。人間はいつまでもつまずきながら生きていくんじゃないかな?
- カルトなヒットとなった原作はイギリスが舞台でした。それをシカゴに変えましたよね。ニック・ホーンビィのファンがそれを不満に思うとは考えませんでしたか?
C

イギリスを舞台にしないことについては、少なくともホーンビィの了解は欲しかったんだ。彼に電話をすると「いいよ、アメリカが舞台ね。本に書いてあるのは地理的な問題以上のことだからね」ということだった。もちろん、僕も賛成さ。僕がいちばん興味をひかれたのは、この本が男性心理のもっとも奥深いところをついているという点だったからね。

- 映画で行った、自分の感情を観客にまっすぐ伝えるという演出にリスクを感じ ましたか?
C

あれにはほんとにナーバスになった。「いやだ。そんなことしたくない」って言ったんだけどね。僕はやりすぎることが心配だったんだ。

でもカメラに告白するという行為は、ロブが自分が何をしていると理解しているのか、それにどう感じているのかを 知ることだと悟った。ロブは神経質だが、厳しい現実を見つめているんだ。

  君も映画に出れば いつも夢見てた人と会うことができるよ
- あなたが演じたのは、コアなレコード・コレクターですよね。あなた自身はどうですか?
C コレクターとは言えないね。脚本を手がけたパートナーの方に似てるかな。彼は1万枚ほど持ってるんだよ、CDは数に入れないでね。僕は集めることにはあまり興味がないんだけど、そういう人たちをたくさん知ってるよ。
- サウンドトラックは、音楽の歴史のようになっていますよね。
C

気に入ってるよ。かなり絞ったコレクションだからね。ベルベット・アンダーグラウンドやボブ・ディランから最近のバンド、ベータ・バンドやスモッグ、よく知らないけど良かったな。それにオールディーズも入ってる。エルビス・コステロやスティービー・ワンダーみたいなね。映画に使った曲が全部入っているわけじゃないけど。

- ブルース・スプリングスティーンが映画にカメオ出演してますが、あなたが交渉したのですか?
C

ブルースに会えたのはラッキーだった。君も映画に出れば、いつも夢見てた人と会うことができるよ。僕が彼に連絡をとったんだ。映画の中で僕が演じるキャラクターに音楽界のヒーローに会わせて、会話をさせたかったんだ。

そうすると、みんなが「ブルース・スプリングスティーンがいい。でもやらないよな」って言うんだ。で、なんとか僕が彼に電話して言ったんだ。

「今から本を送る。脚本を送る。僕の頭がおかしいと思ったなら、すぐにノーと言ってくれ」って。そうしたら電話がきて、やってくれることになったんだ。

Q 映画の最初から最後までのプロセスの一部であることが僕の好きなやり方なんだ
- お姉さんのジョーンと共演したのは楽しかったですか?
C

僕の偏見だけど、彼女は最高の女優だって思うんだ。コメディをやるなら、ジョーンはそう意図してなくてもおかしな女だからね。彼女はうちの家族の中でいちばん才能があるんだよ。

- ティム・ロビンスが悪役をやって、あなたが彼をやっつける。これは誰のアイディアですか?
C 原作からさ。ティムをキャスティングしたのが、天才的だったよね。ティムは観客に嫌われるような役、観客の皮膚感覚に訴えるような役を演るのは上手いからね。
- あなたと一緒に映画を作った人は、みんな楽しかったといいますね。
C 楽しいと思うよ。資金面 は厳しいけど、誰もがボックス・オフィスの1位を狙ってて、それも楽しいんだ。僕はただそれを思い出して、セットの外でもテンションを失わずにしてるだけさ。たくさんの映画製作者がそうしてると思うよ
- 最近のあなたは主演する作品で共同プロデュースしたり、脚本を書いたりしてますよね。将来にどんな展望を抱いてますか?
C そうだね、たぶん一番いい方法は自分で映画を作ることなんだ。だって、そうすればいい役をもらえるからね。僕はただ映画を作っているだけで、時にはそれが他人のためにもなる。映画の最初から最後までのプロセスの一部であることが僕の好きなやり方なんだ。

ハイ・フィデリティ
High Fidelity

2000年
アメリカ映画
監督=スティーヴン・フリアーズ
出演=ジャック・ブラック、リサ・ボネット、ジョエル・カーター、ジョーン・キューザック

●あまりぱっとしないレコード店を経営しているロブ(ジョン・キューザック)は、自他ともに認める音楽マニアで、ポップ・ミュージックに関して百科事典並の知識を持っている。彼の長年のガールフレンド(イベン・ジェジル)は、音楽シーンにどっぷりとつかっているロブに愛想をつかし、彼の元を去ってしまう。失敗に終わってしまったロマンスを経験したボブは、大人の男に成長していく。

配給=ブエナビスタ

2001年3月 恵比寿ガーデンシネマにて公開

(C)TOUCHSTONE PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED

http://www.movies.co.jp/

 

 

 

 

 

 

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