ポルノって言葉は、もはや死語じゃないの?って思ってた。かなり性が規制さ
れてた昔、いまのオジサンたちが若かりし日に夢想した卑猥な行為ってイメー
ジ。感情なんて抜きでエッチしまくる世界。でも、考えてみれば、街で声をかけ
られて始まる援助交際や、iモードで見ず知らずの相手と出会う関係が当たり前
になったいまって、ある意味でポルノだらけの世の中かもしれない。面
倒くさい コミュニケーション抜きの都合のいい相手を見つけ、SEXだけを繰り返す。で
も、やっぱりそれって虚しいよ。だって、心と身体って切り離せないから。この
映画は、お互いをさらけ出す関係に臆病な、男と女の末路を浮き彫りにしてくれ
る。(大野あや)
募集広告で出会った男女が、セックスだけの関係を始める。お互いを一切知ら
ぬまま、性的な妄想を実現するためだけに会う。都会では、どこにもありそうな
大人のアバンチュール。しかし2人の間にはやがて愛が芽生え…。そして男は募
集広告をビニール袋に詰め込んで、想い出に変えた。ベルギーの若手監督フレデ
リック・フォンテーヌがパリを舞台に描く愛の物語のヒロインを演じるのは、
『アメリカの夜』(72)でデビュー以来、輝き続けるナタリー・バイ。性と愛に揺
らぐ微妙な感情を表現して見事ヴェネチア映画祭最優秀女優賞を受賞。相手役は
スペイン出身で『ニノの空』(97)で注目を浴びたセルジ・ロペス。静かなる感情
のスペクタクルが心を打つ。 |
主人公たちの名前や過去は明かされないけれど、彼らは僕らとなんら変わると
ころのない人々。彼らはファンタズムを満たすSEXを共有するという明確な目
的のもとに出会い、初めて会った瞬間、恋に落ちる。彼らは出会いを重ねるにつ
れ、その愛を育てていく。何が男と女を互いに惹き合わせるのか。ある日突然
「愛してる」と口にするようになるのだろうか。なぜ、彼らは別れてしまうの
か。愛の物語を支えているのは、愛ではなくむしろ物語、互いに共有してきた思
い出。その物語がどのようにはじまり、何が起こり、何を思い出し、忘れてしま
ったのか。
僕にとってとりわけ興味深いのは、小さな沈黙と行間に込められたものだ。僕
は人の表情を撮りたい。話しながら、思い出しながら見せる表情を。こうした感
覚のなかでこそ、ポルノグラフィックな関係が生まれる。その関係がさらされ、
親密さゆえに淫らになる。その猥雑さは、SEXではなく言葉なんだ。愛の物語
には、はじまりがあり、経過があり、終わりがある。その愛を語ることができる
のは、別れが訪れた後なんだ。
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『ポルノグラフィックな関係』
[1/26発売 ] |
監督=フレデリック・フォンテーヌ
出演=ナタリー・バイ、セルジ・ロペス
99年・ベルギー、フランス、ルクセンブルク、スイス/アプローズ/1月26日発
売/
VIDEO 16,000円 |
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クイズに答えて、ミニシアター専門ビデオレーベル・アプローズの最新作『ポル
ノグラフィックな関係』のVIDEO&DVD(1月26日発売/それぞれ税抜\16,000、\4,800/提供・アミューズソフト販
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