三谷幸喜が、『ラヂオの時間』を発表したのは1997年11月。国内の映画賞を総なめにしたあと、ベルリン、トロント等の映画祭から招待を受け、観客から大絶賛されるという華々しい映画監督デビューを飾った。
その後、テレビドラマでの目覚ましい活躍は続くが、映画は本作が2本目。4年ぶりである。
~夢の一戸建て新築に期待を膨らませる若い夫婦。設計をまかされた、今どきの若いデザイナーと職人堅気の大工との激しいぶつかりあいに翻弄されながらも、家が立つことによる達成感を感動的に描くホームコメディ~
この『みんなの家』製作発表会見が東宝撮影所にて開かれた。
会見は、まるで三谷演出の寸劇をみているかのようだった。三谷監督の得意とする限られた時間と空間の中で、気まじめでいて、どこかおかしいコメディがそのまま凝縮されていた。唐沢寿明、田中邦衛、八木亜希子、ココリコ田中直樹と顔ぶれを見るだけでも十分個性的な面
々なのだが、三谷幸喜の持つ独特の“間”と出演者との掛け合いがそこになんともいえないユニークな空間を創り出す。新作『みんなのいえ』がどんな作品なのか、自然と期待が膨らむ。
三谷:この作品は一言で言うなら「ホーム・コメディドラマ」です。色々な見方がありますが、一軒家を建てるのにどれだけ苦労するのかを描いたHOW
TOモノ、職人堅気の大工(田中邦衛)と今風の若いデザイナー(唐沢寿明)の葛藤、八方破れのオヤジをもった若い夫婦のドラマ…と、観る人によって色々な見方が出来る。それは、大勢の方に観ていただける力のある映画だということだ思います。
普段、映画を観ない人にも観てもらえるような、年に1本しか観ない人にはこの1本!と言ってもらえるような作品にしたいと思います。
前回『ラヂオの時間』の時は『もののけ姫』にコールド負けしました。今回もなんの因果
かジブリ(注1)とまた、正面対決することになりました。
(注1:宮崎駿監督『千と千尋の神隠し』今夏公開)
唐沢:コールド負けってどういうこと?
三谷:むこうは僕のこと、どう思っているかわかりませんが、僕はライヴァルだと思っております!ぜひとも皆さんの力で!打倒!ジブリ!よろしくお願いします。
唐沢:(つぶやき声で)よけいなこと言わないほうがいいんじゃないの(笑)。
田中邦衛:大変、評価の高い三谷さんの作品なのでプレッシャーがあります。三谷さんというユニークな人物に出会えたことに感謝してます。三谷さんのリズムを少しづつ自分のものにしていきたいと思っています。三谷さんの言ってることがその時はどうしてもわからなくて、一日を終えて寝る時になって、真意がわかったりしています。
田中(直樹):出演のお話をいただいた時、どうせ「どっきり」だと思いました。八木(亜希子)さんと夫婦の役と聞き、さんまさんに怒られる!とドキドキしました。
八木:私も「どっきり」だと信じて疑いませんでした。撮影の始まった今も、なんだか信じられないです。毎日、初めてのことばかりでいっぱい、いっぱいで追い詰められた中でやっています。
唐沢:撮影は順調でバリバリ撮ってます。ぼくは、三谷作品の一ファンでもあるし、今も毎日楽しいです。
三谷:田中(直樹)さんに関しては深夜の、すごく安そうな番組で、こんなの手を抜いてもいいんじゃないの?と思うようなことでも一生懸命やられていて、それが僕の心を動かしました。その時、この方とぜひ一緒に仕事をしたいと思いました。
八木さんに関しては、最初「思い出づくり」のような軽い気持ちで出てみませんか…とお願いしました。スタッフをはじめ、みなさんが命かけて真剣に取り組んでいる中で、一人だけ「思い出づくり」の人がいるのもなんだか失礼な話だなとも思うのですが……(笑)。まあ、当然、現場に入れば真剣にやらなければならなくなってくるので、まんまと、はめてやったなといった感じです。
彼女に関しては上品であたたかくて、視聴者をなごませてくれる……そんなイメージでした。今回の役のイメージもまったくその通
りです。イメージ・キャラクターになってほしいと思うほどです。
それから田中さんですが、田中邦衛さんと言えば、僕らより下の世代では「北の国から」。もっと上になると「青大将」。僕は田中さんの代表作をもう一本作りたいと思いました。あの「青大将」が年とって大工になったらこんな感じなんじゃないか……と思ってこの役を作りました。
唐沢さんとは、何度もテレビも含めご一緒させてもらってるんですが、一番の理由は家が近い……ということですね。
犬の散歩をするたびに唐沢さんの家の前を通りまして、そのたびにここに唐沢くんが住んでるだな、じゃあ次の作品出てもらおうかなぁ、と思っていたわけです。
唐沢:そんな理由なんだ……(苦笑)。
三谷:前回『ラジオの時間』の時は、アメリカのアカデミー賞を狙うと言ったんですが、まあ……ただ、狙っただけなんですけど。今回は時期的にもカンヌ映画祭に丁度いいんで、狙います!田中邦衛さんの丈の短いタキシード姿をカンヌで、みなさんに披露したいです。
田中:……カンヌってどこだっけ?僕は関係ないよ。
唐沢:八木さんと田中さんの演技ですか?……いいんじゃないの…?さわやかで……ね、邦衛さん。
田中邦衛:……。
三谷:あの……、田中さんと唐沢くんは自分のことしか気にしてないんで、人のことなんて見てないと思います。
唐沢:今の(会見)こんな雰囲気です。三谷さんは色々なことに細かいけど、プレッシャーをかけるタイプではないので楽しくやってます。ね……田中くん。
田中直樹:僕に振らないください……(視線をそらす)
唐沢:ね……邦衛さん……。
田中邦衛:俺に振るなよ……。
三谷:さんまさんは、ノン・クレジットで少しだけ出演しています。マスコミには内緒だということだったんですが、自分からラジオでしゃべってたんで言ってしまいますが、今回はセリフがない役なんで非常にストレスらしく、歯が乾く……だの、目が乾く…だの、言ってました。あと……僕の見たところ八木さんと(さんま)の間には愛はないですね。
『みんなのいえ』は6月9日全国東宝系ロードショー。配給:東宝
|