まほの[子連れ]ハリウッドへの道24
大根役者まほ頑張る!(楽しい楽しいエキストラ!その2 ) |
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さてさて、演技指導で、監督の元に呼ばれた私。ど、どうしよう何言ってるかわかんなかったら…なんて今さら自分の英語力におびえてしまう。 監督さんは、なかなか怖そうなでっかい黒人のおっさんで、やたら声がでかい。 「オッケー。君は、街をうろつくパンクキッズだ。そこのタクシーの前までふてっぶてしく歩いて行ってピンクに肩をぶつける、そんで君は、ちょっとおどすような感じで彼女にガンを飛ばせ。オッケー?」 オ、オ。 「オッケーだな。よーし頑張れ。ゴー!」 いやおっさんまだオッケーって言ってないし。ていうか、ピンクにガンとばすなんて無理っス。怖すぎッス。そんな演技できねーっス。 ピンクさん私の真ん前にたってるけどスッゲーでかい。タダでさえでかいのに、それに厚底の皮ブーツはいてるから、とにかくでかい。でも、肌はつるつる。やっぱスターは肌質からちがうね。それにしてもこんな人にフツーぶつかってガン飛ばすか?なんてッたってこえーよ、びびりすぎて鳥肌全身に立てまくってる私に、メイク係のオヤジさんが近寄ってきた。 「ねーちゃん。はじめてか?」 へ、へえ。そおでやんす。 「大丈夫だ。肩の力を抜いて」 ってなんの会話じゃい! はああ。これはホントにリラックスして自己暗示かけるっきゃない。みんなはカボチャ。ピンクもカボチャ。全然こわかないね。はん。ドキドキしながらイメージトレーニングに励んでいると、 「休憩!ランチターイム」 なんでなんで?って思うでしょ? アメリカの労働組合は労働時間にとっても厳しいのだ。どんなに撮影が押してても、30分遅れようなら働いてる人たち全員に、罰金を払わなくっちゃいけないんだってさ。だから、いきなりランチになったりしちゃうんです。 でも私にとっては好都合。これでちょっとは瞑想ができるってもんよ。瞑想ッつってもやったことはないけどさ、前にみたことあるんだよね。アムロちゃんがコンサートの前に集中してんの。おいらもあれをやってみよう。 「へん。たいしたことねーじゃねーか」 って思ってるそこのあなた、想像してチョ-だい! からくりのビデオレターだってみんなあんなにキンチョ-してるでしょ。これが、PV撮影なんて、でっかい照明はあるわ、カメラはでっかいわ、スターはいるわ、絶対絶対失敗できーん! いちゃもんつけられたらいかーん!って雰囲気ムンムンだものさ。そりゃ瞑想も、するさ。 ランチが終わって、さあ本番! 瞑想も完ぺき。頑張るぞい、オー! みんなスタート地点にたつ。 「レディー、アクション!」 いや、こんな緊張感絶頂の時にこんな話すんのもなんだけど、このビデオの監督「アクション!」の言い方がスゲ-変だった。なんか、 「はーあっくしょん」 ってカンペキくしゃみ。なんだよそれ。気い抜けるッツーの。私が監督になったあかつきにはかっちょええ「アクション」の言い方を研究せねばな、と密かに誓ったのでした。 さてさて、PAに行けっと背中を押されて私はもう無我夢中でなんとかなんとかだるそうに歩いた。向こうからやってくるピンク。ひ、ひえええ。 「どかっ」 ぎらっ。気合いと、怒りをこめつつピンクを睨んでみる。きょ、きょわーい。 にらみかえされたあ。エーン。おかあちゃーん。 「カーット!」 なんか怒られたらヤダから、監督のそばをこそこそ通ってると、 「ヘイユ-。びびんな」 やっぱ言われた。しかも、PAの兄ちゃんには、 「なんか操り人形みたいだった。くすっ」 ちきしょう。 その後、ツーテイクで、撮影は終了。私は、あまりの精神的疲労感によって骨抜き、魂抜きになったのであります。 そして、そして、2ヶ月後、MTVで流れてるPV見てみたら …思いっきりカットされてた。ちきしょう。 来週に続く… |