ジョニー・デップは、最近とても平和な日々を送っている。出演作選びにうる
さい事で知られている、このセクシーな男優は、私生活でも何かと話題を振りま
いてきたが、 今までにない最高の幸福感に浸っている。ニューヨークの高級ホテルの1室を壊
して逮捕歴のある、かつての反逆児は、現在、恋人の歌手兼女優のヴァネッサ・
パラディと、彼らの娘のリリー・ローズと一緒にパリで穏やかに暮らしている。
「こんな美人たちに囲まれていると、家を空けようなんてとても考えられない
ね」と、今の生活に満足し切っている。かつてのミュージシャンのデップをアメ
リカに連れ戻し麻薬密売映画『ブロウ』の主人公で実在のブローカー、ジョー
ジ・ユングの役を承諾させるのには、かなりの説得力を要した。
ブルース・ポーターの同名の小説を映画化した『ブロウ』は、70年代、80年代
のアメリカに、コカインを密輸した最大の麻薬密売組織の一員であるユングの栄
光と転落の物語である。全米高校フットボールの選手だった彼が、コロンビアの
麻薬密売組織の中心人物パブロ・エスコバーの片腕となるまでの半生を描いた実
話に基いている。非合法なアメリカン・ドリームを体現しようとした彼は、合衆
国の客を相手にコカインを密売し1億ドル以上もの大金を稼ぐが、結局計画につ
まずき全てを失い、なによりかけがえのない娘からの信頼をもなくしてしまう。
彼女は何度か電話はかけるが、懲役25年の刑に服している彼にいまだかつて一度
も会いに来たことはない。
実際、デップはニューヨークのオティスヴィルにある連邦刑務所内で、ユング
本人に幾度か面会し、時間的には、短いものだったが、親しく話を聞いている。
デップはその時の感想を次のように述べている。
「僕は、釈放される2014年にはすでに72歳になっている彼に少なからず同情して
いる。彼は、親のいいなりに育てられた操り人形だった。彼の両親は息子にプレ
ッシャーと過剰な期待をかけ、思い通りに育てた」
親子の確執は、映画の中で も克明に描写されている。母親は金銭に執着心の強い勝気な女性として、一方父
親(レイ・リオッタ)は、成功とは縁がない生真面目な小心者として描かれてい
る。ユングは、彼らがどのように生き、どのように変わっていったのかをよく見
ていた。彼はコカイン中毒の妻(ペネロープ・クルズ)と20年間贅沢三昧に暮らすが、結局は飽くなき欲望と薬物依存から抜け出せないまま自滅してしまう。
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