ポール・ウォーカーファンクラブ『ワイルド・スピード』
映画ライター 前田かおり 耳をつんざくような轟音をうならせて、ロサンゼルスの街中をかっ飛んでいく改造車。 わずか400mの距離を時速270キロのスピードで競い合うんだから、尋常じゃないっ!一つ間違えば、命取り。ポールだって、一瞬ブルってます。が、ハンドルを握ったとたん、男の意地とアドレナリンが爆発し、ゴール目指して燃えまくる。 そんな彼を横目に、冷静沈着、不敵な笑いを浮かべる男。どこかで見たような……。そう、あの『プライベート・ライアン』のカパーゾ2等兵役だったヴィン・ディーゼルが、非合法ストリート・カー・レースのヒーロー、ドミニクを演じている。 スキンヘッドで威圧するような目に、全身から危険な匂いが漂うが、ここ、単純にワルとは片付けられない魅力がある。実はかなり情厚く、肝っ玉の据わった男。そして、スピードの限界に身体を張って挑戦しようという、純粋な面を持つ男なのだ。だからこそ、ブライアンは彼の人間性に惹かれ、捜査官としての任務とドミニクとの間に生まれた男同士の友情の板挟みになってしまう。このディーゼルの存在感ある演技があればこそ、ポールの持つ、根っからいい人っぽい魅力を引き出し、作品の見どころにしているのだ。 ディーゼルとポールが、ラストに男VS男のプライドを賭けるシーンは、観ているこっちまでが燃えてエキサイティング! そんな熱い男たちと向き合う女優陣にも注目。ドミニクの妹役で、ブライアンと恋に落ちるジョーダナ・ブリュースターは『パラサイト』や『姉のいた夏、いない夏』でも見せた親近感ある美しさで、ワイルドな作品に甘い香りをプラス。 また、男の中の男というドミニクの恋人役のミシェル・ロドリゲスもいい。『ガールファイト』の、ちと怖い面相で有名になってしまったけど、ディーゼルに甘える仕草がとってもキュートなのにはびっくり。勝ち気なところさえ、コワもてのディーゼルと並ぶとかわいく見えてしまうから不思議。ブレイク中の俳優たちがフレッシュな持ち味を生かし、アクションだけでなく、ドラマ部分の面白さも盛り上げていく。 もちろん、迫力のカーアクションにはハラハラ&ドキドキのしっ放し。クルマの運転はできなくても、体感できる強烈なスピードの世界に間違いなく酔え、日頃のストレスが時速270キロでぶっ飛びます。
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