『ユー・ガット・メール』などのロマンティック・コメディを得意とするメグ・ライアン。最近では『プルーフ・オブ・ライフ』でシリアスな役柄にも挑戦したが、新作『ニューヨークの恋人』はキュートなライアンにぴったりのラブ・ロマンスだ。共演は『ソード・フィッシュ』のオーストラリア出身のヒュー・ジャックマン。
去る2月8日には、主役のライアンがわずかに24時間の日本滞在という強行軍で作品のPRのために来日。時間通りに現れた彼女の相変わらずの可愛らしさに、大挙押しかけた取材陣たちからも思わずため息が漏れた。
都内・パークハイアットホテル
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メグ・ライアン(以下M):ハーイ、皆さん、こんにちは。
Q:19世紀の公爵と出会うというストーリーですが、メグさんが過去の人と話せるとしたら誰とどんな話しをしますか?
M:たくさん思いつくんだけど、この映画の宣伝でローマに行ったばかりだから、レオナルド・ダ・ヴィンチに逢いたい。彼となら毎日何時間でも話せるだけの話題があるわ。
それと、レオポルド役のヒュー(ジャックマン)はとっても優雅でね。会話ももちろん楽しかったし、素晴らしい俳優さんだったの。これだけは絶対に言おうって思ってたのよ。
Q:メグさんが演じたケイトは、映画の中でジャックマンさんが演じたレオポルドから色々素敵なもてなしを受けたりしますが、メグさんご自身はどのもてなしを受けたら嬉しいと思いますか?
M:レオポルドがケイトに朝食を作ってあげるシーンがあるわよね。トーストにチーズを乗せて持ってくるでしょ? あの小さなエピソードに胸を打たれたわ。ちょっとしたロマンティックな事を、男性がしてあげる事を照れ臭いっていう雰囲気が今の時代にはあると思う。それを受ける女性の方もやっぱり気恥ずかしいものだし。だからあの場面は新鮮だと思ったの。小さなエピソードだけど、とても気に入ってるわ。
Q:ケイトはキャリア・ウーマンですが、失恋したりして恋愛には失望感を抱いています。そんな女性をメグさんはどう思いますか?
M:映画の冒頭では、ケイトってとっても精神のバランスを崩した女性なの。彼女は別れたにも関わらず、アパートの上の部屋に住んでいる元ボーイフレンドの事ばかり考えている。つまり、失恋したのにその問題が彼女の中で解決してないのよね。キャリアの方では彼女は女性なのに、男のように働いて男のように成功しようとエネルギーをそそいでいる。やっぱりバランスが崩れてるわ。そんな彼女の前に一人の男性が現れる。彼女の生活を変え、彼女にバランスを取り戻させる男性が。私自身も生活のバランスを崩した事があるので、彼女の状況はよく分かるわ。そんな経験も含めて、私は彼女のキャラクターに共感できた。
Q:ニューヨークを舞台にした作品にたくさん出演していますが、9月11日のニューヨークのテロについてどう感じてらっしゃいますか?
M:大学はニューヨーク大学に通っていたし、ニューヨークにアパートも持ってたの。人生のかなりの部分をあの街で過ごしているわね。私は語り尽くせないぐらいにあの街を愛してる。この映画は去年の春にニューヨークで撮影したんだけど、その時に私の友人たちが、偶然にロサンゼルスなんかからたくさん集まったの。それでニューヨークで最高に楽しい時間を過ごしたわ。あの街は不思議なの。全ての経験が倍増しちゃうのよ。同じ事でも他の街で体験するより、ニューヨークで体験した方がより凄い経験だったって思える。だから映画の舞台には最高の場所よね。
だからあの事件はとっても悲しいわ。心がつぶれてしまいそう。だけどもしかしたら、より良くなれるかもしれないって思うの。あの事件のためにコミュニティの人々の結びつきがより美しく、より強くなっているの。だからあの街は事件前より強く、より素晴らしい場所になるんじゃないかしら。
Q:あのテロ事件以降、ハリウッド映画は作りづらくなりましたか?
M:私は製作について答える立場じゃないけれど……。ウーン。でもハリウッドってお客さんが何を求めているかとか、どうやって人を映画館に呼べるかって常に考えてる街なのよね。だからこんな驚くような事件が起きてとまどっているとは思うけど、あの事件がお客さんの意識に与えた変化を考えた上で、どういう映画を作るべきかと考えていると思う。でも、とにかく私はそんな大きな質問に答えられる立場じゃないと思うわ(笑)。
Q:最近『プルーフ・オブ・ライフ』などのシリアスな作品への出演が多かったのですが、ラブ・ロマンスにカムバックされたのはなぜですか?
M:私はこのジャンルが好きなのね。ロマンティック・コメディを演じるのが楽しいのよ。でも、ただ楽しいだけじゃなくて挑戦的でもあるの。やりがいがあるから好きなの。ロマンティック・コメディって良いモノを作るのはとても難しいの。ちょっと間違うととても質の低いものになっちゃう。ロマンティック・コメディには独特のトーンが必要。独特のリズム感とでも言うのかしら。具体的な身体の動きとかじゃなくて、音楽を奏でるようなリズム感がね。 私はラッキーな女優だと思うわ。シリアスもコミカルも両方やらせてもらえるんだら。
でも、私はなにより楽観的な楽しい作品が好きなのね。それが私に合うと思ってる。基本的にロマンティック・コメディの登場人物は、愛を最上のモノとして理想化してたりするでしょ? そういう所も好きだなぁ。それとフェアリー・テイルみたいな所も好き。そういう形を通して、ストーリーをお客さんに語るっていうのが好きなの。
Q:メグさんは主演作が出来上がると、必ず日本にキャンペーンに来てくれます。それは、あなたが映画製作会社を持った事でプロモーションの重要性を知ったからですか?
M:いいえ。そんな事はないわよ。キャンペーンに熱心なのは、これが仕事の一部だと思っているからね。それに楽しいわよ。先週はずーっとヨーロッパでキャンペーンだったんだけど、ローマでは自転車に乗ったし(笑)、ベルリンではクラブで遊んだわ。パリでも最高に楽しかったのよ。
Q:製作会社を持った事で女優業に何か影響がありましたか?
M:実はその会社はもう無くなってしまったの。あんまりにも忙しくて、やってられなくなっちゃったのよ。だけど色々経験して、一つだけ学んだ事があるわ。それは映画を完成させるっていうのは、ほぼ不可能に近いくらいに大変な事だってこと。
プロダクションを持った事で、映画を最初から作っていくプロセスを見る事ができたわ。ライターの人たちの話しを聞いたりしてね。
私たち俳優はセットに入って撮影するだけなんだけど、そのセットに至るまでに、たくさんの人々が大変な苦労をしてサポートしてくれているんだなって。それが分かった事は、私が女優としてやっていく上でプラスになったわ。
Q:映画の中でキャリア・ウーマン役なので黒い服が多かったようですが、普段はどんな服装をしていますか?
M:私って普段の服装が、その時撮っている作品のキャラクターの服装に影響されちゃうのよ。この作品の衣装はシンプルでスマートな線を強調したものが多いけど、次の作品は奔放な女性の役なのね。だから服装もクレイジーなの。かなりイカレた靴を履いてたりするしね。私の普段着は彼女に影響されちゃってるの。だから私のクローゼットの中はメチャクチャなのよ(笑)。
Q:今日着ている服は黒くて素敵ですね。
M:これはただシワになっても目立たないから着てるだけなの。
Q:映画の中で素敵な黒のサングラスをしていますね?
M:クールだったでしょ? どこのブランドのサングラスか知らないんだけど、私が選んだのよ。
Q:メグさんがアイデアを出して採用されたシーンはありますか?
M:ジェームズ・マンゴールド監督は、私たち俳優の意見を良く聞いてくれる人で色々話したんだけど、これが私がアイデアよっていうシーンは思い出せないわ。これが答えになるかどうか分からないけれど、この映画は男女のロマンティックな関係を見直す時期なんじゃないかって描いているところが面白いなって私は思ったの。10年ノノ15年前かな? ウーマン・リヴが盛んだった頃には、男性が女性にドアを開けてあげたりすると、男性がその女性に平手打ちされたりしたのよ。これは極端な例だけど、男性から何もして欲しくないって感じの時代があったの。その時代が過ぎ去って、今は男性が女性に何かしてあげて、それを女性が素直に受け入れるっていう時期になりつつあるんじゃないかしらって、この作品は言ってるような気がするのね。男性が女性に礼を尽くす事が決して見下してるワケじゃなくて、女性に対して敬意を表すためにしているんじゃないかって。時代が変わりつつある事を捉えている所が面白いって思ったわ。
Q:フェアリー・テールがお好きと言っていましたが、白馬の王子さまを夢見たことはありますか?
M:(笑)いいえ。白馬の王子さまを夢見た事なんてないわ。映画の中でヒューが白馬で走り回るのは、笑わせるための要素の一つでしょう?
Q:ニューヨークは恋のミラクルがある街だと思いますか?
M:ええ。ニューヨークは、他の街では起こらない事が起こる街だと信じてるわ。さっきも言ったけど、特別な体験ができる街よ。あの街で体験すると、他の街でより大きく感じられるの。それに色々な事が起こるわ。人種のるつぼだし、住民たちはルールに縛られたりしないわ。自由で個人の主張を尊重する気風に満ちてる。だから、マジカルな事が起こりやすいのかもしれないわ。だって、自分自身に正直に生きていく事ができる街なんだもの。
司会:ありがとうございました。
M:ありがとう。バーイ!
(佐野 晶)