森田まほ
映画が好き!現場で働きたい!その思いがこうじて単身アメリカ、ハリウッドへ渡り、現場でインターンとして日夜現場を飛び回る日々であったが、ある日アメリカ人の青年と結婚。その後予定外の妊娠をするが、無事出産。現在はグリーンカードを取得すべく待機中。 |
最私はひどい肩凝り持ちだ。それも重度の。さらに、腰痛も。
アメリカに来るまでの18年間、私は大好きなお布団の上で毎晩寝ていたので、アメリカでのベッド生活は私の腰をみるみる悪化させ、朝起きたての私はまるで老婆。毎朝金魚体操をやったり、ヨガの猫のポーズをためしてみたり…。
でも全然きかないのよおお!!
そんな中、フィルム製作が始まって力仕事をするようになった。あのね、この仕事、腰痛持ちにはマジできつい。周りのスタッフは、私が若いっつーだけで、やれあれを持て、これを持てと言うでしょ。だけど、私の腰は若年骨粗しょう症。ニードカルシウムのニードマッサージ師。
重いモンを運ぶたんびに、
「アー。よいっしょ。よっこらしょ」
と、腰を伸ばしてはトントントン。
そんな私の、肩も腰も限界点に達したころ、お休みの日に旦那〔当時は親友〕が
「マホリーン。ベニス行こーや」
と誘ってくれた。
ベニスビーチには休日になるといろんな露天が出て、旦那はボードウォークっつー海沿いのサイクリングコースをスケボーでガラガラ滑るのが好きなのだ。私は、そんなアクティブ派では全然ないのでその間、フリーマーケットをぶらぶらしたり…。
でもその日は、毎日の過酷な肉体労働のおかげで腰はいてえわ、肩は凝るわ
ショッピングなんてしてらんない。どこか座れるとこはないかって探していると、親しみのあるアジア系のおっちゃんが手招きをしている。
はっ、このおっさんは。この地に来る度、気になってはいながらも素通りしていた怪しげな青空マッサージ師。ローマ字で「KIKOU MASSAGE」とでかい看板。簡易ベッドと、顔だけ穴から出すようになってる(最近よくある15分マッサージにあるあのイスです)イスが一つ。
「お姉さん。マッサージ20ドル。チャイニーズ気功だよ」
今までだったら、こんな恥ずかしいの絶対やらんっと思っていたのだけれど、あまりの腰の痛さにふらふらとおっちゃんに吸い寄せられてしまった。そして気付けば、簡易ベッドにうつぶせに。
「チャーリーズエンジェル」を見た人はわかると思うけど、ルーシー・リューがやってたでしょ? あれを、おっちゃんがやるんですわ。おっちゃんは、ひらりと私の上に飛び乗ると、足で上手にバランスをとりながらギュムギュムとポイントを押さえてくる。親指で。お。おおう。これが中国四千年の歴史かあ。
英語では、凝ってるところを「ナッツ」というのだけど、おっちゃんはツボを見つけるたびに「ナッツ!」「ナッツ!」と発しながらイタ気持ち良く攻撃してくる。そのたびに「くぉっ」と思わずエビぞリになる私。はあああ。気持ちエエエー。
おっちゃんの親指マッサージは15分で終わり、お次は、簡易イスの方へ。私はあまりの気持ち良さに完全にトリップしていて周りなんか何も目に入ってなかった。フラフラーっと導かれるままに、イスに座って顔だけ穴からにょっとだす。やってみりゃ、恥ずかしさなんて全然ないわな。それより、もっともっとマッサージプリーズ!! さっきは、背中と腰を中心にやってくれたおっちゃんだったけど、今度は肩。こっれが、またバカみたいに素晴らしい!
お天道さんの下、海沿いで潮風に吹かれながら、うとうとと中国人のおっちゃんに肩をモミモミしてもらう。極上の幸せ。
おとなりの露店では、日本人のギャルねーちゃんたちが腕に偽モンのタトゥーを入れてもらってる。
あまりの心地よさに、一瞬意識が遠のきガクッとなって、目を覚ますと私は自分の口の端から不覚にもオツユがはるか下の地面に落ちた。いやんっ。よだれが垂れても自分でさっと拭けないのが、この簡易椅子の切ないところ。あまりの恥ずかしさに、周りに見られてないか顔をふと上げた私は我が目を疑った。
アメリカ人に、日本人、ものすごい数の人間達が私のマッサージのされようを見ている。さらには、私のあまりの気持ちよさそうな顔につい列を作って待ってる人までいるじゃないの。
このまま、砂浜に穴を掘って入りたいわ。恥ずかしい。おっちゃんもうマッサージいいよって言おうとすると、脇の露店からこんな日本語が聞こえてきた。
「ねー。あの子日本人かなー?」
「いや、違うでしょ、現地民だって! 日本人だったら気まずすぎー」
「あはははーっ」
悪かったな気まずい日本人でよお。
次週に続く
お知らせ:月刊フリックスでまほちゃんが、「好き勝手クロスレビュー」の連載を始めました。ハリウッドのカリスマビデオ店員マイケルのちょっと辛口レビューも要注目!
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