イライジャ・ウッド独占インタビュー
ウッドが演じるフロドは冒険の中で、何かに“気づき”、運命を受け入れていく。自分が負った責任の重大さを実感し、プレッシャーと戦いながら、使命を果たそうとする。その経験でしだいに強くなっていくフロド同様に、彼も長期間の撮影を通して大きく成長することになった。 |
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僕は原作本よりむしろ監督に意見を求めた |
――主人公のフロド役に決まった時、さぞ興奮したでしょうね?
イライジャ・ウッド(以下W) 興奮なんて言葉じゃ物足りないよ。冒険の世界へキップを手に入れたんだ。もう“大感激”さ。撮影でニュージーランドに来て1年半になる。3部作を一度に撮るわけだからね。ピーター(・ジャクソン)はすばらしい監督だ。出演できて光栄に思う。とにかく夢中で取り組んだよ。
――原作である「指輪」シリーズは、読んでいましたか?
W 実は、「ホビット」は読んだことあるけど、「指輪物語」は読まずにずっと本棚で眠らせてた。僕がいかに怠け者か、本棚を見ればわかるよ(笑)。実際に、読んだのは、出演が決まってからさ。
――撮影中、キャストたちが持ち込んだのは、脚本と原作本だと聞きましたが……。
W 確かに、そういう俳優も何人かいたよ。でも僕は、あえて持たなかった。衣裳やセットなど、撮影現場はすでにミドルアース(「指輪物語」の舞台)の世界そのものだったからね。余計な情報を増やしたくなかったんだ。
フロド(小さい種族ホビットの青年で、本作の主人公)のキャラクターで重要なのは、冒険を通して成長していく心の変化だ。僕は原作本よりむしろ、ピーターに意見を求めた。
3部作だからこそ、多くのテーマを盛り込むことができたんだと思う |
――シリーズ3部作を一度に撮影した感想は? 1作品ごとの撮影とどのように違いますか?
W 1作品ずつだと、どうしても撮影ごとにブランクがあいてしまうだろ。今回の3作品は連続する1つのストーリーなんだ。だから、一度に撮影して成功だったよ。
実際、僕たちも冒険の旅を、最初から最後まで続けることができたしね。原作を忠実に再現していったんだ。3部作だからできたことさ。この壮大なファンタジーを1作品でまとめようなんてムリな話だと思う。
ピーターは、いろんなスタジオにこの企画を持ち込んだけど、どこも怖気づいちゃったらしいよ。でも、ニューライン・シネマだけは違った。当初、ピーターは2作でまとめるつもりだった。
小説に合わせて3部作にしようと提案したのは、ニューライン・シネマだったんだ。3部作だからこそ、多くのテーマを盛り込むことができたんだと思う。また、一気に撮影した方が演じる上でもやりやすかったね。
――例えば、どんな点で?
W 長い撮影期間を通し、僕ら“旅の仲間”は、厚い信頼関係を築いたんだ。いわば“兄弟”みたいな関係さ。だから、仲間同士の友情も、とてもリアルに感じることができた。
フロドのように 僕も成長することができた |
――今回も、純粋な少年っぽい役柄でしたね?
W なかなか大人になれなくてね。あ、誤解しないで、役柄の話だよ。実際の僕は、違うからね。個人的には成長してると思う。長期にわたる海外撮影も、ましてやニュージーランドも初めてだったからね。
それに、まったく別世界のキャラクターを演じるのも、勉強になったよ。僕にとっても、この映画は“冒険旅行”だったってわけさ。フロドが一人前に成長していくように、僕も成長す
ることができたよ。
――そのフロド役ですが、少し変わったヒーローですよね?
W そう、なかなか自分の運命を受け入れず、ウジウジしてるんだ。
――それが旅の間に、強くなっていく。このフロドの成長ぶりがポイントですね?
W その通り。彼がどのように成長するのか。また、そのきっかけは何か。彼は冒険の中で、何かに“気づき”、運命を受け入れていくんだ。彼の“気づき”の瞬間を見つけるのが僕の作業さ。絶大なパワーを持つ“指輪”。フロドはそのパワーを理解し、自分が負った責任の重大さを実感する。
だからこそ、プレッシャーと戦いながら、使命を果たそうと頑張るんだ。こうしてフロドは確実に強くなっていくのさ。
友情の印がほしくて、みんなで、永遠に身体に刻まれるタトゥを彫ったわけさ |
――本作は、現実が忘れられるような迫力ですか?
W そうだね。観たこともない世界が展開するよ。CGを駆使した美しい景色はスゴい迫力だ。さらに、壮大な冒険物語が展開するわけだからね。僕も現実なんて忘れて、ストーリーにのめり込んじゃったよ。
――(ホビット用の)義足はどうでした?
W ホビット役には欠かせないけど、しばらくはカンベンしてって感じかな。義足のおかげで、朝は5時起きだよ。装着には1時間もかかるしね。それに1日中、着けっぱなし。自由に動き回れなかったよ。
――タトゥも、本作に対する思い入れの表われですか?
W まあね。友情の印がほしくて、みんなで、永遠に身体に刻まれるタトゥを彫ったわけさ。痛かったよ。
――どこに彫ったんですか?
W 見せてもいいけど、写真はダメだよ。見せびらかさないって約束したんだ。やたらにタトゥを見せたがる人もいるけど、あんまりかっこいいとは言えないよね。
――みんな、同じタトゥですか?
W そうだよ。
(ローラ・グロス/訳 柏木しょう子)