森田まほ
映画が好き!現場で働きたい!その思いがこうじて単身アメリカ、ハリウッドへ渡り、現場でインターンとして日夜現場を飛び回る日々であったが、ある日アメリカ人の青年と結婚。その後予定外の妊娠をするが、無事出産。現在はグリーンカードを取得すべく待機中。 |
私のルームメイトだったジェシカは、酒が大好き。なんかいいことがあると、がばがばのんで、かなりへべれけに酔っぱらっていた。しかも、へべれけに酔っぱらったついでに、ハンサム兄ちゃんと一緒に帰ってきたりなんやらかんやらで、もててやがった。
当時私はまだ未成年。でも、もちろん酒は飲み始めていた私は外で飲めないため、お家でバイオハザードをやりながら、日本酒をちびちび飲んで、知らないうちにコテッと寝ている夜が続いていた。
セキュリティーの厳しくないバーにこっそり行って飲むことはたまにあったけど、かなりの小心者の私はロスで、泥酔というのがおっかなさすぎてしたことはなく、いつもカクテルを一、二杯が限度。
逆ナンでも、ナンパされるでもないテンションでお家に帰ってやっぱりプレステ酒を飲んでふて寝。まるでおやじさ。
日本にいたときでも、酔いつぶれて「もーっ」なんて言っちゃって、男の子にウヒヒとなられている友達を見ては、「アー、なんかあのキャラも良いなー」とひそかにうらやんでいたのよね。実は。
だから、うまーく酔っぱらえる金髪娘のジェスねえさんは私の憧れでもあったわけだ。
ある日、「たまには酔いつぶれて、ラテン系の兄ちゃんと一夜の恋でもしたいもんだ」とジェスに思い切って言ってみた。すると彼女は「泥酔しても、自分を見失わないためにはもっと酒に強くなければダメ!」と熱く語りだして、しまいには、「私を酒に強くする計画」を練りだした。
普通だったら、こんなアホな計画ケッとけ散らすもんだけど、このときの私は師匠のジェスねえさんを全面的にかなり信用してしまっていた。
よおーし。私も、ジェスみたいにお酒に強くなって、がばがばのんでも、ゲロも吐かず(失礼)潤んだ目で、殿方を誘惑できる女になってやる!!!
もう一人のルームメイトフィリップの冷たい視線をよそに、私の酒に強くなるぞ計画は着々と進んでいた。
次の日から、私の胃はコロナビールの海になった。コロナビールは、日本人にとっての会社の後の生ビールみたいなモン。ロスじゃあ、どこに行っても、人々はコロナの瓶をもって踊ったり、ビリヤードをしたりしてる。
ちなみに、私はビールとコーヒーが死ぬほど嫌い。だって苦すぎ! もっと甘ったるいヤツくれよ。と、要求すると師匠にため息をつかれた。
「まずは、コロナを飲めないとあんたは一生ガキのままよ」
くそお。
毎晩毎晩、私を近所のバーに連れていきコロナしか頼ませてくれないジェス師匠。一口飲むたんびに、オエエエエエ。マジイイイ。と絶叫する私。初日なんて一本飲みきるのに2時間かかったさ。私にとっちゃ、青汁毎日飲まされてるよなモンですからね。こんなつらい修業の日々が、一週間ほど続いたかしらね。
でも、人の体は不思議だ。飲んでくうちに、何だか何だか、コロナって野郎がそんなに嫌いじゃなくなってくる。あれ? こいつ結構いいやつじゃん。なかなかおいしいかも。
そんな風に思い始めて私もなかなか成長しだしたっつーのに、師匠が自分ですべてぶち壊した。まだ酒ってモンになれてない私に、しびれを切らし「もうめんどくせー、どうせならこれ飲んじゃえ」
と、とんでもないモンを私に飲ませやがったのでございます。
コロナ三本ほどで、結構ぼーっとし始めていた私は、「ノーノーデンジャラス!」というフィリップの声と「だーいじょうぶだって、ワハハハハ」と、能天気なジェスの笑い声を聞きながら「こりゃ絶対なんか飲まされるわ」と察知した。
いままでの、私なればここで「ノノノノーノーノー」とかたくなに断っただろうけれど、このときは数日のコロナ修業で心の中にいちまつの「私酒に強くなってるんじゃ」自信がほんのりとあったわけなのよ。
そこで、どんと来い!
ときたモンは、なんかのショット。「テキーラ?」「ノー」「ウォッカ?」「ノー」にやにやしているジェスねえさんと心配そうなフィリプ兄さん。
バーテンのオヤジが楽しげに言った。
「いっつあ、ぼーむ(bomb-すなわち爆弾ですな)」
かーっ。いやだね、その表現、アメリカ人クセーなーオイ。名詞をいえー名詞を!! おらおら、飲んでやるよ。ぐびっ。
午前1時15分 森田まほハリウッドの安酒場で死亡。
次週につづく
お知らせ:月刊フリックスでまほちゃんが、「好き勝手クロスレビュー」の連載を始めました。ハリウッドのカリスマビデオ店員マイケルのちょっと辛口レビューも要注目!
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