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モーガン・フリーマン来日記者会見

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モーガン・フリーマン
モーガン・フリーマン来日記者会見
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去る3月28日、帝国ホテルで、モーガン・フリーマンの記者会見が行われた。大物俳優の会見だけに場内には緊張感が張りつめていたが、モーガン・フリーマンの人なつっこい笑顔とサービス精神に満ちた受け答えに場の雰囲気は一気になごんだ。またTOKYO FMの“KANPOアーバンウィークエンド”パーソナリティを務める真中瞳が『スパイダー』を朗読し、モーガン・フリーマンにインタビューする一場面もあった。

 


モーガン・フリーマン(以下F):まず最初に言いたいことがあるんだ。私は日本語を話せないので、また日本に来れてどんなにうれしいかということをみなさんにお伝えできないのがとても残念に思っている。今回で来日は三度目になるけど、毎回とても暖かい歓迎を受けて、いつも楽しみに来ているんだよ。 母国のほかに外国にもファンがいるということをは、俳優としてとてもうれしいことだし、喜びも三倍に増えるね。


真中:セブンの続編が制作されるといううわさもあったのですが、常に同じ役はやらないと拒否し続けてきたあなたが、「スパイダー」で同じアレックス・クロス役を演じることになったのはなぜでしょうか


F:まず最初にセブンの続編という話は全くなかったから、それを断ったことはないし、そういうオファーもなかったんだが、ただ私はかねがね同じ役を演じるのを決して悪いこととは思っていないし、私自身もいやだとは思っていないよ。


ただ、同じ役をやりたくないと言っていたのがどういうことかというと、一つの役を演じた際にそれが当たり役になってしまうと、その映画の後に、往々にしていろいろな脚本家の方が「あの映画のあなたをイメージしながらこの脚本を書きました」と言ってくる。

実際彼らが何を言っているかというと、俳優としての私をイメージしてその脚本を書いたのではなくて、私が演じたキャラクターそのものを念頭に置いて脚本を書いているんだ。そういったことをされるのはとても嫌なことで、いろいろなオファーが来る中、一見ちがうような役でも実は同じような役、そういった役をやるのがいやなんだ。だから、たとえばジェームス・ボンドという役を007シリーズで何度も演じるということは構わない。

でもジェームズ・ボンドみたいな役を例えば007以外の映画の中ちょこっとで演じることに違和感を覚えてしまう。そういった意味で同じ役、いわゆる役どころを演じたくないだけで、同じキャラクターを演じることについては嫌だとは思っていないよ


真中:今回は制作総指揮も担当されたということですが、スタッフ側の視点で作品にたずさわった時、自分が演技に及ぼした影響もちがいましたでしょうか


F:これから、一つ真実を教えてあげよう。でも決して誰にも言わないと約束してくれるかい? 約束してくれたら今ここで真実を明らかにするからね。
 

エグゼクティブプロデューサーという役職は、実際はナンにもしないんだ。仕事じゃない。ただの肩書きさ。


それでこの肩書きは、私を釣るえさにすぎない。私にやってもらいたい映画があるときに、「どうだろう」と考えたそぶりを見せるだろう? そういうとき、製作側は「エグゼクティブプロデューサーにならせてあげますよ」という条件をぴらぴらっと見せてくるんだ。


エージェントは契約を交わしているときに、その条件の中に少しでも私の利益が多くなるように考えてくれる。もし俳優としてうまく演じ、その映画がヒットしたとしても収益は全く入ってこないんだが、映画がすごくヒットしたときプロデューサーには何パーセントかの収益が入ってくる。で、エグゼクティブプロデューサーにもその収益は入ってくるから、そういった肩書きをつけてもらえると、俳優としての収入のほかに、映画がヒットしたときにある程度の収入を得ることが出来るわけなんだ。


これはあくまで秘密だから、絶対に誰にも言っちゃいけないよ。もし誰かに話すとしても、モーガン・フリーマンがそう言ってたとは言わないように


真中:あなたが出演された作品の中で一番印象に深いものはなんでしたか


F:
日本の方が見られたどうかはわかりませんが、かつて私は『グローリー』という作品に出演したことがある。この映画は私にとって非常に印象深い作品だった。これは、南北戦争時の黒人だけの一個中隊があり、その事実を描いた作品なんだ。この話は史実に基づいているのにかかわらず、残念ながらこの作品が出来るまで南北戦争中に黒人だけの隊があったことはほとんどのアメリカ人が知らなかった事実だった


真中:俳優として長いキャリアを積まれたあなたから、俳優を目指す若者に向けてメッセージをお願いします


F:
こういった質問はよく受けるんだよ。俳優を目指している若者に対してなにか一言と…。これについては一言だけアドバイスがある。でも一つだけ。それは、俳優になるという道に決して近道はないからね。


とにかくあきらめずに続けること。これはとても大変なことだよ。たくさんの人たちが、俳優に対して華やかでお金持ちにもなれるし、簡単になれるようなイメージを持っているようだが、決してそうではない。本当に、働いてお金がもらえる俳優になる人たちは、とても限られているから。なぜかというと、本当に狭き門なんだ。この狭い門に大勢の人が群がって入ろうとしているからなかなか向こう側には入れない。こういった状況のなかでとにかく根気よく夢を追って、努力を続けることが唯一の門の向こうに入れる手段だと思う。


私はかねがね、自分の子供たちや若い方にこんなことを言っている。レースに参加したら、ちゃんと走らなければ勝つことは出来ない、ってね

 

(ここから記者の質議応答)
--コレクターそして今回のスパイダーと、犯罪心理捜査官の役を演じられて、実際に犯罪心理というものに興味を持たれたでしょうか


F:いいや。だれしもがミステリーや推理小説を好きだとは思う。僕自身もそうだしね。でも、それはなぜかというとパズルを組み立てていってなぞ解きをするのがとにかく楽しいから。だからこそ、アガサ・クリスティやガードナーなどの推理小説がベストセラーになっているんだろう。優れた作家の小説を読んでいる時、最後の最後までなぞ解きは出来たと考えていたのが大どんでん返しに「ああ!こっちが犯人だったのか!」と知るのはとても面白い。


でも好きと言ってもそこまでで、個人的に、というか俳優としては誰でもそうだと思うけど、心理学、人がどんなことを考えているかということに興味はあるが、特に犯罪心理に興味があるかというとそうではないよ


--先日のアカデミー賞で、デンゼル・ワシントンとハル・ベリーが主演賞を受賞したことについてどう思われますか


F:私の感想はほとんどのアメリカ人か感じている感想と一緒でとてもうれしかった。あの日曜の夜起きたことは、本当に人々の心をうれしく、そして楽しくさせたと思う。

それから、映画業界がやっと一つのところに到達したなという達成感も大変感じたよ。なぜならば今まで、黒人の俳優がなかなかアカデミー賞をとれないのはそこに差別があるのではないかとずいぶん批判されてきたからね。シドニー・ポワチエが主演男優賞を受賞したのは1963年、主演女優賞は黒人女優では今まで誰も受賞したことがなくそのことには賛否両論繰り広げられてきた。

そこから一歩進み、今回は2人が受賞することが出来てとても良かったと思う。それは黒人だけではなくアメリカ人誰もがそう思ったはずだし、もちろん私も同じ気持ちだよ」


--今回クロス役をもう一度演じられていますが、監督がリー・タマホリ監督に代ったことによって役へのアプローチは何か変わったでしょうか


F:答はノー。でも、そのノーの中でも細かい点についてはイエスというところもあるね。なぜアプローチが変わったかというと、私の中ではこのアレックス・クロスという人物自体は同じでも、今回は全くちがうキャラクターになっていたから。『コレクター』の時のアレックス・クロスは、自信に満ちあふれ、おしゃれでカッコよく作家としても本を出版史とても成功している。


 でも、この作品のアレックス・クロスは、自分のミスでパートナーを失ってしまい自責の念にさいなまされている。そのことが原因で、休職中であり、自信を喪失し、自分を責め続けたことによって年もとった。だからそう言った意味でのアプローチの仕方は変えたよ。それと同時に、監督も変わったし、前作からの歳月の流れ上、衣装デザイン等も変わるものだし、僕なりに変えたところはあったと思う


--日本の印象は?


F:僕の日本に対する印象はとてもさまざまなものがあるんだ。かつて、僕は『将軍』を読んだことがあって、あれが正しい印象かどうかは疑問だけれど、あの作品を読んでから日本の文化にはとても興味を持っている。


西洋人だったら誰でもそうだと思うが、本当に魅力あふれる文化だと思うよ。世界中どこにいても、日本人というのはいつでも礼儀正しくきちんとしているし自分自身に厳しい民族ではないかな。ブッダの教えから来ているのかもしれないが。でも、これ以上言うと墓穴を掘ることになってしまいそうだからここでやめときたいと思うけど、日本に対する僕の印象はすごくいいことばかりだ、願わくば日本を何度か訪れてなにかを学びたいと思うけど、まずは日本語から学ばなければね。


黒沢監督もそうだし、ほかの日本人の監督の作品を見てもやはり日本人の文化とか日本人についていろいろ印象を受けたり学ぶことも多々あるわけなんだ。


でも、日本人とは何たるものかとかを語ろうとしたり、そういうものを突き詰めていったところで、実際あってるかどうかもわからないしなかなか語り尽くせるもんじゃないだろうね。でも、そういったいろんなところから日本の印象というものをたくさんうけてきたのは確かだよ


--あなたのその長いキャリアの中で常にモチベーションを高く持ち続けた秘訣はなんでしょう?


F:ここまで、来れたのは自分の友人と神さまからもらった運命だと思っている。本当にもうあきらめよう。もう俳優には向いていないと思ったときは何度も何度もあった。でもそういうとき必ず友人が、「あきらめるな」と勇気づけてくれたり、なにかが起きたんだ。たとえば、ずっと役がつかずあきらめかけたときに、ちょうどなにかの役が決まったとか。

そういったなにかが起きた。そうやってここまで来ることが出来たんだ。僕はそういう運命とか定めだとか、なにかの縁を信じるタイプでそんな不思議な偶然が重なってここまで来たのだと思うよ


--今までの作品の中で影響を受けたり学んだことはあったでしょうか? また、今回のアレックス・クロスから学んだことは?


F:そうだね。人生長く生きていけば、どんなことからでも学ぶことはある。もちろん、僕自身もこれまでのキャリアからたくさんのことを学んできた。ただ、ここで何を学んだかって聞かれて、これを学んだって答えるのはすごく難しい。蓄積ってものがあるからね。強いて言えば、俳優という仕事を通して、いろんなところを訪れいろいろな人に会えたこと、いろいろな文化に触れることが出来たことじゃないかな。アレックス・クロスから学んだことは…何もないな。

--ファンのみなさんに一言


F:どんな作品でも思うんだけど、お金の無駄にならないように映画の料金分は楽しんでください

 


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