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『ザ・リング THE
RING』
アメリカのある都市で一本のビデオテープを観た男女が同日同時刻に死亡した。ジャーナリストのレイチェル(ナオミ・ワッツ)はその秘密を追ううちに奇妙な噂を耳にする。それは、そのビデオテープを観たものは一週間後に必ず死ぬというのだ……。
英題: THE RING
製作年: 2002年
製作国: アメリカ
日本公開: 11月2日
(日比谷映画他全国東宝系)
配給: アスミック・エース / 角川書店
カラー
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今年はナオミ・ワッツの大ブレイク年だ。『マルホランド・ドライブ』の大胆演技で一躍スターダムにのし上がった彼女は、どちらかと言えば遅咲き。それだけに、一つ一つの仕事に対して誠実に取り組んできた姿勢が実を結び、成功に導いたと言える。転換期の只中にいる彼女に、その心情を聞いてみた。
Q・ナオミというお名前は日本人には親しみやすいですね。
A・アフリカにもある名前なんですよ。聖書に由来する名前で、両親がつけました。公平な心を持つと言う意味らしいの。
Q・日本版『リング』をご覧になった印象はいかがでしたか?
A・日本版を観るより先に、今回の脚本を読んだのです。それで、日本版を観ようとあちこちに電話をかけて、やっとビデオを入手しました。しかも、ダビングを繰り返した非常に状態の悪いテープです。脚本を読んだときから感じていたのですが、これは大変パワフルでシンプルなコンセプトを持った物語です。とても興奮しました……。コンセプトがシンプルな分、私の演じるレイチェルの、心理的な旅をしっかり表現する必要があると感じましたね。日本版を見たときの印象は、今回の脚本を読んだときに感じた興奮そのままでした。でも、日本版は一度しか見ていません。同じ役を演じる場合は、オリジナル版にとらわれてしまう危険性がありますから。
Q・『マルホランド・ドライブ』と連続して恐い映画に出演なさいましたが、ご自身で恐ろしい体験をしたことは?
A・クレジット・カードの請求が来るたびに恐い思いをしているわ(笑)。『ザ・リング』や『マルホランド・ドライブ』で味わうような体験は、もちろん、現実の世界では経験したことはありません。でも人間ですから、やはり怖いものというのはありますし、そういうものを役作りに反映させていきたいと思います。
Q・オーバーナイトサクセス(一夜での成功)と騒がれていますが、ご自分でどう感じますか? その通りだと感じるか、あるいは長い間頑張ってきた結果だと思いますか?
A・オーバーナイトサクセスだとしたら、その一夜は非常に長い夜でしたね。もちろん、10年間女優として頑張ってきて、その間におかしてしまったあやまちや学んだことが糧になり、長い旅を経てたどり着いたのだともいえます。もし20代で成功を手にしていたら、成功に引っ張られて自分を見失っていたかもしれません。今現在こういう状況にあることが自分に自信をつける結果に結びついたのだと思います。
Q・オリジナル版である『リング』には日本的な印象を受けましたか?
A・むしろアメリカ的な映画だと思いましたね。登場するキャラクターも含めて。ホラー映画では、金髪で叫んでばかりいる、弱い立場のヒロイン像が多い中、これはそうではありませんでした。私が演じるレイチェルは、ビデオを見て、何が起きているのか理解したとき、サバイバルモードにスイッチを切り替えます。そして息子を守るのです。とてもガッツのある女性ですが、同時にレイチェルは欠点のある女性でもあります。仕事にまい進するあまり、息子に対する注意も薄れています。レイチェルがストーリーを引っ張っていく以上、観客は彼女に共感しないといけません。そうでなければ映画が成立しないからです。その点を意識して、皆が共感できるレイチェル像を作りました。
Q・レイチェルは一週間後に死ぬかもしれないと分かっていて、ビデオを観てしまいます。それは、特ダネを追うジャーナリストとしてではなく、人間としての好奇心でもあります。それも含め、積極的に恐ろしいことに立ち向かっていくレイチェルの行動で、貴方ならやらない、或いはできない、ということがあったら教えてください。
A・ビデオテープは私も観てしまうと思います。もともと好奇心が強い方なので。レイチェルの立場に立てば、姪がビデオで死んでいるわけです。他の若者達もビデオが原因で死んでいる。それもあって観るわけですね。その奇妙でリアルな体験を通し、ビデオから感じた恐怖……もちろん、映像も怖いのですが、これが彼らを殺したんだ、という意識が彼女の中でハッキリしていく過程が恐ろしいと思いました。そして、もう一つ、息子がビデオを観てしまいます。息子が死んでしまうきっかけを自分が作ってしまった、息子を失うかもしれない恐怖を初めて味わうのです。どうしたら、彼を救えるのか、母として試されるのです。だから、私も彼女と同じ立場だったら、彼女のしたことで私がしなかったことは一つもないと思いますね。
(取材・文/池辺麻子)
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