情報誌等で活躍するライターや編集者が毎月5本の映画を評価! 映画を観ることに関しては‘プロ’には違いないが、プロといえども人の子。作品の出来の善し悪しに関わらず、好き、嫌いはどうしてもつきまとう。このコーナーでは作品評価の他に個人的な好みを★5段階で表現した。ただしあくまで映画は私的なものなので、ここでの評価が低いからといって読者にとってつまらない映画かといえば……それは劇場へ行って自分の目で確かめよう!
-近況など-
映画ライター
映画音楽として良く使われるアメリカの黒人女性歌手のニーナ・シモン。一応ジャズ歌手って言われてるけど、ジャンルなんて飛び越えちゃってて、ニーナ・シモン自体が一つのジャンル。ジャズ嫌いの人も聴いてみて!
ライター
原作・浅田次郎、音楽・久石譲という泣き路線の映画『壬生義士伝』の試写でボロ泣き。(ハマッた自分がく、悔しい!)その後、仕事で年末年始の時代劇ドラマの台本を読んで正月前にして、気分はすっかりお江戸でござる…。
編集者&ライター
年々、一年が過ぎる速度が加速しているような気がする。2002年もたくさん映画を観たなぁ。そういえば、去年最後にスクリーンで観た映画は宮崎あおい主演の『害虫』、年始はホラーの2本立てだったなぁ……。
ストーリー 19世紀フランス。親友フェルナン(ガイ・ピアース)に陥れられた無垢な青年エドモン(ジム・カヴィーゼル)は、無実の罪で島送りに。だが、13年間の幽閉生活を経て島から脱出した彼は、フェルナンらへの復讐を誓い、名前を変えてパリの社交界に乗り込む。
日本公開:11月3日
(日比谷スカラ座2他全国東宝洋画系)
上映時間:2時間11分
配給:東宝東和
(C)BUENA VISTA PICTURES DISTRIBUTION and SPYGLASS
ENTERTAINMENTGOUP,LP
レオの裏社会成り上がり一代記、なんてものを期待してた。スコセッシがレオにサイコパスぎりぎりのブチ切れ男を演じさせたら面白そうだなぁ……。妄想を抱きつつ見た映画は、俳優引退して靴職人に転向したという手先が器用なひきこもりデイ=ルイスの一人舞台の感がある。彼は際立っていて、まさにサイコパス。レオは“受け”の印象。愛憎、復讐、史実と内容は盛り沢山。ゆえに3時間弱の長尺でもどの要素も薄めだ。それでもニューヨークでは昔あんな事があったんだなぁ、とビックリ。
スコセッシ監督にとって、構想30年のライフワークというだけあって力入ってるし、5年ぶりに映画復帰のダニエル・デイ=ルイスは期待に十分応えてる。ま、彼のサーカスの猛獣使いのような成りとヒゲ面には笑うが、単純な悪役に堕さない演技はさすがだ。もっともレオ様は、顔はドロドロで肝心な仇討ち話&キャメロンとの恋愛も凡庸。そして全編血みどろの戦いで、クライマックスに向かうにつれ、9・11テロを思い起こさせられる。映画の善し悪しの前に、ハッピー気分になりたい年末年始にはふさわしくないと思うけど……。
公開が延期につぐ延期で、やっと観られた! と映画の出来とは別のところで感慨深さを覚えた。肝心の作品は壮大なスケールのセットや衣装、クライマックスの市街戦など見応え十分。だが、ダニエル・デイ・ルイスとレオナルド・ディカプリオの人間ドラマが中途半端に終わっているのが残念だ。テーマが絞りきれずに散漫なので、マーティン・スコセッシ監督の新作としては物足りなさを感じる。注目のディカプリオには拒否反応を示す人も多いようだが、私は頑張っていたと思う。
ストーリー :ストーリー:
保険会社の敏腕調査員ブリッグス(ウディ・アレン)は新任の上司のベティ=アン(ヘレン・ハント)と犬猿の仲だった。だがある日、魔術師に催眠術をかけられて相思相愛だと思い込んでしまう。さらに宝石泥棒が頻発し……。
日本公開: 12月21日
(恵比寿ガーデンシネマ )
上映時間: 1時間41分
配給: ギャガ・コミュニケーションズ
カラー/ビスタサイズ/SRD
さすがに老けたなウディ・アレン、て思ったけれど、元々美男だったりするわけじゃないのですぐに慣れます。慣れ過ぎて世界で一、二を争おうかというシャリーズ・セロンとアレンという超絶ギャップカップルさえ、なんだか自然に見えたりする。大昔の名作にオマージュを捧げてるそうだけど、そんな小賢しさには関係なく笑えて楽しめるってところがアレンの凄さ。特にラストは洒落ててイイ気分。ただ、生まれて初めてアレン作品を見る人は、やっぱりアレンの存在にかなり違和感を抱くかも。
'40年代のニューヨークが舞台。建物やファッション、インテリアはクラシックで、シャレた音楽が流れる。雰囲気だけでも好感度高いが、ウディ・アレンの作は粋なセリフで笑わせる。話の転がし方がいいのだ。で、本作はタカビー女のヘレン・ハントとのボケ&ツッコミが秀逸! 30~40年代の名作映画を引用しているが、その手法がダサく見えないのもアレン流。サラリと登場のシャリーズ・セロンも艶っぽくていい。というワケで、すっかりアレンの映画のまじないにかけられて上機嫌になれた。
1940年のニューヨークを舞台に、インチキ魔術師に催眠術をかけられた男女のユーモラスな恋のゆくえを描いた本作。さすがのウディ・アレンもロマンティック・コメディの主役を演じるには年を取り過ぎてしまったが、観ているうちにアレンならこんなのもアリという気がしてくるから不思議。40年代のファッションや音楽なども、おとぎ話的な雰囲気を盛り上げていていい感じです。いつも外れナシで安心して楽しめるアレンの新作、今回も大いに楽しませてもらいました。
ゴーストシップ
ストーリー :
1962年春、アメリカに向かって旅立った豪華客船アントニア・グラーザ号に突然謎のアクシデントが発生。乗客達は状況を飲み込めないまま血の海でのたうちまわるのだった……。
日本公開:1月11日
上映時間:1時間31分
( 渋谷東急他、全国松竹・東急系 )
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C) 2002 Warner Bros. All Rights Reserved.
(C) 2002 Village Roadshow Films(BVI)Ltd.
この監督の前作『13ゴースト』が見せ過ぎで、お化けの動物園みたいでちっとも怖くなかったので期待してなかったけど、なかなかに怖い。まず、冒頭の船上ダンスパーティーが恐怖を煽る。あまりに優雅でみんなが楽しそうなので、その後に起こるであろうカタストロフとのギャップに恐れ戦いてしまう。すると期待に違わぬスプラッターが展開。それ以降はタイトル通りに幽霊船の話しだが、霊の姿を見せず、その悪意の怖さで引っ張る。とはいえ、心理に深く食い込む怖さとは言えないけど。
豪華客船での大惨事の冒頭に、思わず驚愕しつつ、が、それで船客全員死亡はないだろという謎なシーン。ああ、ホラー嫌いなのに心わしづかみにされちゃったよ。製作は『TATARI』『13ゴースト』のジョエル・シルバー&ロバート・ゼメキス御大のダーク・キャッスル。本作も恐怖に加え、お色気ありで、諸悪の根源はこれだったんかい!?
というツッコミどころまで用意してる。ガブリエル・バーンや『ER』でお馴染みのジュリアナ・マルグリースなどの人間描写が薄いけど、ま、主役は幽霊船だからな。
ホラー好きなので、ジョエル・シルバー&ロバート・ゼメキスによるダークキャッスル・プレゼンツというだけで「観なければ!」という使命感に燃えてしまう。おまけに、題材が“幽霊船”ときた日には、なんとも言えない郷愁&いかがわしさが漂ってわくわく。で、映画も期待を裏切らない面白さ。冒頭から仰天の惨殺シーンでつかみはOK、ストーリーは定石どおりだがそれもまたよし。VFXを駆使した幽霊やらなにやらは迫力満点と、ホラー・ファンにはオススメの一作。
ストーリー :会社を経営する夫エドワード(リチャード・ギア)とその妻コニー(ダイアン・レイン)。ある日、コニーが青年(オリヴィエ・マルティネス)と衝突して転倒、彼の家で手当てを受ける。以来、彼と密会を続ける妻の様子にエドワードが気づき……。
日本公開: 1月11日
(日比谷映画他全国東宝洋画系)
上映時間: 2時間4分
配給: 20世紀フォックス映画
ビスタ・サイズ/ドルビーSR・SRD,DTS
(C)2002 TWENTIETH CENTURY FOX
ダイアン・レインは綺麗だし、オリヴィエ・マルティネスのいかがわしいインテリ・セクシーもぴったり。女房にべた惚れのリチャード・ギアも適度に枯れてて説得力があり、と3人のキャラクターはばっちりで、レインが罪の意識に苛まれながらもマルティネスに夢中になっていくのも共感しながら楽しめました。ところが、エイドリアン・ライン監督は相変わらず大人じゃない(て言うか意図的なんだろうけど)。喫茶店のトイレでの情事って……。ソレやり過ぎだよ。これで一気に引いちゃった。
ダイアン・レインの脚をなめるように撮り、フランス青年オリヴィエ・マルティネスとのただれちゃうよな愛欲の様。さすが『ナインハーフ』に、『危険な情事』のエイドリアン・ライン監督だけに視線がいやらしいよ。が、一番の見どころは寝取られ亭主になるリチャード・ギアだ。常識も節操も何もなくなってきている今の時代、モテ男役一筋の彼が妻に裏切られる男を演じると、かえって物語もリアル。彼が嫉妬にかられて、我を失うシーンは物哀しく見えてくる。でも、結局のところ、ギアはカッコいいんですけど。
『危険な情事』のエイドリアン・ライン監督による不倫サスペンス、しかも主役はR・ギア&D・レインとなると、「今さら感」が満載でさして期待も持てず。だが、これが予想に反してよい出来! オリヴィエ・マルティネス扮する二枚目にまんまとひっかかり、不倫に走るレイン、寝取られ夫ギア共に好演。ラインのストーリー・テリングも上手く、ありがちなドラマだが思わず引き込まれてしまった。やるせなさがつのるラストに、人間って本当に愚かな生き物なんだよね……と痛感。
ストーリー :殺し屋稼業から足を洗う決意をしたフィリックス(ステラン・スカルスガルド)は、子供のような中年男ババ(クリス・ペン)の世話役を引き受ける。だが殺し屋組織はフィリックスが引退することを許さず、殺し屋を差し向ける。
日本公開: 12月21日
(シブヤ・シネマ・ソサエティ)
上映時間: 1時間41分
配給: ギャガ・コミュニケーションズ
カラー/シネマスコープサイズ/ドルビーSRD
どこがイイって明確に伝えづらい作品なんだよなぁ。物語は軽妙でありながらも感動的だし、セリフも含蓄に富んでるし、ギャグが冴えてて、音楽がイイ、キャラもユニークで、衣装もイイし、小道具も、大道具も洒落てるし……。何か一つに絞ってしまうとこの作品の良さを損ねてしまうような気がするのです。でも、あえて言うならラスト・シーンが最高。このシーンでかかるニーナ・シモンの「フィーリング・グッド」という曲を、もう2カ月も聞きっぱなしで感動を反芻し続けてます。
凄腕の殺し屋演じるステラン・スカルスガルドが地味な顔ですっとぼけた味わいを出す。で、彼が面倒を見ることになる世間知らずな男、クリス・ペンがまたすっとぼけ。デブっちょで無邪気な笑顔。ステランとの掛け合いも最高だ。そんな二人を追う殺し屋。演じるポール・ベタニーがカッコイイ。『ロック・ユー』『ビューティフル・マインド』などとは違う、無口な必殺仕事人な役どころは素敵! ハリウッドでは珍重される役者たちが、英国監督の地味な作でイキイキ働いている小粋な映画だ。たまに観るなら、こんな映画が私はいいです。
引退した殺し屋とその弟子、世間知らずの33歳の男、殺し屋の組織が入り乱れて、現実離れした人間模様が展開。オフビートな笑いや思わずホロリのエピソードが盛り込まれた、実に楽しい一作。『ビューティフル・マインド』のポール・ベタニー、『完全犯罪クラブ』のクリス・ペンら脇役もいい味を出しているが、何と言っても主役の孤独な殺し屋を演じたおじ様、ステラン・スカルスガルドがいい! ハードボイルドな雰囲気を漂わせつつ、人生にくたびれたオヤジの哀愁を感じさせてかっこいいです。
似顔絵イラスト:川合夕香
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