「かつてはチンピラや悪役専門だったサミュエル・L・ジャクソン(以下サム)だが、最近は『スター・ウォーズ』の新シリーズでジェダイの騎士を演じるなど、善人役が多い。そんな中、本作ではコミカルな要素を持ちながらもいたってクールなドラッグ製造の天才エルモを意気揚々として演じた。製作もかねた本作への経緯を聞いた。
「この映画の脚本がオレのところにきたのには、ウソのようなホントの話があるんだ。ステル・パブロウはリカーストアに勤めている時、オレをイメージしてこの脚本を書いたそうなんだ。で、彼はオレのマネージャーの連絡先をどうにか手に入れて、送ってきた。で、読んだら面白いから、オレはやろうってすぐに決めたんだ。その脚本の存在を知っているのが世界でまだ数人という段階だったから、いろいろ人を集めなきゃならなかった。それで、成り行きでエグゼクティブ・プロデューサーもやることになったんだ」
大好きな映画の監督
本作の監督は香港出身のロニー・ユー(以下ロニー)。彼の起用にはサムの好みが反映されているようだ。
「ロニーはジャッキー・チェンのアクション・コメディをたくさん作ってきた監督だから、同じジャンルとなるこの映画を作るのに適していると思ったんだ。それに、『白髪魔女伝』を作った監督で、オレはあの映画の大、大、大ファンなんだ!彼は興味深い仕事をたくさんやってきた監督で、しかも英国で教育を受けているからその辺の文化的バックグラウンドも知っていると思ったんだ」と説明した。
キルトの着心地
エルモはスコットランドに憧れ、イギリス行きの飛行機にキルト姿で乗り込む。キルトの着心地はどうだったのだろう。
「初めてキルトを着た時、昔から履いていたようなみょうなしっくり感があった。それにしてもなかなか興味深い経験だったよ。だって、動くたびにケツのあたりにヒラヒラしたものが当たるからね。それになんだか“スーカースーカー”しているし。でも、ウールだからとても厚い布でできていて、ぬくもりが常に中に充満しているという感じだから、予想以上に暖かいんだ」と答え、気に入っているような印象だった。
地で行く役?!
エルモ同様、サムもゴルフが大好き。船の上からブイに向かって打つシーンなどゴルフからみのシーンは、吹き替えなしだった。
「ゴルフクラブの会員でもあるけど、パブリックのゴルフコースでもプレイするよ。セレブ仲間とは限らず、その時一緒になった人とやるんだ。この前なんか12歳の少年や、その辺のオバさんと一緒に回ったよ。そして、よく“『マトリックス』に出てる人だね”って間違えられるんだ(笑)」とか。実はローレンズ・フィッシュバーンもよくサムに間違えられるとインタビューで答えていたことがあるから、兄弟役での出演をしてみるのもいいかもしれない。
そして、サムはエルモのように化学オタクでもあったという。
「オレは子どものころから化学が好きでね。顕微鏡や実験セットをクリスマスにもらっていた。部屋で実験をして、変な匂いを出しては親に怒られていたよ。それで、大学では化学を専攻したから、エルモを演じるに当たって薬品の混ぜ方や器具の使い方などのリサーチは必要はなかったんだ」と、プロフィール資料などに公表されていない意外な過去を紹介した。
「クールで人間性も優しさもない悪役をやるのが好き」と言うサム。ゴルフに化学、そして平気で人を殺し裏切るクールなエルモはまさにはまり役だ。
プロデューサーや監督裏方の仕事
「オレはオレのテイストがあるから、小説やオリジナルのアイデアとかをベースに、一風変わった独立系の映画をプロデュースすることには興味があるけど、監督をしようとは思わないね。」ナニが出演作を決める?
「ストーリーだね。エキサイティングで、興味があって、自分でお金を払ってみたいと思う映画だね。それが最初。で、キャラクターを観て、研究して、今までやったことない役、挑戦できる役、俳優としてやりたいと思う役をやる。だから、脚本を読んで、オファーがきた役よりも別の役がやりたいと思ったら正直にそう言ってみるんだ。だいたい、脚本を読むときは一般客として映画を観ている感覚を大切にしている。この映画が観たいか観たくないかが決め手だね。」
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サミュエル・L・ジャクソン Samuel L. Jackson
1948年、ワシントンDC生まれ。下積み時代に、ニューヨークにある俳優たちが多く住むアパートのドアマンなどの仕事をする。『パルプ・フィクション』に出演後ブレイクし、ドラマ、コメディ、アクションとさまざまなジャンルをこなす。『スター・ウォーズ』のエピソード1と2、『シャフト』『アンブレイカブル』『交渉人』『トリプルX』など、これまでに100本以上のテレビや映画に出演。
『ケミカル51』
薬理学者のエルモ(サミュエル・L・ジャクソン)はドラッグを製造して裏社会で生きていた。ある日、彼は最強のドラッグの開発に成功する。彼は裏社会から足を洗うため、しがらみのないイギリスで処方を売ろうとするが……。
『ケミカル51』 2/1(土)~ニュー東宝シネマ他全国東宝洋画系にて公開/上映時間:
1時間32分
配給: ギャガ・ヒューマックス
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