-まず、出演の経緯を教えてください。
オーディションの時に初めて監督にお会いしまして、「アクション映画を撮りたいんだけど、スタントなしのアクションをやれますか?」と聞かれたんです。それで、「もちろんやりたいです!」と。
-本作はブルース・リーにオマージュを捧げた内容ですが、彼のことはもともとお好きだったんですか?
ブルース・リーはもちろん大好きでしたが、ジャッキー・チェンにも憧れていました。僕が中学生の頃はジャッキー・ブームだったので。その頃から体を動かすことが好きで、ジャッキーを真似てバク転や飛び込み前転、逆立ちなどをやったこともありましたね。
ブルース・リー、ジャッキーに限らず、アクション映画をよく観るんですが、この作品に取り組むにあたってはブルース・リーの作品を全部観直しました。なかでも、『死亡遊戯』は一番好きです。ブルース・リーって、アクションはもちろんすごいんですけど、役者として素晴らしい人なんですよ。
顔の表情が1つ1つ全く違うし、表情1つでどんな気持ちなのかが直に伝わってくるんです! ですから、アクションはもちろん、感情表現も参考にしました。
-スタントなしのアクション・シーンは大変でしたか?
いや、やればできるもんだなぁ……と(笑)。アクションというと、僕の場合は『ウルトラマンガイア』を思い出していただけると思うんですが、あの番組は1年間のシリーズものですし、ケガをしたらシリーズそのものに差し支えるということで、「オレでもできるよ!」っていうシーンにもスタントが入ってくれていたんです。
ですから、プロの動きを間近で見られるという意味ではすごく勉強になったんですけど、役者としては結構悔しい部分があったんですね。だからこそ、今回アクション・シーンを全部自分で演じられたのには、危険ではあったんですが、やはり格別な達成感があるんです。
-どんなトレーニングを行いましたか?
蹴り1つとか、動きそのものを繰り返し練習することもあったんですけど、それよりも柔軟をマメにやっていましたね。どんな動きをするにも柔軟が大事!
それに、痛みに耐えるための気合いをプラスする(笑)。体を短期間で柔らかくする場合、痛みに耐えながら動きを作っていくしかないんですよ。
痛いのを我慢していると、徐々にそれに慣れてきますから。それって、ある意味、自分の可能性を自分で広げていくことでもあるんです。
-スポーツは何がお好きですか?
体を動かせるなら何でも! サッカー、バスケ、水泳、テニス、野球、器械体操……。実は、僕は小学生から中学生の頃まではすごく背が小さかったんです。だから、何をやっても体の大きい子には勝てなかったし、負けたくないという気持ちに体がついていかなかった。
でも、高校を卒業する前くらいにようやく体ができ上がってきて、一気に運動神経がよくなりましたね。そのことがうれしくて仕方なくて、ますますスポーツが好きになりました。
-苦労したシーンはありますか?
一番の大技(空中飛び三段蹴り)をきめるシーンがクライマックスに出てくるんですが、それはリハーサルでもなかなかきまらなくて……。
本番でようやくきめられたシーンなので、映像に残せてよかったなと思います。本番に強いタイプ……というわけではないんですが、本番独特の空気が集中力を一層高めてくれたんでしょうね。
-撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?
すごく温かい現場でした。監督以下スタッフも皆ブルース・リーが好きで、一丸になっている感じ。撮影期間は約1週間で、毎日朝から朝まで撮りっぱなしでした(笑)。最後の方は、肉体の疲労との闘いでしたね。
ほぼ順撮りだったので、主人公が闘い続ける上で重なっていく疲労がリアルに出ているかも。でも、実は終盤では蹴りの形が乱れてしまって、それは悔しいところでもありました。
-主人公の青年・敏幸をどう捉えて演じましたか?
敏幸はほとんど僕の地に近いです。だらしない部分とか(笑)。ですから、彼のことはものすごく理解できましたね。わかる、わかる! っていう場面ばかり。現実逃避型ヒーローというか、普段はボーッとしているけど、芯は強くありたいというのは僕の中でも大事にしている感覚です。
僕の場合、第一印象でなよっとして見られがちで、自分の持ち味を発揮できる場にたどり着くまでに時間がかかることがよくありますから。つまり、僕にとっては、この作品に出演できたことと敏幸の闘いがリンクしているんです。
-敏幸のヒーローはブルース・リーですが、吉岡さんのヒーローは?
僕の場合は1人ではなくて、ブルース・リーとジャッキー以外には織田裕二さん、真田広之さん、堤真一さん……などなど、もうたくさん! ミュージシャンでは、ニルヴァーナのカート・コバーンや甲本ヒロトさん。
彼らは表現者として、純粋にカッコいいなと思います。漫画の世界でいうならば、筋肉マン、キャプテン翼、ドラゴンボール……。熱血だけど、情けないところがあるヒーローに憧れていましたね。
-吉岡さんにとって、この作品はどんな存在になりましたか?
僕のやりたかったことが詰まった作品になったのと同時に、いろいろな課題が見えてきた作品にもなりました。確実にステップアップにもなりましたしね。
吉岡はこれだけ動けるんだなというのを観てほしい気持ちがある一方、今後アクション映画のお話をいただいた時にもっとクオリティを高めなくてはならないという意識もあります。
それに、この作品でスタントなしのアクションが実現したのは、ワイヤーワークがブームになっている中、生身でこれだけできるという訴えにもなりました。観てくださる方が熱くなったり、技を真似したりしてくれたら、こんなにうれしいことはないですね。
-今後はどんな役に挑戦してみたいですか? アクション以外でお好きな映画は?
ヒューマン・ドラマもやってみたいんですけど……もう少し演技の経験を積んでからかな? キャラクターとしては、刑事役をやりたいですね。『踊る大捜査線』の織田裕二さんみたいな役にアクションを取り入れたいな。
好きな映画は『いまを生きる』! 本当に大好きで、何度も観ています。ラストシーンをビデオで何度も繰り返し再生したり(笑)。
あとは初期のディカプリオには衝撃を受けましたね。すごく上手い役者さんじゃないですか。ほかには……『ハートブルー』みたいな男同士の熱いドラマも好きです。
-普段、インターネットは使いますか?
ファンの方が作ってくださったサイトはこまめにチェックしていますよ。やっぱり気になりますもん! ファンの方はこの間の作品をどう思ってくれたかな?
とか。あとは、次のお仕事でご一緒させていただく方のプロフィールをチェックしたり、予習に使っています(笑)。
熱いアクションスター魂を見せつけると共に、最後にはマメなお勉強家ぶりを垣間見せた吉岡くん。質問には誠実かつ丁寧な答えを返してくるし、真っ直ぐにこちらの目を見ながら語る姿が好感度大だし、正真正銘の好青年! しかも、甘いマスクとややギャップのある落ち着いたトーンの声がこれまた響くこと響くこと。お目の高い主婦層を中心に熱い支持を受けているというのも納得……というか、ファンの皆様に脱帽! 普段はボーッとしているけど……なんて謙遜していましたが、いえいえ、かなりのしっかりさんです。そんな彼の(本人いわく地に近い)熱演に、老若男女問わず熱くさせられること必至の本作。「でも、ちびっ子は技を真似しないでね」との談までステキな吉岡くんでした。
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