本木雅弘
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第二次世界大戦前夜の日本、ドイツの新聞記者を装い日本とドイツの最高機密をソビエトに送信し続けた男ゾルゲと激動の昭和初期を描いた歴史超大作。『写楽』や『梟の城』などの巨匠、篠田正浩監督引退作品。
配給:東宝 6月14日全国東宝系にて公開
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製作費20億円を投入した篠田正浩監督の引退作『スパイ・ゾルゲ』。その中で、戦時下の昭和に実在した国際スパイ、リヒャルト・ゾルゲに日本の重要機密を流す新聞記者、尾崎秀実を演じているのが「双生児 GEMINI」以来、3年ぶりの映画出演となる本木雅弘。篠田監督と初仕事にして最後の仕事、しかも英語のセリフもただならぬ量。スマートな印象とは裏腹に、撮影前も撮影中も「不安でいっぱいだった」という本木さんに独占インタビューした。
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Q:本木さんはインターネットはよく利用するんですか?
本木:自宅に(ノートブックを開くアクションをしながら)マッキントッシュのG4が
あるんですけど……どれがオンオフかもわりません。
Q:え!? じゃあ全然使ってないんですか?
本木:いえ。うちの奥さんが利用するので、調べものがある時は彼女に操作してもらって自分は横でちょこんと見ています(笑)。
Q:なるほど(笑)。今回、『スパイ・ゾルゲ』に出演することになったきっかけは何だったんですか?
本木:前作の『双生児』のアフレコを都内の某スタジオでしていた時に、そこのカフェで篠田監督とお会いして、「ちょっと考えていることがあってね…」と軽く話をふられたんです。こちらはもう、「光栄です!」という感じで二つ返事でOKしました。でも、よく話を聞いたらとんでもなく難しい役で、「自分にはとてもできない!」と思いましたよね。ただ、「篠田監督」博識でジェントルマンなのに親近感があったので、 監督にたずさわることによって自分にどんな影響が出るのか興味が湧きました。
Q:どのへんが難しいと思ったんですか?
本木:自分自身、小学校の「社会科」から挫折している人間ですからね(笑)。
自分の演じる尾崎秀実にたどりつくためにゾルゲ事件を調べることから始めなければいけなかったので、スタートラインに立つまでだけで精一杯。篠田監督の最後の作品に参加するからには何か残したいという欲も出てくるし、ましてや慣れない英語のセリフがかなりありましたし……試練でした。
Qどのように英語のトレーニングをしましたか?
本木:イギリス人の先生がしばらくついてくれて、あとはCDに台詞を吹き込んでもらい それを繰り返し聞いたり、書いたりして覚えました。
Q:その成果があったのでは? 本木さんの英語を篠田監督もゾルゲ役のイアン・グレンさんも誉めていたと聞いています。
本木:いやぁ、とんでもありません…。実際の尾崎さんはドイツ語もこなした国際人で、自分のような硬い印象ではなかったと思います。
Q:イアンさんはどんな方でしたか?
本木:彼はとても賢くてハッピーな人でしたね。それに欧米の俳優さんは自分に甘くないです。
タイプライターで毎日ブラインドタッチの練習をしたり、移動に時間がかかってもいいからジム付きのホテルをリクエストして体型を維持したり。あと、僕は残念ながら聴けなかったんですけど、地方ロケの時にホテルの中庭でスタッフのバーベキューパーティがあって、そこで劇中で歌う「オー・ソレ・ミオ」を練習がてらということで生で歌ってくれたらしいんですよ。練習をそのままパフォーマンスにしてしまうあたり、やっぱり違いますよね。
Q:戦争が背景になっているこの映画が公開という時に、また大きな戦争が起きてしまいましたね。
本木:本当ですね。撮影当時、世間はサッカーワールドカップに盛り上がっていました。その同じ街で今度は反戦デモが行われている……。常に変化していく時代のはかなさを感じますね。この映画は、「平和」という普遍的な願いについて考えると同時に昭和20年代の日本の風景や文化が楽しめます。…なんてんて言ってますが、自分がちゃんとこの映画で役割を果たせたのか、考えると情けなくて眠れなくなるんですよね。
時間がオーバーしているにもかかわらず、「今日の取材はこれで最後だから平気ですよ」と一つ一つ丁寧に答えてくれた本木さん。実在した故尾崎氏への敬意を忘れず、最初から最後までとにかく謙虚でこちらが恐縮してしまうほどだった。「まだまだ伸び悩む37歳なんです。」と話す彼自身、自分に絶対に満足しない、「自分に甘くない俳優」なのだ。
『スパイ・ゾルゲ』は6月14日(土)より全国東宝系で公開。
(インタビュー:安田佑子 )
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