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ただ“ありがとう”っていう言葉だけじゃなくて、なにかきちんとしたことを言いたかったんだ
 『マトリックス
リローデッド』の中でも最も激しい戦闘シーンの撮影が終わると、この映画の主役である38歳の俳優----キアヌ・リーヴスは、撮影に参加した12人のスタントマン全員にハーレー・ダヴィッドソンの新車をプレゼントした。
これについて、「映画の長い歴史の中でも、最高にすごいアクション・シーンのひとつに挙げられるような撮影に力を貸してくれたわけだから、ただ“ありがとう”っていう言葉だけじゃなくて、なにかきちんとしたことを言いたかったんだ」と最近のインタヴューで打ち明けたキアヌ。ただし、この事実を最初に公表したのはキアヌ本人ではない。『リローデッド』のプロモーション中に、共演者のジャダ・ピンケット・スミスがばらしてしまったのだ。ことの詳細を尋ねられたキアヌは、その気前のいいプレゼントについて率直に答えてくれた。真剣な眼差しで恥ずかしげに話す彼の言葉を借りれば、
「３週間の準備期間と１ヵ月に及ぶ撮影期間中、毎日のように殴られ続けたスタントマンたちの努力は、まさにそのプレゼントにふさわしいものだった」のだ。
「２人のエージェントにつかまれたネオが、バック転をしてそいつらの頭を殴る、っていうシーンがあって……」
黒のスラックスに赤茶けた色のＴシャツを着こなし、その上に紺のウィンドブレーカーをまとっているキアヌが話を続ける。「そのシーンで（スタントマンの）彼らは21回も床に叩きつけられることになったんだけど、僕が“もう一度やりたい”って言うたびに、彼らは嫌な顔もせずにまた撮影に挑んでくれた。みんな協力的で、誰も力を惜しんだりはしなかったね。全員が一丸になってこの撮影をこなしたんだ」（プレゼントをあげるという）サンタクロース役をやるのは楽しい経験だった、と打ち明けるキアヌ。「何ヵ月経っても（思い出すと）楽しい気分になれるね」と話す彼の顔からは、今でも笑みが絶えない。「ベッドに入ったときには、“あぁ、（いい行いをして）よかった。ハ！ ハ！ ハ！”っていう感じさ」。もちろん彼にはそうした感謝の気持ちを形にするだけの経済的な余裕もある。５億ドル（約600億円）を稼ぎだした『マトリックス』の続編２作に主演するために、彼は3000万ドル（約36億円）もの出演料を受け取ったと言われている。となれば当然キアヌには、仕事仲間たちにそうしたプレゼントを贈るのに十分なばかりか、自分のバイク・コレクションにさらに新たなアイテムを追加できるだけの余裕もあるわけだ。
キアヌには、製作の最初の段階からウォシャウスキーが『マトリックス』を３部作にしたがっていることがわかっていた。「１作目の撮影が終了したときに、監督の二人が２作目のために考えているイメージやセットについて話し合っていたからね」と振り返るキアヌ。実際にウォシャウスキー兄弟が３作目までの脚本を仕上げるまでには、その後１年を要した。そしてその後さらに、２作の続編を続けて撮影するためにオーストラリアでほぼ１年を過ごすことになる（ただし『リローデッド』中の14分間に及ぶカーチェイス・シーンは、カリフォルニアのアラメダで撮影された）。
キアヌ・リーヴスが『マトリックス』の続編に出演することにしたのは、二人の監督が『リローデッド』のために書き上げた脚本が気に入ったからだった。ウォシャウスキー兄弟は、意志の自由、運命、選択、といった哲学的な側面を１作目に続いて更に深く掘り下げていた。物静かで端正な顔立ちのこの俳優は、すでに一度、続編に出演するだけで大金を手にできるチャンスを断っている。そのオファーは、設定をバスからボートに置き換えただけの『スピード２』への出演依頼だった。この映画の結果
「本当はまたあの役をやりたかったんだけどね。監督のヤン・デ・ボンとサンドラ・ブロックとまた一緒に仕事をしたかった。あの作品はとても面白い映画になり得たと思うんだけど、でも僕は脚本にピンとこなかったんだ。それに僕は『チェーン・リアクション』をやり終えたばかりで、しかもそれがあまりにもひどい体験だったから……」
「でも『マトリックス リローデッド』は……」と話を続けるキアヌ。「いろいろな可能性に挑んだ野心的な作品だからね。そしてウォシャウスキー兄弟は、見事にそれを成し遂げたと僕は思っている」。
（アンジェラ・ドーソン／訳 訳 五十嵐哲）
さらに詳しいインタビューは「月刊FLiX」8月号（全国書店にて発売中）に現在掲載中
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