珍品映画座談会　入門編

今　中山さんはベン・アフレックの映画はどれも珍品だと（笑）。

相馬　言われてみるとそうかも。アメリカで公開された、ジェニロペと一緒の『ジリ』も珍品らしいね。

中山　それ、来年の間違いなくラジー候補でしょ！

相馬　どんな映画かと思って「IMDB」調べてたら、いまだかつて見たことがない低い星採りの点数がついてた……。

中山　アメリカ人もバカじゃないんだね（笑）。

今　とんでもない映画がボックスチャートの1位になる割にはね。

中山　これはだめだろうという映画には気づくんだね。今年のラジー賞には、是非ふたりそろって授賞式に出ていただきたいものですね。

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出演： ベン・アフレック, モーガン・フリーマン 監督： フィル・アルデン・ロビンソン 「ジャック・ライアン」シリーズの映画化第4弾。中東戦争で紛失された1基の核ミサイルが引き起こす第3次世界大戦の危機。

今　ベン・アフレックのいちばんの珍品は？

中山　最近だと『デアデビル』かな。

相馬　個人的には、珍品というよりも単純に面白い映画だと思うけど。

中山　じゃあ、『トータル・フィアーズ』は？

相馬　えっ、それも意外と面白かったけどなぁ。

中山　面白いんだけど、風上にいたから核から助かったてのは……。ベンのせいじゃないんだけど、ベンが出ると全ての映画が大味になるんだよね。

今　確かに！

相馬　彼の演技指導って、ジェニロペがしたんでしょ（笑）？

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出演：ジェニファー・ロペス, ビリー・キャンベル 監督：マイケル・アプテッド 幸せそうな家庭に潜んでいた夫の破滅的な暴力。逃げ場のない恐怖が妻と子をおそう、サスペンス・スリラー。

中山　ベッカム夫妻みたいに再教育してるんだよ。やれやれだね。

相馬　でも彼、前に取材したけどいい人だったよ。

中山　面白味があるよね。第一、悪いヤツだったらジェニロペにだまされたりしないはず（笑）。

相馬　前にジェニロペに取材した時、「『ザ・セル』みたいなのは好きじゃなくてラブ・コメディが好き」って言ってて、オレが愛してやまない『ザ・セル』を何言ってるんだと思った（笑）。で、愛するラブ・コメディね、と思って『ウェディング・プランナー』を観に行ったら、あんな映画でしょ。

中山　あれはツライ。

相馬　『イナフ』は珍品としてよかったですけどね。

中山　よかったですね。なぜあのラストを宣伝で隠す？　と思った。売り方に失敗したね。

今　そういう解決の方法がモラルとしてありなのかって、仰天でした。

中山　あれは笑ってあげなきゃ！

今　珍品好きとしては、ベンアフ＆ジェニロペの今後の動向に注目しないといけませんね。

中山　『ジリ』はぜひ、ラジー賞発表の前に日本で公開して欲しいですね。話題についていけないと面白くないから！

中山　『トゥームレイダー２』は珍品になるかなと期待してたけど、ちょっと真面目で面白くなかった。

相馬　真面目に作ってて、よくできてるよね。1作目よりもけっこう面白い。

中山　最初のサメのシーンには来たか！　と思ったんだけど。

相馬　うん。あとバイクで万里の長城を飛ばすところね。

中山　でも観てるうちに、なんだ、ヒロイン意外とまともじゃんと思った。それじゃ、面白くないじゃんねぇって、なんか最近の『シベ超』見てるような寂しさをちょっと感じた。

今　こんなまともな映画作っちゃってっていうがっかり感ですね（笑）。そういえば、大したラブシーンじゃないのに、ヤン・デ・ボン監督はかなり何度もアンジェリーナ・ジョリーにダメ出ししてたらしいですね。

中山　いいね！　下半身直結（笑）。やっぱ性に開放的なオランダ人だから。

相馬　でも、ヤン・デ・ボンってあまりエロが達者な人じゃないですよね。むしろガキのレベルで終ってるというか。レニー・ハーリンなんかもそうだけど。でも、そういう人たちが思い込みで作っちゃうと、またトンデモない映画ができちゃうんだよな（笑）。

今　レニー・ハーリンは珍品系？

相馬　彼はいっぱいありますよ。ありすぎて困るくらい。全部、そうなんじゃないかっていうぐらい。

中山　女の選び方からして間違ってますよね。デカい女ばっか好きだし。そこは私らには入れない領域がある。

相馬　（笑）。『ドリヴン』は素晴らしい映画でした。

中山　ほんとほんと。公道でF1カー走らせて、マンホール飛ぶのはいいんだけど、女の人のスカートがめくれたり、バス停のガラスがガシャンと割れるとか、細かいところがね（笑）。

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出演：シルベスター・スタローン、キップ・パルデュー 監督： レニー・ハーリン かつての花形レーサーが、若き才能あるドライバーの指導をするよう依頼されるのだが…。スタローンが脚本まで手掛けた、「ロッキー」のカーレース版。

相馬　しかもあれ、メーター310キロは出てますからね。『TAXi』より速い。

中山　まず、ヘルメットも何もかぶってないのが笑っちゃう。蚊とか色々飛ぶから目開けてられないし、ドライアイ状態だよ（笑）。あんな運転してたら、首にGかかるからムチ打ち間違いないし。

相馬　それで、あれだけ豪快に街を破壊しておきながら、罰金25000ドルだけで済んだところがまたね（笑）。それだけで次のレースに平気な顔して出場してる。

中山　『トゥームレイダー２』に戻っちゃうけど、中国人一家が船で液晶TV見てたでしょ。あれはすごいな。

相馬　あんなボロい家に住んでてね。

今　そういう細かいところに、珍品心がくすぐられるんだ。

相馬　そう、ヘンな所に目がいっちゃう。基本的にはのんべんだらりと観てるんだけども、なんか気になっちゃうんですよね。

中山　流せないよね（笑）。

今　ラリー・クラーク監督の『Ken Park』も下半身直結系の珍品だそうで。

中山　これこそエロエロ、ヤリヤリ、ナマナマ（笑）。おまけに監督がこの時の黒人女優とできちゃったらしい。

相馬　ラリー・クラークって、いやらしいシーン撮ってもイマイチだよね。

中山　自分で多分、ヘタクソだと思ったんでしょ。だから今回はナマで見せちゃってるんですよ。私的にはオススメなすごいシーンがあるんだけど、ベネチア映画祭で上映された時は、観客から「ノ～」って声があがってました。あのイタリアの人たちでさえも！

相馬　すごい。『キリング・ミー・ソフトリー』を超えてますね。

中山　そこだけがね（笑）。

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出演：ヘザー・グラハム, ジョセフ・ファインズ 監督： チェン・カイコー ある日突然出会った男性に惹かれ、愛しあうことになった女性が、彼がレイプ魔であるということを知り愕然とする。

今　『キリング・ミー・ソフトリー』もチェン・カイコー監督、どうしたの？　って感じの映画でしたね。

相馬　根本的に何か間違ってるって気がする。でも、『キリング・ミー・ソフトリー』は、観終わった後にいろんな人と話してると、非常に話しが弾むんですよね。

今　どういうところで？

相馬　まず、冒頭からヘンだよね。いきなり喘ぎ声から入って、山が重なるように映って……って、これは何の頂きを目指しているんだろう？　みたいな（笑）。

今　そんなところにメタファー、持ち込まれてもねぇ。

相馬　だけど、マズイことに話し合っているうちに、もう一回見たくなってくるんですよねぇ。

中山　そうなんですよね、全然楽しい映画じゃないんだけど。多分、『シベ超』もそうなんですよね。『シベ超』も『北京原人』も、冷静にTVとかで見ると本当につまんないと思うんだけど、伝説化して話がひとり歩きしてる。そうなると、珍品としては素晴らしいですね。『北京原人』はもう、珍品の殿堂入りです。

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出演：水野晴郎, かたせ梨乃, 監督：水野晴郎 映画評論家・水野晴郎デビュー作。満州とモスクワをつなぐシベリア鉄道を走る列車内で起きる連続殺人事件を水野晴郎扮する、陸軍大将が解決していく。日本を代表するカルト映画のひとつ。

相馬　『シベ超』も珍品の殿堂だね。

今　珍品好きなら一度は観なければいけない映画ですね。

中山　意外にこういう話聞いて見ると、つまんなかったりするんだけど（笑）。

相馬　面白いと思って見ると、けっこう肩すかしを食らうから。

今　期待せずに何気なくTVで観ちゃうのがいいのかな？　前に普通にTVをパッとつけたら、原人が走ってる場面が映ってて、スゴイなーと（笑）。

中山　社会人競技会でね（笑）。実はあれ、最初はオリンピックの設定だったんですよ。製作サイドも、さすがにそれはムリと思ったらしい。

相馬　オリンピックで金メダル独占するとかでしょ？

中山　そもそも、中国政府が合作を断った映画ですからねぇ。邦画でいうと、珍品度が高いのは断然、竹内力ですね。

今　竹内力は珍品が多そうですね。

中山　要チェックですよ。もちろん、ちゃんといい映画もあります。あとは哀川翔。『ゼブラーマン』の哀川翔は最高ですよ！

中山　最近のＢ級映画とか珍品映画って、なんか間違えてるって気がしますね。

相馬　確信犯的に作って、可愛さだけで売って、映画としては全然成立してないものが多い。そういうのは、やっぱり見てて腹立たしい。

中山　珍品映画といっても、映画として成立してるっていうのは大前提ですね。少なくともお金払って見てもらうんだから、それに見合うものを作らないと。

今　でも、一般の映画ファンはそういう間違ったB級映画、珍品映画を「かっこいい」とか「おしゃれ」とか思ってるんじゃないでしょうか。

相馬　まず、作った人間がＢ級とか珍品をうたってるようなのはダメですね。やっぱり珍品は、一生懸命やったあげく変なものができちゃった、というのでないと。

中山　そうそう。一流のエンターテイメントを狙って本気で作ったのに、外しちゃったっていうのじゃないとね。

相馬　インテリがバカを装ったりというのはダメだよね。それは見破らないと。ティム・バートンぐらい、自分の世界を大金をつぎ込んで見せてくれるんならいくらでも許せるけど、中途半端なのはよくない。あとは上映時間が２時間を超えるのもダメ！

中山　珍品は、すっきり１時間40分ぐらいで終わってくれないとツライですね。

相馬　２時間超えると、何度も観ようという気がしなくなるんですよ。

今　２時間を超えると、珍品への愛も色あせるわけですね（笑）。