森田まほ
映画が好き!現場で働きたい!その思いがこうじて単身アメリカ、ハリウッドへ渡り、現場でインターンとして日夜現場を飛び回る日々であったが、ある日アメリカ人の青年と結婚。その後予定外の妊娠をするが、無事出産。現在はグリーンカードを取得すべく待機中。 |
ガタガタのカートですっかりつわり再発の私は(よく、ごはんのにおいで、もよおす、とか言うでしょ? でもあの頃の私は、もう、飯とかそういうのとわず、いつでもどこでもゲロってたんですわ)
「ストップストーっプ!」と荷物カートをトイレで止めた。
「気持ち悪い…」
ユナイテッド航空兄ちゃんは心配してそうな顔しつつも、「おっせーんだよ! 飛行機でんぞ!」オーラめらめら。しかたないじゃん妊婦なんだからよお。
とりあえずことを済ませて、よっこらせっとカートに腰を下ろし、おらー! 押せー! と、私たちの最強タッグは出国カウンターへ急いだ。日本人の女を乗っけたカートをがらがら押すユナイテッドの兄さん。あきらかに、おかしな絵だ。ありがとう。にいちゃん……。
アメリカ人の優しさに改めて感動していると、兄ちゃんのウォーキーに連絡が入った。
「OH!! よかったー。飛行機出発遅れるみたいだからー。僕はここまででー。」
タッグ解消。あっけねえ。
でも、とにかく、出国カウンターまで送ってくれてありがとう。ちょっと余裕が出たわ。と、ちんたら、セキュリティーチェックをくぐっていたら。
「ヘイ!!」
なんだよ、なんだよ。つぎはなんだよー!
ガタガタカートで多少おけつを痛めていた私は、イラつきながら立ち止まった。
「なんだよー」
私の前に立ちはだかるは、でけえブラックの空港職員。ひょええ。
「これはなんだ?」
そいつの右手にあるものをみて、私はさらに、ひょえった。それ、私のお気に入りの超ジャイアント水鉄砲なんすけど。
そうなのよ。そいつ、水鉄砲もってこれはなんだ? とか聞いちゃってんのよ、うわっはっは。だせー!
「おう。それは一目瞭然。ウォーターガンね。ユーノウ??」
「NO!!」
「のう?」
おっさん、水鉄砲知らんのかーい? それね、別にリアルな銃っぽいやつじゃないのよ。もう超ふっつーーーーーの水鉄砲。ただ超特大なだけ。
「ちょっとーそれ、ほんとただの水鉄砲なんだけどー。スーパーで20ドルもしたんだからねー。返してよー」
「NO!! これはもってけない!危険!デンジャラス!この液体はなんだ?」
前の日遊んでたから、水が残ってただけだよーくそじじー。
「ウォーター!!ワラ!ワラ!ノープロブレム!」
「NO!」
こ、こここんなに、ばかばかしい話聞いたことないっつうねん。こんな、やわそうなガールが、水鉄砲もってて(超特大だけどね)なにが不満なんだー。返せー返せー!
「もうせっかく、ここまでユナイテッドの人が送ってくれたのに、ホントに乗り遅れたらどうすんのよー!」
「NO!」
「アイムプリグナントー!」
「ノオォォォ~!」
な、なんてこった。私妊婦です!の切り札すら効かない……。それでも、超特大水鉄砲をかなり気に入ってた私は、あきらめ切れずに交渉を続けた。
「それ、本当に水鉄砲なんですー。プリーズープリーズー」
もはや懇願。
しかし、ボブサップ(みたいだった)には勝てず。結局、没収されちまったんさ。くやしー!!!!
あの、うれしそうな奴の顔は忘れないわっ。ハンカチ噛み噛み、離陸したあの日を思い出す。
その後LAXの空港職員が没収品のドラッグを横流ししてた事件を聞いた。あの野郎絶対私の水鉄砲こどもの土産にしたね。と確信した私だったのでした。
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