村上龍の同名ベストセラー小説を『木曜組曲』の名匠・篠原哲雄が映画化した『昭和歌謡大全集』。随所に昭和の大ヒット歌謡曲を挿入しながら、少年6人vsオバさん6人の壮絶な殺し合いバトルが描かれる本作で、少年たちを演じた斉藤陽一郎(役名:ヤノ)、村田充(役名:スギヤマ)、近藤公園(役名:カトウ)の3人が大集合! 松田龍平、池内博之、安藤政信を含む少年チーム6人のこと、時に楽しく、時にハードだった撮影の裏話……などなどをボケ、ツッコミ、真顔ジョーク、そして作品に対する熱い思いを飛び交わせつつ、ワイワイと語ってもらった。
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ある日、通りすがりの主婦ミドリ(内田春菊)を殺した少年スギオカ(安藤政信)。彼が犯人であると突き止めたミドリの友人たちは、仇を取るべくスギオカを殺す。それを知ったスギオカの友人イシハラ(松田龍平)たちは……。 |
――撮影開始の時、皆さんは初対面だったんですか?
斉藤:僕は初対面でした。
近藤:僕も。
村田:僕は池内くんと安藤くんのことは以前から知っていました。でも、2人と龍平くんに会ったのは今回が初めて。
――チームワークがすごくよかったそうですね。
斉藤:皆が集まっているのに雨で撮影ができないという日が何回か続いたんですけれど、当然待ち時間が増えるわけじゃないですか。その間に皆でくだらない話をしている中で、6人の関係性が築き上げられていきましたね。
村田:学級委員長タイプが誰もいないのがよかったよね。フラットな感じで。
斉藤:うん。誰も引っ張らないし、誰も引っ張られない。そのへんは映画の6人とすごくリンクしてるんです。
――6人の中で役割分担のようなものはあるんですか?
斉藤:特にはないんですけれど、村田くんはずっと面白いことをしゃべってたよね。ひたすら現場を温める係が村田くん。
村田:そうだね。僕は注目されるのが苦手だから、いつも脇で盛り上げようとしてるかも。
斉藤:龍平とかが温度が低い分、村田くんが温める(笑)。
――近藤さんは?
近藤:僕は……盛り上げないです(笑)。皆に乗っかっていく感じ。そういう意味では、役柄と一緒でしたね。
斉藤:でも、意外なことで盛り上げるよね。実は、握力が強い! とか。実は、筋肉質! とか。
近藤:(笑) 安藤くんが現場にボクシングのグローブを持ってきていて、それで空き時間に皆で遊んでいたんですよ。で、そんな話に……。僕、キャラクター的には華奢に見られがちだから。
村田:実は、ガタイがいいんだよね。
近藤:うん、意外とおデブ(笑)。
――篠原監督と皆さんでカラオケに行かれたんだとか。
斉藤:台本読みの日に、監督から「この後、時間が空いている人はカラオケに行きましょう」って誘われたんです。
近藤:僕は行ってないんですよ。
斉藤:そうだったよね。安藤くんと近藤くん以外の4人が行ったんだったかな。監督がそれぞれの声の感じを知るという意図もあったんですけれど。
村田:でも、結局、監督が一番はしゃいでたよ。
斉藤:そう。あのオヤジが(笑)。「リンダリンダ」を歌ってね。
村田:僕たちが皆で監督を盛り上げるという異様な図だった。
――斉藤さんと村田さんは何を歌われたんですか?
斉藤:僕は「骨まで愛して」を歌いました。映画の中で歌う曲だったし。
村田:僕は何を歌ったっけなぁ。森田公一さんの「青春時代」とか、懐かしいのを歌った気がします。
斉藤:演歌も歌ってたよ。
村田:そうだっけ? そういえば、村田英雄さんの曲とか歌ったかも。
近藤:僕がその場にいたら、監督と一緒に「リンダリンダ」を歌いたかったな。
――映画の中の6人の会話って、ものすごくナチュラルですよね。全部アドリブかな?
ってくらい。
斉藤:基本的には台本に忠実なんですが、アドリブは多かったですよ。6人もいると必ずしも予定通りにはいかないし。本番で誰かが何かをしたら、それを拾う……といった感じで。
――印象深いアドリブが生まれたシーンは?
斉藤:何だろう? ムチ?
村田:ああ、ムチ。
近藤:ムチ。
――ムチ?
斉藤:3人がボンデージファッションで歌うシーンがあるんですが、ムチで軽く叩き合うんですよ。でも、本番で思いのほか強く叩き合っちゃって。“パッチーン!!”と。だから、あれはリアルな反応(笑)。あとは、6人で鍋をするシーンもアドリブが多かったよね。
村田:あれはアドリブだらけ。
斉藤:龍平の「肉いきまーす」ってのもよかったしね。
村田:画面に映ってないところまでアドリブだらけだった。
――撮影していて一番楽しかったシーンは?
斉藤:僕たちが河原を歩いていて、その頭上を飛行機が低空飛行していたシーンかな。
村田:ああ。
近藤:怖かった。
斉藤:笑っちゃったよね。
――あのシーン!
やっぱり怖かったですか?
斉藤:怖いっていうか、迫力がありすぎて。
村田:何となく逃げてる自分に笑ったもんね。
近藤:あれが本当に落ちてきたら普通に死ぬな……っていう状況がおかしくって。ちょっとハイになりましたね。
斉藤:テイクも結構重ねたし、撮ってて楽しかったな。
村田:でも、このシーンって、安藤くんがもう殺されちゃってるじゃん。6人のシーンを言っとこうよ。
近藤:そうか。
斉藤:そうすると、やっぱり鍋をするシーンだよ。
村田:鍋だね。
斉藤:鍋のシーンということで(笑)。
――逆に、一番大変だったシーンは?
近藤:やっぱり「骨まで愛して」……。
斉藤:「骨まで愛して」かなぁ……。3人がボンデージファッションで「骨まで愛して」を歌うシーンですね。本当に寒かったんですよ。ありえないくらい海風が冷たくて。しかも、太陽が上がりきる前までに撮り終えなくちゃいけないという時間との戦いもあって。で、網タイツじゃないですか(笑)。
村田:日の出と共に現場に来て、日の出と共に帰る……みたいなね。撮影も後半の方だったし、体力的にもちょっとキツかった。
――歌やダンスに関しては随分練習なさったんですか?
村田:「骨まで愛して」を歌っているのは陽一郎だけで、僕と近藤くんはダンス担当なんですけれど、あの踊りは当日のノリでやったよね。
近藤:ねっ。
村田:講師の方はお見えになっていたんですけれど、やっぱりノリで。一応ダンスレッスンの時間はあったんですけれどね。
斉藤:僕は手の動きとか指示されたよ。
村田:陽一郎はそうだったよね。僕たちは自分で勝手に(笑)。
近藤:シナシナしたりね(笑)。大まかなフォーメーションだけは決めていただいたんですけれど。
村田:ボンデージファッションなのに、近藤くんはお風呂で体にお湯をかけるような仕草をしたりね(笑)。
近藤:そう。村田くんがキャットウォークとかしていて“洋”な雰囲気だったから、僕は“和”な感じで。
村田:そうだったの!? 今、初めて知ったよ。
――ボンデージファッションに関しては……。
斉藤:うーん。僕の中にはやっぱり“ない”ものなんで……貴重な体験でしたね。その後ハマったりっていうのは全くないです。
村田:僕は嬉しかった(笑)。衣装合わせで着てみた時に、「これは俺がもってくぞ!」と。だから、僕だけメイクしてもらったの。
斉藤:完璧なメイクをね。
村田:完璧にね! ニップレスにもこだわって。「十字架型にしてください!」みたいな。SMの雑誌を見ながら研究したからね。
斉藤:そうだよね! 雑誌を持って来てたよね。しかも、家にあったんでしょ?
村田:普通にね! 「コレを持っていって参考にしようかな」くらいの気持ちで持って行ったから。そういうところで僕は輝かないとね。僕のスギヤマは成立しない。
近藤:おっかしー(笑)。
村田:演技で頑張れよ! ってな。近藤くんは?
近藤:僕はボンデージには抵抗なく……。今までも、舞台では裸に近い姿になったこともあるんで……嬉しかったというか。
斉藤:嬉しかったんだ(笑)。
村田:一番喜んでたもんねー。
近藤:そんなことないよ~。
村田:あのシーンを境にちょっと距離を置いたもんねー。……いや、ウソです。そういえば、陽一郎は生まれて初めてムダ毛処理をしたんだよね。アレ? これ、言っちゃダメだった?
斉藤:いや、いいよ。うん、した。……あれはやっぱりむなしかったな。
村田:ボンデージって着ちゃえば楽しいけれど、着替えてる時は切ないよね。
近藤:僕も着替えてる姿を鏡で見ちゃった時にはヘコみました。全部着ちゃうと開き直れるんだけれど。特に網タイツとかね……。
村田:網タイツね~。
斉藤:網タイツね~。
――完成版は皆さん一緒にご覧になったんですか?
斉藤:僕と近藤くんは一緒に並んで観たよね。
村田:僕はその後で。
――感想を言い合ったりしました?
近藤:号泣していたオバさんがいて……。
斉藤:そうなんだよね。そのインパクトが強くて!
――号泣していたオバさん?
斉藤:僕たちが観た試写の時に、エンディングテーマが流れると同時に「ウヮーン!!」と号泣し始めたオバさんがいたんですよ。感極まっていらっしゃったんですけれど。
村田:実は陽一郎のお母さんだったんだよね。
斉藤:違うから(笑)。そのネタ言うの何回目だよ! しかも、あの場にいなかったじゃん。……そう、だから、観終わった後は、そのオバさんの話で持ちきりになっちゃいました。そういう反応も嬉しかったですけれどね。
――では、最後に、これからご覧になる方々にメッセージを。
村田:13回観てください。
斉藤:何で13回なの?
村田:1回目は普通に。2回目以降の12回は登場人物を1人ずつ追いかけて観てください。
斉藤:ああ、僕たち6人、オバさんチーム6人で12回ね。
村田:それぞれがコソコソ、コソコソ面白いことをしてるので。そういうのを観てほしいですね。セリフのない時もいろいろしてますから。
斉藤:とにかく、どこを観ても面白いもんね。
近藤:そうそう。
――なるほど。13回ですね(笑)。いいコメントをありがとうございました。
一同:ありがとうございました!
(インタビュー・文:渡邉ひかる)
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