T:たぶんそれは僕の家族や友達だと思うな。主人公のレッドは子供の頃、親に捨てられたという哀しい経験を持っているんだ。彼の家族は少年のためを思ってしたことなんだけど、彼にとっては少年時代、親に見捨てられ一人で生きていかなくてはならなくなったんだ。僕自身そういう経験はないけど、とても共感を覚えたよ。人には自分を守らなくてはいけないという守備本能があると思うんだけど、大人になるにつれてその壁を壊し、柔軟な人間関係を築く必要があると思う。そしてより自由な環境の中で自分を生かしていくべきなんだ。僕自身日々、それを学んでいているんだよ。そしてそんな僕を常に支えてくれる家族や友人たちがいるんだ。
Q:ご自身で競馬をして、勝ったことはあるのですか?
T:少年時代ロサンゼルスに住んでいたとき、親が競馬好きだったから、家族で行ったよ。 L.A.サンタアニタという映画にも出ていた競馬場の近くに住んでいたから、そこに行っていたんだ。もちろん子供だったから馬券を買うことはできなくて、家族に買ってもらったよ。それに大金を賭けたこともないから、ものすごく儲かった経験はないよ。でも、とても楽しかったという思い出はあるよ。
Q:本作と『25時』という作品で、エグゼクティブ・プロデューサーとして参加されていますが、俳優が自分の出演している作品やその他の作品において製作総指揮をとることの利点とは何ですか?
T:僕は映画が好きだし、映画作りも好きなんだ。映画作りに関してはまだまだ勉強中の“スチューデント”さ。それと幸せなことに、今の僕の立場は現場で生の映画作りの様子を見聞きできるということかな。つまり、俳優という仕事は学ぶ場でもあるということなんだ。そのお陰で僕は映画作りとはどういうことなのか、大体の知識はついたと思うよ。僕にとって映画作りの一部になるということは、大きな喜びなんだ。
Q:動物との共演で難しかった点はありますか? また、どのような点を意識されましたか?
T:馬との共演はとても楽しいものだったよ。僕は前にも『楽園をください』という映画で馬に乗ったことがあったんだ。そのときもそうだったけど、馬はじっとしていることができないんだよね。でも、精神的なつながりを持てるという点で、心を安らげてくれる良い相手役と言えるんじゃないかな。
Q:馬とのコミュニケーションはどのように図られたのですか?
T:馬とは自分のしぐさ、つまりボディーランゲージで会話するんだ。本当にわずかな体の動きが馬に伝わって、また馬が返してくるんだよ。『楽園をください』の撮影のとき、本物のカウボーイの人がコーチだったんだけど、彼が言うには乗馬をうまくなりたいなら経験以外ないと教えられたよ。とにかく馬のそばにいて、何度も練習をし、本能的に馬に乗る力を身につけるしかないんだ。
Q:馬との共演で、馬のこの演技にはかなわないと思ったことはありますか?
T:この映画のタイトルは『シービスケット』で、『レッド・ポラード』じゃないからね(笑)。彼の演技が素晴らしくても、全然気にしないよ。
Q:馬とは目と目が合った瞬間から心が通じ合ってしまったのですか?
T:実はシービスケット役は10頭近くいたから……どうだろう(笑)。馬たちはみんなそれぞれのシーンに合うように、違った性格を持っていたんだ。例えば寝る場面にはよく寝る馬を、食べる場面にはよく食べる馬、他にも気の荒い馬というように、使い分けていたんだ。それと、詳しくはわからないんだけど、馬にもどうやら就業時間や、一日に走っていい距離の制限があるんだ。だからシービスケット役は1頭というわけにはいかず、10頭近くもいたってわけさ。
Q:ゴールデン・グローブ賞やアカデミー賞といった「賞レース」に勝つ自信はありますか?
T:賞を取る取らないといったことは仲間うちで話題にすることはあるけど、大っぴらに話すことじゃないと思う。僕はこの映画が素晴らしい作品で、多くの人が気に入ってくれればそれで十分なんだ。だから僕にとって賞はあまり意味の無いことなんだ。
Q:ゲイリー・ロス監督と一緒にお仕事されるのは二度目ですが、監督自身の魅力と作品の魅力について聞かせてください。
T:初顔合わせの『カラー・オブ・ハート』は監督にとって処女作だし、僕ももう少し若く未熟だったから、お互い緊張していたと思う。今回はもちろんハードワークではあったけど、いい意味での緊張感を保てたと思うよ。常に情熱を持って仕事をしているからね。また、いろいろな監督と仕事をした中で共通して言えることは、彼らは本当に疲れを知らないということ! 尻尾の映像一つ撮るにしても、燃えていてどんな努力も惜しまないんだ。そんな情熱を持った人たちが監督というんだろうね。僕も俳優としての情熱を持っているから、そういう監督の元だととてもいい仕事が出来るんだよ。
Q:実際の人物を演じられる上でプレッシャーはありましたか? また、当時を知る人たちに話を聞いたり、リサーチしたことなどありましたら教えてください。
T:生前のレッドを知る人たちと何人か会ったり、ホーム・ビデオのようなものを見たりもしたよ。でも、それはあまり参考にしないで、当時の感覚をつかむ程度にしておいたんだ。確かに実在の人物が出てきて、事実を描いてはいるけど、映画というフィクションの世界を描いているから、何といっても大切なのは脚本だね。だからプレッシャーとかは感じなかったよ。
Q:ジェフ・ブリッジやクリス・クーパーらベテラン俳優と共演された感想や撮影エピソードを教えて下さい。また、ご自身のお気に入りのシーンを理由も添えて教えて下さい。
T:お気に入りのシーンは秘密だよ(笑)。ジェフとクリスとの共演はとても素晴らしい経験になったと思う。ジェフと僕は演技のアプローチの仕方が似ていたから、お互いリラックスして楽しみながら演じることができたよ。彼は俳優であり、カメラマンでもあるという、芸術家としての一面もあるんだ。また、いつも周囲を気遣う愛情豊かな人だった。クリスはとても仕事熱心で、演技に対していつも真剣に取り組んでいたよ。彼には「ブルーカラー・アーティスト」という形容がぴったりだと思う。彼らのような素晴らしい俳優たちと同じ場にいるということだけで、学ぶことが多かったよ。相手の演技がうまいから、僕までうまく見えるしね(笑)。ときには緊張してぴりぴりしたり、疲れが出たりしたこともあったけど、全体的には皆楽しくやっていたと思うよ。
Q:この映画を通して伝えたいこと、メッセージはありますか。
T:映画を見て感じるということは個人個人の経験によって違ってくるものだから、こう見るべきだと決めつけるのは好きじゃないんだ。この作品は負け犬が勝つというスポーツ物語と見る人もいるだろうし、自分本位な人間が人間性に目覚めるというヒューマン・ドラマと見る人もいるだろうね。他にも、父と子の物語と感じたり、レースの場面ではアドレナリンが大放出したりするかもね。僕自身は何ヵ所か涙するシーンがあったよ。だからもうそれは見る人の感性に任せるよ。
Q:感動作であるということは確かですよね。
T:そう言ってくれるとうれしいよ、ありがとう。
(取材:FliXムービーサイト編集部)
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