森田まほ
映画が好き!現場で働きたい!その思いがこうじて単身アメリカ、ハリウッドへ渡り、現場でインターンとして日夜現場を飛び回る日々であったが、ある日アメリカ人の青年と結婚。その後予定外の妊娠をするが、無事出産。現在はグリーンカードを取得すべく待機中。 |
そんなこんなで、すっかり日本のアクトレスと思われた私。超イケメンの美容師にメロメロしながら、髪型のカウンセリングを行う。
「どうしようか?」
「そうね。せっかくハリウッドにきたんだからおまかせするわ!」
その時の私の髪型は、現代的な日本の女の子、とでも申しましょうか。ちょっと茶色にメッシュを入れててべつにふっつーだったんですわ。でも彼はそれが気に入らなかったらしくて
「なんで日本の女の子って髪の毛を染めたがるの? あんなに素敵な黒髪なのに! 絶対戻すべきよ!」
うーん。日本にはしばらくかえんないし、こっちの男子にもてるためにはやっぱウケのいい黒髪にしとこうかね。
「じゃあもうあんたにまかせる! クールなジャパニーズガールにして!!」
と頼んだら、ハンサム美容師は大乗り気。
「まかせて! 私ずっと日本人の髪をカットしたかったのよ!」
というわけで、髪を黒く染め直してシャンプー台に行き、これまた別のかわいい美容師に頭を心地よく洗ってもらって、私はうつら、うつら。
うつら、うつらしながらもカット台に行くと、これが……!!
ねえ、普通日本だったら、美容師さんがクルクルまわるでしょ? 後ろ切ったり、前切ったり、これがなぜかここじゃクルクルまわるのは彼じゃなくて私。
お兄ちゃんは定位置に着いて私の椅子をクルックルまわす。雑誌なんて読んでる場合じゃないし……。むしろ酔いそう、おええ。
でもでも! もてガールになるための試練だと思えばヘのカッパだわ。
ちょきちょき切られながら、さっき染めた頭の一部が違う色になっている事に気付いた。
「え?? ねえねえこの、一部違う髪の色は何??」
「ああ! ただ黒いんじゃつまんないでしょ?だからブルーをいれてみたの! どお?? クールでしょ?!」
そう、私の髪はもはや黒と青のしましま状態。こ、これは、ほんとにもてガールになれるんだろうか。そんな私の心配をよそに、にいちゃんは前髪のカットに突入。私は前髪が短いのだけはまーじーで似合わないので、それだけは言っとかなきゃ!
「あの。前髪はあんまり切らない……ああああああっ!」
にいちゃんの鋭いはさみは、私の前髪にざっくりはいった。しかも斜めに!!! さすがの私もこれには黙ってられず
「な、なにすんだー!!こんな、ななめでどうすんだよー!! へいへい!」
と怒ってみると、美容師逆切れ。
「なに言ってんのよ! スーパークールじゃない! やあねえ。日本の女優ってわがままだわ」
しまった。私、女優のフリしてたんだったわ。でも、こんなんじゃ仕事はいってこねーよ! とぶつくさいっても、もう何も聞き入れてもらえない。私の一言でカット台には、いいしれない、いやーなムードが漂い、ちょきちょきカットする音だけがこだまする。
ああ……私は、気が弱いんだよお。もう。楽しくやろうよお。重苦しいムードに耐えきれなかった私は
「ソ、ソオリー。ごめんね、さっきは。いやあ、こういう奇抜なスタイルは日本にはなくて……」
なぜかごきげんをとってしまった。ちきしょう。
それでもゲイってもんは一度機嫌を損ねるとなかなか機嫌をなおさねえ。まじ女みたい。めんどくさーしかたがないので、あげあげで喋りまくる私。
「いやあホントにロスの美容師さんかっこいいわ-。ねー!!!」
ってなに言ってんだよ私! でも、沈黙たえらんねーし。ああ悲しい。
ようやくにいチャンの機嫌も直り、遂に完成!
わーーーーーーーーーい……?
今まで機嫌とるのに必死で全然見てなかったけどなんだこの髪型-!!!
ぎゃあーーーーーーーー!!
私の初めてのセレブ美容室はあり得ない髪型に終わった。
前髪は、なぜかななめパッツン。そして全体的に言えば…青いしましまのはいった楠田えりこ。そう私は楠田えりこ。
まだ19なのに。この髪で生きていかねばならないなんて…。
でもなぜかその髪型はたしかにハリウッドではモテモテだった。日本に帰ったら大爆笑されたがね。
楠田えりこはアメリカではモテモテヘアーなのでありました。
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