ダイアナ・ラスバン(以下プロデューサー):多くの友人たちが日本は素晴らしい国だといっていたので、今回来日することができてうれしい。ただ時間が無くて京都に行けないのだけが残念だわ。
エリック・バナ(以下E):今回が初来日になるんだけど、『トロイ』のワールド・プレミアの最終地にこの美しい国に来ることができて感激しているよ。
ダイアン・クルーガー(以下D):私は3度目の来日なので、戻って来ることができてうれしいわ。温かい歓迎をありがとう。
ローズ・バーン(以下R):私は2度目なんだけど、今回は映画のPRとしての来日なので前回とは全く違うわね(笑)。皆さんのやさしさにとても感謝しているわ。
ウォルフガング・ペーターゼン(以下監督):僕は4度目の来日だから1番多いみたいだね。来るたびに日本が好きになるよ。
デイビット・ベニオフ(以下脚本):僕は17年ぶりの来日なんだ。日本が大好きだし、日本食も大好物だよ。
Q:ギリシャで公開され、史上最高のオープニング記録を打ち立てたそうですが、プロデューサーとしてはいかがですか?
プロデューサー:今年はアテネでオリンピックが開催されることもあり、そのニュースを聞いたときは本当にうれしかったわ。この映画ぼ題材は人間の本質を描いているので、そのことが皆さんに支持された理由なんじゃないかしら。日本でも同じように多くの人が観てくれることを期待しているわ。
Q:出演者の皆さんは、もし役柄を変更できるとしたらどの役を演じたいですか?
D:私はアキレス役がいいわ。
E:僕はブラッド・ピットとラブシーンを演じなくていいならヘレン役がいいな(笑)。
R:私はへクトル役であのスカートをはきたいわ。
監督:私は15歳の頃からアキレスの大ファンなんだ。私だってもう少し体を鍛えたら、ブラッド・ピットよりいいアキレスになれるかもしれないよ(笑)。
Q:エリックさんの衣裳はスカートのようでしたが、着心地はいかがでしたか?
E:着心地は良かったよ。初めのほうはブラッドとオーランドの3人でお互いをからかってたんだけど、女性陣が誉めてくれるものだから次第に誇らしく思えるようになったよ。
Q:記憶に残っているシーンや辛かったシーンについて教えて下さい。
E:本当に素晴らしい脚本で、10ページごとに感動していたよ。その中でも特に2つのシーンが記憶に残っているよ。1つはアキレスとの一騎打ちのシーンで、長期間訓練をして撮影したんだ。もう1つはオーランド・ブルームとの船上でのシーンで、実際に船上で撮影していたから、ワン・テイクで撮らないと背景がずれてしまうんだ。それは監督にとっても、俳優にとってもチャレンジであり、チャンスだった。だからオーランドと力を合わせて取り組んだよ。彼は僕にとって本当に弟のような存在だ。
Q:ブラッド・ピットとの一騎打ちのシーンで苦労したことは?
E:あのシーンは演技だけでなく運動神経をも必要とするシーンだったので大変だったんだ。間違っ身体を打ってしまったこともあったが、お互い恨みっこなしということで精一杯の力を出せた。相手がブラッドじゃなかったらあのシーンはできなかったと思うね。
Q:ダイアン・クルーガーさんは絶世の美女役でしたが、精神と肉体面でどのように役作りをされたのですか?
D:美術館に行ってヘレンが描かれている絵画を鑑賞したり、ヘレンに捧げられた詩を読んだりもしたわ。でも映画はドキュメンタリーじゃないから、監督や脚本家のイメージする傷つきやすく弱い心を持った女性として演じたの。彼女は若い王子パリスと恋に落ち、年の離れた夫を捨てて愛に生きることを選択するんだけど、常に負い目を感じて生きているんだと思うわ。
Q:ブリセウスを演じるにあたっての役作りについて教えて下さい。
R:最初はヘレン役のオーディションをシドニーで受けたの。そのときエリックに会って、彼が「ウォルフガング監督によろしく言っといてよ」と伝言をもらったのよね。それを監督に伝えるために、直接会う機会ができたわけだから、エリックには感謝しているわ(笑)。そしてオーディションを受けていくうちに、私はブリセウス役のほうがいいんじゃないかという案が出て、ブラッドも承諾してくれたから役が決まったのよ。オーストラリアの女優がハリウッドの大作に出演できるなんて、すごい名誉なことだと思うわ。具体的な役作りに関しては、ブリセウスは囚人であっても王族なので威厳を忘れないようにしたわ。アキレスに対しても臆せず、自分の意見を言うことができる女性なのよ。監督からは常に「君は強い女性なんだ」という指示があったわ。
Q:監督のアキレス像についてと、ブラッド・ピットが演じたアキレスの魅力を教えて下さい。
監督:デイビッドの脚本に書かれたアキレスは独立心が強かったり、時に傲慢になったりといろいろな面を持った魅力的な人物として描かれている。それはまさに私のアキレス像と一致しているんだ。だからこの役を演じる上では幅広い演技が要求されるわけど、ブラットはすべての期待に答えてくれただけでなく、そこに彼の生まれ持った性格が加わりとても素晴らしいものになったよ。特にアキレスが泣くシーンは、観客も一緒になって涙を流してしまうんじゃないかな。彼の演技にはとても満足しているよ。
Q:『トロイ』が現代に向けているメッセージとはなんでしょうか。
監督:そうだね。今の世の中は3000年前と何も変わっていない。人は生きていく中で"愛"や"情熱"などを必要とするけど、"破壊"という面も持っている。そこにすべての悲劇があるともいえるんだ。ラストのトロイが燃えるシーンを観てもらうとわかるんだけど、全てが無くなり、誰も得をした人なんかいないんだ。今起こっている戦争にも同じことが言えるよね。
Q:作品にかける熱い思いをお願いします。
監督:この映画は生涯に1本の作品だ。そしてプロデューサーのダイアナとキャスティング会議を開いたときの気持ちは、今でも覚えている。この映画は映画史上最も素晴らしい配役に恵まれたと言っても過言ではない。また、いろいろな過酷な状況を、皆で乗り越えられたことを誇りに思っているよ。
脚本:この作品は脚本家として感激の連続だった。まず監督が20世紀最高の戦争映画『U・ボート』を撮影した、ウォルフガング監督がメガホンを撮ると決まったとき。『トロイ』は21世紀最高の戦争映画になると予感したんだ。そしてブラッド、エリック、ピーター・オトゥールと次々にキャストが決定していく過程はまるで夢のようだったよ。
E:この作品は1年半かけて撮影していたんだけど、その間いつも誇らしい気持ちで演じていた。僕にとってへクトルは一生に1度の役で、忘れられない作品なんだ。スタッフやキャストのみんなに、心から感謝しているよ。
(フォトセッション時、ブラッド登場! 会場からは歓声と共に大きな拍手が起こる。その後、緊急単独会見が行なわれた。)
Q:お加減はいかがですか?
ブラッド(以下B):長い間待っていてくれて、本当にありがとう。いい友人がいて、すっかり治してくれたよ。タフなのは映画の中だけなんだ(笑)。
Q:アキレスの魅力とはなんでしょうか。
B:僕は心に葛藤をいだいている人物に惹かれる傾向があるんだ。アキレスは非常に屈強な戦士であるとともに、弱い心も持っている。それが彼の魅力なんだと思う。
Q:大変ハードな撮影だったそうですが、どのようにその疲れを癒したのですか?
B:俳優というものは、撮影が終わるまで辛かったことには気が付かないものなんだよ。 今回は撮影が終わってまたすぐ別の映画に取り掛かったから、癒す暇がまったく無かったよ。でも秋になったらヨーロッパ辺りで少し休暇を取るつもりなんだ。
Q:アキレスの弱点はアキレス腱ですが、ブラッドさんはどこが弱点ですか?
B:僕の弱点はアキレスと同じで、撮影中偶然気にもアキレス腱を切っちゃったんだ。
Q:アキレスの必殺技は誰が考えたのですか(身振りを真似て見せる)?
B:マネが上手だね、僕よりいいんじゃないかな(笑)。あれは古代ギリシャの壺に書かれた絵からヒントを得ているんだよ。そして『プライベート・ライアン』などを手がけた有名なサイモン・フレインという振り付け師が、具体的な動きを付けていったんだ。撮影方法はMTVのように短いカット割をつなぐんじゃなく、カメラは引いた状態で撮ることによって、戦っている様子をリアルに映し出したんだよ。
Q:素晴らしい殺陣の演技でしたが、日本のチャンバラはお好きですか?
B:黒澤明監督の侍映画を何本か観たことがある。あとトム・クルーズの『ラスト サムライ』はすごく良かったよね。でもあの動きと印象が重ならないように気をつけたよ。
Q:ヨーロッパで『トロイ』は『ラスト サムライ』のオープニング記録を超えたそうですよ。
B:そうなんだ(笑)。トムこそベストだと思うよ。
Q:好きなシーンはどれですか?
B:1つはヘクトルとの対決シーン。ハリウッド映画ならではの迫力のある決闘シーンに仕上がったので、すごく満足しているよ。もう1つはプリアモスと対話するシーン。僕が出演を決めた理由の1つでもある重要な場面で、あのシーンのお陰で作品が単なる復讐劇の域を越えるんだよ。2人は敵同士でありながらお互いに敬意を示し合い、名誉ある死を迎えることになるんだからね。あと、トロイの木馬もクールだよね?
Q:日本に運んで来られたんですよね?
B:ああ、そうだよ。
Q:もうしばらく続けてもよろしいですか?
B:もちろん大丈夫だよ、ありがとう。
Q:アキレスは名を残すことにこだわっていますが、ご自身はいかがですか?
B:自分の足跡を残すということが、次の世代のために役立つことなら、それはすばらしいことだと思う。また、自分は何のために生きているのかを考える点においては、彼に共感できるかな。
Q:アキレスはご自身にとって新しい役でしたが、今後演じたい役柄はありますか?
B:普遍性のあるアイコン的役も好きだし、その正反対も好きだんだ。だからそれらのバランスを取りながら役を決めていくつもりだよ。あと最近は『アダプテーション』のチャーリー・カウフマンや、『エターナル・サンシャイン(原題)』のウェス・アンダーソンが書く脚本に注目しているんだ。彼らの作品に出てくる人物は、自分のうつ病的な部分を笑っているようなスタイルをとっていて、そこが気に入っているんだ。
Q:俳優の佐藤隆太と申します。ご自身を俳優として突き動かすものはなんでしょうか。
B:僕は何かを作っているときが、1番幸せを感じるんだ。あと、尊敬する建築家が、"先がわかっている道は進んでも意味がない。冒険して何かを発見しなくては、人間進歩が無い"と言っていた。だから僕は先が見える道は歩かないことにしているんだ。最後に一言いいかな? 皆さん締め切りがあるのに、貴重な時間を割いてくれてありがとう。最高にすばらしい滞在生活を送っているんだ。またすぐ戻ってくるよ。
(取材・文:FLiXムービーサイト)
『トロイ』は5月22日より丸の内ルーブル&プラゼール系にて公開
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