『LOVERS』来日記者会見
取材:文:FLiXムービーサイト
カンヌでは20分以上のスタンディングオーベーションを受け、中国でのオープニング興収では『HERO』の記録を抜いたアクション・ラブストーリー『LOVERS』。公開に先駆け監督のチャン・イーモウ、主演の金城武、アンディ・ラウ、チャン・ツィイー、アクション監督のトニー・チン・シウトン、音楽の梅林茂が来日、都内のホテルで会見を開いた。
Q:複雑に変化する愛情をどのように演じ分けたのですか?
金城武:僕はいつも基本的に監督の意見を聞いて演技するほうなんだ。今回は台本のつながりなどは意識しないで取り組んだ。なぜかというと、3日間で生まれる愛の深さっていうものが……あまり実感できなかったから(笑)。だから監督に「なぜ愛するんですか?」とか「いつ愛したんですか?」といった質問をしたよ。すると監督は「愛に理由はない」と一言(笑)。だからシーンごとに細かく説明を聞きながら演技したんだ。
チャン・ツィイー:私が演じた“小妹”はとても複雑な子なの。私にはこういった体験はなかったけど、監督のおかげで演じきることができたと思うわ。また、感情というものは説明できないものでしょう? だから演じる上では役者同士どう合わせるかが大切なの。本作では2人の素晴らしい役者さんたちと共演できて、本当に良かったわ。
Q:音楽の梅林さんはどのようなことに注意して曲を作られたのですか?
梅林茂:オリジナルの音楽を作るよう心がけました。監督に「叩く物がなければ杖でも叩けば」と言われていたので、自由に作ることができました。
Q:美しいワダ・エミさんの衣裳についてお聞かせください。
チャン・ツィイー:ワダ・エミさんと一緒にお仕事をするのは今回で2度目なの。私が1番好きな衣裳は、冒頭で着た服ね。あと、森の中を走るときの衣裳もいいわね。
Q:アクション指導をする際は、どのようなことに気を付けられたのですか?
ト二―・チン・シウトン:今回の映画のジャンルは『HERO』とは違い、人間の感情を描いている。だから現実味を持たせなくてはならないので、アクションより芝居を重視した。特に2人の男が雪の中で戦う場面は、1人の女性を奪い合う彼らの表情を見てもらいたい。他にはウクライナでの撮影は天候の変化が激しくて苦労したことと、役者が本物の槍や剣を使うので、怪我をしないよう気を付けたよ。
Q:アクションシーンで苦労したことは?
アンディ・ラウ:2、3か月前から稽古をしていたから、現場では芝居に集中することが出来たよ。
チャン・ツィイー:私も2ヶ月くらい稽古したわ。わざわざアクション指導の先生が北京まで来てくれたのよ。それに剣の扱いは別の映画などで経験したことはあったから、比較的難しくはなかったわね。
金城武:僕はすごく苦労しました。3人の中で僕が一番下手なんじゃないかな(笑)。稽古は1か月くらいだったんだけど、ひたすら基本の姿勢を練習していたんだ。本番で演じる動きを練習したかったんだけど、そのときはまだ考えられていなかったんだ。アクションは現場であみ出して、天気の待ち時間とかに練習してたね。僕は役者さん相手にアクションシーンを撮影するのが苦手だったんだ。間違って当てちゃうと悪いから(笑)。スタントさん相手だとうまくできるんだけどな。だから監督に役者同士ではあまり戦わないようにお願いしたんだ(笑)。監督も芝居に支障がでると困るということで、理解してくれたよ。
Q:映画に登場する男性はそれぞれ、女性の愛し方が違いますが、それについて役の上でと個人的な意見の両方を教えて下さい。
チャン・イーモウ(以下監督):この質問の答えは私より金城さんがおすすめだ。言葉の面でも時間の節約になっていいんじゃないかな(笑)。
金城武:僕は監督の駒として参加しただけなので、監督が答えたほうがいいと思うな。そうですよね?(開場から拍手が起こる)
監督:2人の男性のキャラクターはまるで違うようにしたんだ。金城さんとチャン・ツィイーの愛は突発的なもので、強烈な愛で若者独特の特徴を持っている。2人にはよく「いつ本当に愛し始めたのか?」と聞かれ「愛はいつどこででもはじまるから、どことは聞かないでくれ」と答えた。また、2人は常にアンディ演じる劉の監視下にある中で愛し合うのだから、感情を抑えて演技してもらったよ。一方アンディの愛は例えて言えば、お酒のようなもの。持久性があり、発酵していくほどに純度が高まる。残念なことに彼の場合は発酵し過ぎて、発火し、さらには燃え尽きてしまったけどね(笑)。アンディには「彼はヒーローなのか、悪なのか?」と聞かれたが、結論としてはそのどちらでもなく人間そのものだということ。人間の極端な一面を出せればいいということになったんだ。
アンディ・ラウ:私の演じた役は、1人の女性を愛するあまり、憎んでしまうんだ。でも結局は突然生まれた金と小妹の愛を尊重して、身を引くことになる。それもある意味真の愛と言えると思うよ。
Q:踊りのシーンについてお聞かせ下さい。
監督:舞のシーンを撮りたいと思っていたので、チャン・ツィイーには舞踏の訓練をしてもらっていたんだ。でも撮影前になってアクション監督のト二―の存在に気が付いた。彼から多くのすばらしいインスピレーションをもらって、アクションの発想で舞踊のシーンを撮ることにしたんだ。伝統芸能とアクションの融合というやり方は初めてなんじゃないかな。おかげで映画の中で最も素晴らしいシーンの1つになったよ。
チャン・ツィイー:アクションと踊りの稽古は、毎朝9時から8時までみっちりだったから、まるで学生に戻ったような気がしたわ。もともと舞踊の心得はあったし、練習も十分させてもらったので、本番で力を発揮することができたと思うわ。
Q:盲目の女性を演じられたチャン・ツィイーさんは、実際に目の見えない少女と生活を共にされたそうですが。
チャン・ツィイー:そうなの、お芝居をする上で不自然に見えないよう彼女の日常の動きを参考にしたわ。森で追いかけられるシーン、花や人に触れるシーンなど、実際に彼女にやってもらって研究したのよ。
Q:日本でも本国のように『LOVERS』旋風が起こると思いますか?
監督:昨日、中国に電話して確認したところによると、これまでの興行成績が1億1千万人民元を超えたんだ。これは『HERO』に次ぐ記録なんだよ。日本でもヒットするといいね。また、今日の会見で自信がついたよ。というのも、こんなに、たくさんのマスメディアが集まってくれたということは、たくさん宣伝してくれるということだからね(笑)。どうぞよろしくお願いします。