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『エターナル・サンシャイン』

原色色男図鑑

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 次世代のいい男を見つけだせ!田辺あつみが色男を舐めまわす!/ 絵と文・田辺あつみ

『エターナル・サンシャシン』

これは失恋のショックで恋人に関する記憶消去を依頼してしまった「特別な」男の話ではありません。

誰もがこれだけは忘れたくないと思う大事な記憶を現在進行形で忘却しています。

大事な人の顔、一緒にいた場所、日を追うごとにどんどん輪郭がぼやけていくものです。

そんな脳内の様子がこの映画では巧妙に映像化されています。

ジョエルが少しずつ彼女の姿を無くしていき、良い記憶を消さないでと神に祈るように頼む姿は誰しもに起きている葛藤のよう。

SF仕立てですがストーリーはシンプル。

映画では男女が結ばれたらめでたしめでたし、その後のことに触れるのは野暮となってますがそんな触れちゃいけない部分を描いていて、そのブラックな視点はさすがミシェル・ゴンドリー監督とチャリー・カウフマン(アカデミー脚本賞受賞)のコンビネーション。

異性と暮らした経験がある人、恋愛の成れの果てを知ってる人ならばジョエル(ジム・キャリー)とクレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)が風呂場の毛のことでもめたり、レストランでつまらなさそうに食事する姿に共感することも多いはず。

ただこれは恋愛映画ではなく、孤独と向き合い自分の心を探すお話だと思いました。

何度も登場するのは本物のクレメンタインではなくジョエルの心の中の彼女。

彼はずっと自分と会話しているのです。

ゴンドリー監督は、記憶は事実の記録ではなく事実に対する個人の解釈であると言っています。

メアリーがたびたび引用する言葉が印象的でした。

「Blessed are the forgetful, for they get the better even of their blunders」

監督は出演者たちに素の自分でいることを要求したため皆リラックスしてのびのび演技しています。

いつもは美少年なイライジャが不気味な笑いをするパンティ泥棒で特殊メイクのイメージが強いジムが女性の扱いに慣れてないシャイな男の役。

パトリックがジョエルのマネをしてクレメンタインにせまる姿は背丈の違いもあって情けなさ全開です。

そんなわけで今回のジム・キャリーは顔筋使ってないオフの日のジム。

台詞に取り入れるために過去の恋愛を語らせられたそうです。

クレメンタインとの会話やうんざりした表情、過去の思いを告白するシーンに演技以上のせつないものを感じたのはそのせいでしょうか?

彼はこの映画を「これは僕が愛した人たちへのラブレター」と言ってますがこんなラブレターがもらえるなら恋が終わるのも悪くないですね。

この役のためにNY訛りを習得。いつものお人形みたいな役柄と比べると表情豊かで面白みがあって好感が持てました。夜中に男を部屋に誘って帰られても全くめげない逞しさがステキ。最近痩せて綺麗になった?


せまられても固まってしまい無口でキレのないひたむきな表情にすっかり心臓鷲掴みにされました。周囲に翻弄される様子、記憶にすがる姿、クレメンタインへの想い、ボソボソのナレーション。特殊メイクやコメディアンな印象が強い彼がこういう役を演じるとキャラクターに深みが出ます。

フロドー! なんでこんな子になってしまったの! いくらイメチェンとは言え違いすぎる……。スタン役のマーク・ラファロも実際はかっこいいのにとってもダサい。でも二人ともこれ以上ないってくらいのハマり役……。


今までキルスティン・ダンストは美人じゃないと思っていたけどこの役を観て彼女が実は可愛いことに気がつきました。パトリックを観る冷たい眼差しが最高!
魅力に気づいてしまうとクセになる女優です。

 

惚れた男の数知れず……まんが家 田辺あつみさんにファンレターを書こう!
atsumi@flix.co.jp

 

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