『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』プロデューサー リック・マッカラム インタビュー
取材・文:鴇田崇 写真:FLiXムービーサイト
5月19日の全米公開後、興収3億ドルを超える記録を叩き出した『スター・ウォーズ』シリーズの完結編『エピソード3/シスの復讐』。全エピソードの主人公とも言える、若きジェダイ騎士のアナキン・スカイウォーカーが、シスの暗黒卿であるダース・ベイダーに成り果てるまでの過程が描かれ、同シリーズで最も悲劇的とされる物語に注目が集まっている。日本公開に先立ち、監督のジョージ・ルーカスと二人三脚で『SW』を作り上げてきたプロデューサーのリック・マッカラムが来日。最終章を迎えた今、その心境などを語ってもらった。
誰の心の中にもダース・ベイダーがいる
Q:ついに最終章の公開を迎え、PRも最後になると思いますが、今はどんな心境ですか?
メイクをするのが大嫌いなので、早くこのプロモーションが終ってくれないかと思ってるのが率直な感想だけど(笑)、とてもうれしい反面、正直言ってやっぱり心境は複雑だね。『スター・ウォーズ』は人生のかなりの時間、16年間という長い期間を占めていたのでね。でも、僕の新しい人生がまた始まると言うと大げさかもしれないけど、これからスタートする人生の第一章は、それはそれで楽しみだよ。
Q:今回、待ちに待ったヘイデン・クリステンセン版のダース・ベイダーが出てきます。スクリーンで初めてベイダー卿を観た時の感想はいかがでしたか?
興奮したね。僕が一番好きなショットは、あのマスクがゆっくり装着されるシーン。ほかの人も同じだと思うけど、ダース・ベイダーが悪役なのに愛されるのは、誰の心の中にもダース・ベイダーがいるからなんだよ。
Q:今回の『エピソード3』ですが、製作の過程で最も楽しかったエピソードと、反対にジョージ・ルーカスの注文でこれは「キツかった」というのがあったら教えてください。
われわれが映画を作るにあたっては、通常の撮影隊と違う点がいくつかあるんだ。まず、本当にいろいろなロケ地を回って撮影するということだね。今回はなんと8か国を回ってロケをしたわけなんだけど、僕自身ロケは大好きなんだ。オーストラリアでも大規模なロケをしたし、とても大変だったけど楽しかった。逆に問題点というのは起きないんだよ。12年間一緒に新3部作を作ってきたスタッフが集結してやっているから、気心も知れているしね。もちろん映画の質も大切なんだけど、映画を撮影している時間の質、つまり皆が和気あいあいと楽しく撮影できるようにすることを常に重視しているからね。
『スター・ウォーズ』のプロデューサーはひとり
Q:そうすると、現場ではムード・メーカーみたいな役割も担ったりするんですか?
そう。僕はドラマ・クイーンだからね(笑)。やはり雰囲気作りは大事だよ。やっぱり人間は疲れてくるとわがままも出てくるもの。そういった場合に対応するのが僕の役目だと思ってるんだ。そういう意味では休み時間をちゃんと取ってあげたりとか、環境作りをきちんとしてあげる。それによってベストな仕事をしてもらえるわけだからね。凄く気を使うんだよ。そして今現場で何が起きているのか、という情報伝達をきちんとやることも大切。それに普通の映画だとプロデューサーの名前が何人も載っていたりするけど、『スター・ウォーズ』ではプロデューサーと名の付く人間は僕ひとりしかいないし、そうあるべきだと思うね。船頭は多くいる必要はないものだからね。
ルーカスの世界に口出しはしない
Q:ジョージ・ルカースとはアイデアを出し合うとのことですが、今回リックさんのアイデアが採用された、具体的なシーンとかありますか?
そもそも映画はあくまでも監督のメディアだと思うんだけど、『スター・ウォーズ』が特殊なのは、全部ルーカスが描いた想像上の世界ということなんだ。その中の僕の役割といえば、彼のビジョンの現実化をサポートすることであって、映像化するための環境を整えてあげること。彼の考えた世界で、彼の考えたキャラクターで、彼の生み出した物語なので、そういったクリエイティブなプロセスの部分に僕が口を出すことはないんだよ。言うなればルーカスと僕の関係は主人と奴隷の関係に近いものがあるよ(笑)。もちろんアイデアを出し合う時もあるけど、こうしたら? っていう提案はしないんだ。ルーカスの世界に口を出すということはしない。彼の世界には踏み込まないんだ。もちろん他の映画では違うだろうけど、『スター・ウォーズ』はあくまでも彼の世界。とはいえ、あなたが一番好きなシーンは僕のアイデアで、あなたが一番嫌いなシーンはルーカスのアイデアということにしておいてよ(笑)。
ルーカスはヨーダ
Q:おふたりの関係は、主人と奴隷だと言うことですが、『スター・ウォーズ』のキャラクターに例えると?
ルーカスはヨーダで、僕はR2-D2だね。でも僕の外見はジャバ・ザ・ハットだけどね(笑)。
Q:もう新エピソードは作らないとジョージ・ルーカスは宣言しました。仮に『エピソード7』を作るとしたら、主役は誰にしたいですか?
物語という意味では、もう完結していると僕も思うんだ。だから映画はもう作らないけど、その代わり100時間に渡るテレビドラマを製作するよ。『エピソード3』と『エピソード4』の間をつなぐ、ルークが成長するまでの期間を描くんだ。今回の『エピソード3』で数々の謎が解明されたとはいうものの、まだまだ残された疑問点がたくさんあると思う。その不透明な部分をすべて答えるために、テレビシリーズで全部説明する予定なんだ。
時折ジョークを交えながら、質問に快活に答えるマッカラム氏。その口ぶりからは、最終章に対する揺るぎない自信がうかがえた。「最後にとっておきのニュースがあるんだ」と語り始めたマッカラム氏は「全世界でデジタルの劇場が2,500館から3,000館に増えた時点で、新たに3D処理を施した『エピソード1』から『エピソード6』までを順番に公開する予定なんだ」とコメント。今回の完結編がスクリーンで観られる最後の『スター・ウォーズ』だと思っていた矢先に、『SW』ファンにとってはこれ以上ないほどうれしいビッグニュースも飛び出したインタビューとなった。
『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』は7月9日より日劇1ほか全国で公開。